◆オインゴ・ボインゴの謎

福田一郎

東京からロンドンまでとロサンゼルスまで、どちらの都市が遠いか、という質問は、質問にも値しない。小学生だって、正しい答えを知っている。ところが、これがロック・ミュージックに関する情報的な距離とでもいうものになると、 東京からロサンゼルスまでは、ロンドンよりもはるかに遠い。
たとえば、ロンドンの小クラブに、やっと出られるくらいの人気バンドでも、そのバンドの動きやメンバーの出入りなどのニュースは、いち早く、正確に伝わってくる。それが、ロサンゼルスでの動きとなると、あるスーパーグループが、 二万人近い収容力のザ・フォラムを満員売り切れにしたところで、そうした大成功のニュースは、なかなか伝わってこない。
最近の実例を上げると、ポリスのザ・フォラム公演は売り切れで、スペシャル・ゲスト・バンドは、全米ツアーを付き合ったザ・ゴーゴーズではなく、とくにオインゴ・ボインゴが起用され、地元ファンに歓迎されたという話は、あまり知られていない。
あまり知られていない、といえば、ロサンゼルスのミュージック・クラブを重要な仕事場に、このところ再び盛り上がりをみせている地元ロック・バンドの活躍、いうなればLAロックの動きというのも、こちらでは、あまり知られていない。
オインゴ・ボインゴは、70年代に入って結成され、その後バンドの編成が変わり、その間メンバー交替が何度もあったが、一貫して、ロサンゼルスのクラブをフランチャイズに活動し続けてきたLAロックの代表的な人気バンドの一つ。 ことしの独立祭中心の休日には、ロサンゼルスっ子が集まるカントリー・クラブに4日間連続で出演した。
カントリー・クラブの座席数は、有名なロクシー・シアターの2倍で、千席。カーラ・ボノフ、デビット・ブロムバーグ、クラスの出演で一日、クリス・クリストファーソンがゲストのビリー・スワンと出演して二日。これから推測しても、オインゴ・ボインゴの地元ファンの間での根強い人気が容易に理解できるだろう。
オインゴ・ボインゴは、LAロックの代表的人気バンドの一つ。しかし、LAロックに共通するものといえば、踊り易い音楽ということぐらい。意味不明のオインゴ・ボインゴというユニークな名称にふさわしく、この8人編成バンドの音楽は、彼ら独自の個性にみちあふれたユニークで魅力的なものである。 とくに歌の素材として取り上げるテーマが、「痴呆」「アメリカ」「性的妄想」「いまいましいLAの批評家たち」などと面白く、しかも歌詞が、オインゴ・ボインゴたちだけではなく、多くの若者たちの日常生活に根付いていて、それが彼らの音楽に対する、ファンからの熱烈な支持となってあらわれている。
この「オインゴ・ボインゴの謎」は、正確には三枚目のLPに当たるのだが、相変わらず、彼らの音楽的態度を守っていて、見事なほどである。一曲目の「グレイ・マター」から、オインゴ・ボインゴの主張は、日本のファンの間でも支持を受けるはずだと思っている。

福田一郎 


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