◆オインゴ・ボインゴ

素敵なぐらいにかたやぶり、バカバカしいぐらいにエキセントリック、しかも惚れぼれするぐらいにコマーシャル……。最もLAに執着しながら、最もLAらしからぬ音楽劇一座オインゴ・ボインゴ。今まさに彼らの時代が到来!―山田道成―

しばしの間忘れていたグループが、今改めて目前に鮮明な形のまま存在する。オインゴ・ボインゴ――このなんとも不可思議な響きを持ったグループの名前を、再び耳にし、ましてやこうして彼等の新作について文章を書くなどとは、全く想像もしていなかった。
LAのクラブ・ハウス・シーンが生んだ、多芸多才の音楽劇一座と呼ぶにふさわしいオインゴ・ボインゴ。このグループの名前を日本で最後に耳にしたのは、確か今から1年半ほど前の'84年の暮頃。かつては<スプラッシュ>、最近ではスティーヴン・スピルバーグ監督の<マネーピット>といった映画での名演が強烈な印象として残る、 男優トム・ハンクスの主演作の1つ<バチェラ・パーティ>のサウンドトラックにて、メイン・テーマの「Bachelor Party」と「Something Isn't Right」の2曲を披露していたのが記憶にある。
しかし、今回新たに手元に届いたインフォメーションを見ると、オインゴ・ボインゴはその間も、'85年には映画<ときめきサイエンス>のメイン・テーマ「Weird Sience」を担当し、これが全米トップ40入り。'86年にも映画<バック・トゥ・スクール>のサウンドトラックの中の1曲である「The Dead Man's Party」が、シングル・ヒットを記録。さらにはアルバム『Daed Man's Party』がリリースされ、この中から「Just Another Day」や「Stay」とシングル・ヒットを放つなど、 ここ数年もアメリカでは、相変わらず着実に活動を続けてきたようだ。しかもオインゴ・ボインゴは、'85年の時点で古巣のIRS/A&Mを離れ、現在のMCAレコ−ドへと移籍。今回のアルバム『Boi-ngo』は、そのMCA移籍後第2弾、通産では5作目ということになるわけである。
もともとオインゴ・ボインゴに関しては、かねてから日本に情報が入りにくいグループだったと言える。IRS/A&M時代には10インチ・EP『Oingo Boingo』('80)、『Only A Lad』('81)、『Nothing To Fear』('82)、そして『Good For Your Soul』('83)という1枚のEPと3枚のアルバムをリリースしているが、 その内日本で紹介されたのは、『オインゴ・ボインゴの謎』なる邦題がついたセカンド・アルバム『Nothing To Fear』のみ。
そのオインゴ・ボインゴが、ザ・ミスティック・ナイツ・オブ・ジ・オインゴ・ボインゴの名で、'70年代中期よりLAで活動しはじめ、'77年には第8回世界歌謡際への出場のために来日していたことも、『Nothing To Fear』の日本発売が実現したことで、初めて伝えられた話だし、この唯一の日本発売も、時を同じくして登場した日本の女性シンガー、庄野真代のLA録音のアルバム『逢、愛、哀』のバックを、このオインゴ・ボインゴが担当したからこそ実現したもの。 つまり、オインゴ・ボインゴは、かなり日本では冷遇視されていた存在だった。が、そのオインゴ・ボインゴも、L.A.においてはとてつもなくビッグな知名度を誇るグループであったと言われなければならない。いや、正確には現在でもそうあると言われなければいけないだろう。
'80年代の幕開け直後から脚光を浴びた、LAのクラブ・ハウス・シーンにおいて、Go-Go'sやモーテルズなど共に圧倒的な支持を得てきているオインゴ・ボインゴ。前述のとおり、彼らは'70年代中期より活動を行ってきたグループであり、すでに10年以上の年月も経過しているわけだが、つねにそのグループの中心的存在にあったのが、リード・ヴォーカルとリズム・ギターを担当するダニー・エルフマン。 彼はオインゴ・ボインゴのレパートリーとする曲のほとんどを書いてきた人物でもある。オインゴ・ボインゴの現在のメンバーは、そのダニー・エルフマンをはじめスティーブ・バーテック(ギター)、ジョニー“ヴァトス”ヘルナンデス(ドラムス、パーカッション)、サム・フィリップス(テナー・サックス)(←引用者注:フィップスの間違い)、レオン・シュナイダーマン(バリトン・サックス)、デール・ターナー(トランペット)、ジョン・アヴィラ(ベース)、マイク・バシック(キーボード)の8人。 すでに過去に何度となくメンバー・チェンジが繰り返され、日本で唯一発売になった『Nothing To Fear』の当時とでも、2人ほど入れかわっているが、音楽背的に一貫したものを感じるのは、やはりダニー・エルフマンの頑なまでのポリシーによるものだろう。
相変わらずヘヴィーでソリッド、しかも変幻自在とも言えるビートをメインに、どこか無国籍(ある意味ではオリエンタル)なイメージが漂わせる「Home Again」でスタートする、今回のアルバム『Boi-ngo』。その超個性的なアプローチに関しては、かつてかなり驚いたものだが、その衝撃度は時代が変わった現在においても、全く落ちていない。
このアルバムから第1弾シングルである「Not My Slave」を代表するように、オインゴ・ボインゴの音楽性は、つねにポップであることを前提にはしているのだが、いざその個々の音作りというと、そうとうにかたやぶりなものであると言わなければならない。以前はパーラフォンのような楽器を用いて、エスニックな感覚を放つロックン・ロールを展開していたが、そうした感覚は楽器を今の時代を象徴とするエレクトロニクス類に持ち替えた現在でもそう大きくは変わってはいない。
ギター、ベース、ドラムスという通常のリズム体に、キーボードとホーン・セクションが絡み、形成されるオインゴ・ボインゴのサウンドは、全体的につねにパーカッシブであり、さらにエキセントリックである。しかも、そこにはニュー・ウェイブからハード・ロック、あるいはR&Bなど様々な要素が導入されつつも、全体的にはいずれのものにも属さない、すべてにおいてあきれるほど素敵な独自のスタイルを確立している。その痛快さはそれこそ今をときめくフィッシュボーンと比較できるぐらいに、奇想天外と言えるかもしれない。
最もLAに執着しながら、その反面最もLAらしからぬグループであるオインゴ・ボインゴ。そのかたやぶりなサウンド・スタイル、ばかばかしいぐらいにエキセントリックで、惚れ惚れするポップ感覚は、ようやくこの日本でも理解される時代が訪れたといえるかもしれない。今まさにオインゴ・ボインゴ時代の到来……、その断言してしまおう。(←注:原文ママ)
<'87.5.6 Michinari Yamada>


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