◆オインゴ・ボインゴの謎

庄野真代

私のダンナが実に数年前日本で「オインゴ・ボインゴ」を見ている。ヤマハの世界歌謡祭にU・S・A代表としてエントリーした「Mystic Knights of the Oingo Boingo」はミュージカルっぽいアメリカンBandだったらしい。その長ったらしい名前と恐竜のデッカイぬいぐるみで登場したユニークさで、観客に真の音楽性を 見逃させてしまったらしく、彼らに10点満点をつけたのはそのとき審査員をしたダンナ一人だった。
さて我々がL・Aに到着した1981年3月頃L・Aのライブハウス界隈で2つのNewヒーローが話題になっていた。「Go-Go's」と「Oingo・Boingo」。彼らが「Mystic Knights of〜」と同じバンドだと気付くのはわけはなかったが、L・Aのミュージックシーン最前線と彼らの音楽がどうしても一致しなくてひたすらステージを見るチャンスを待った。 そして数ヶ月後のROXY。前売チケットを発売日に並んで買い、当日1時間前に行ったが、もう身動きできない程スシ詰め状態だった。新生「Oingo Boingo」のサウンドはまさに衝撃的。火のついたような音のかたまりがとぎれなく1時間半続く。その音に触発された若者達が力いっぱいぶつかり合ってダンスフロアを踊りまくる。 リードボーカルのダニー、ギターのスティーヴ、サックスの三人をのぞいてはベース・ドラムス・キーボードがドッと若々しい新メンバーだ。するどい攻撃的な音をたて続けにぶつけてくる彼らのサウンドは他のNew Wave Bandと大きく違って、計算されつくしたHead Music。といっても決してアドリブ性がない、 柔軟性がないということではなく、贅肉を徹底的に削り落としたベーシックなリズム隊からどんどん過激な音空間を広げていく。私の新しいアルバムのコンセプトである歌謡曲にNew Waveサウンドという何とも作り難い世界を彼らならできると思った。その後何回か彼らのステージを見てさらにこの気持ちを確認し、交渉もうまくいって、 はじめてリハーサルをした時、彼らは本当に素晴らしい大人のミュージシャンだった。そしてステージからはとても想像できないジェントルマンだった。まるで異質とも思えるメロディを前にして「ああだ、こうだ」と長い時間ディスカッションをくり返す。音がまとまる段階で音の無駄がどんどん省かれていく。 どんどんスリムになっていくそのサウンドは、まるでダイエットの宿命を背負った現代人のようだ。サウンドもダイエットしなきゃ、ねえ、そう思いません?。曲ができあがって聴いてみると実にストレートでそのくせどこかではぐらかされて、いつの間にかオインゴ・ボインゴ・サウンドにひきこまれている自分に気づく。
彼らの新しいアルバムは私のレコーディングにとりかかる前からはじまっていた。ダニーは「前のアルバムはプロデューサーとの意見のくい違いもあって思い通りに作れなかったが、今度は10年間やってきたオインゴ・ボインゴの生死がかかっている」と、燃えていた。私のアルバム「逢・愛・哀」と同じようにバーラフォン を使った曲「Grey Matter/グレイ・マター」ではじまる彼らのNewアルバムは前回のに比べるとずっとわかりやすく仕上がっている。「Go-Go's」のNewアルバムのリリースの日を気にしていたダニーの心意気が、彼らのサウンドをよりポップにしたんだと思う。ミディアムテンポの曲も増えて日本人の耳にスムーズに入ることだろう。 それにしても「Go-Go's」よりずっとハイレベルな事をしているのに、やっぱり気にしているところがおもしろいなあ。このアルバムが良いなあと思う人は彼らのステージを見ればその100倍はフッとびますよ。

―庄野真代―


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