Symphony Of Enchanted Lands U
   - The Dark Secret -

Rhapsody




【曲目】
1. The Dark Scret
2. Unholy Warcry
3. Never Forgotten Heroes
4. Elgard's Green Valleys
5. The Magic Of The Wizard's Dream
6. Erian's Mystical Rhymes〜The White Dragon's Order
7. The Last Angels' Call
8. Dragonland's Rivers
9. Secred Power Of Raging Winds
10. Guardian Del Destino
11. Shadows Of Death
12. Nightfall On The Grey Mountains



待ち望んでいた、イタリアのシンフォニック・メタル・バンドであるラプソディの6枚目の作品、『Symphony Of Enchanted Lands U』が手元に届いた。
前作の『Power Of The Doragonflame』の2002年3月27日発売以来、ちょっきり2年半が経過したことになる。
その間、ギタリストのルカ・トゥリッリは、現Dionysusのボーカリスト、オラフ・ヘイヤー(注:元ラビリンスのオラフ・トーセンではない。ファビオも絡んでいて、勘違いしやすいです)と組み、ミニアルバムのDemonheartとフルアルバムのProphit Of The Last Eclipseを製作したが、他のメンバーには目立った活動はなかった。
この製作のために活動を控えていたのだ!!期待は高まる。

ラプソディは、前作までで、氷の戦士のシリーズを追え、今回の6作目からは“宇宙”をテーマにした新シリーズを作るとインタヴューで答えていたが、蓋を開けてみたら、氷の戦士の新たなるシリーズになっていた。
いや、別に私はかまわないが。。。


ナレーターとして、ゲストにクリストファー・リーを迎えている。
サルマンですよね〜♪ 私にとってはドラキュラ伯爵のイメージの方が大きいんですけど。。
前作までの“長老”によるナレーションに比べると、より神々しくて威厳がある。良い人選ではないだろうか。
しかし、サルマンである彼の起用により、よりロード・オブ・ザ・リング調というか、RPG調というか、サウンドトラック調になっているのは否めない。

全編を通して聴いてみると、ファーストのLegendary Tales時の民俗音楽(フォークトラッド)が大きく復帰している。
4. Elgard'sGreen Valleys、8. Dragonland's Rivers、9. Secred Power Of Raging Winds、10. Guardian Del Destino、11. Shadows Of Death、
クラシック調も多い。
1. The Dark Scret、3. Never Forgotten Heroes、6. Erian's Mystical Rhymes〜The White Dragon's Order、7. The Last Angels' Call、11. Shadows Of Death。。。いや、ほとんどだろう。

そのうち、疾走系は、
2. Unholy Warcry、6. Erian's Mystical Rhymes〜The White Dragon's Order、9. Secred Power Of Raging Winds、
バラードは、
5. The Magic Of The Wizard's Dream、8. Dragonland's Rivers、10. Guardian Del Destino  ってところか。

新しい物語の始まりだからなのか、あまり戦闘的な疾走曲がない。
アリガロードの街の情景や、サブタイトルにもなっている“Dark Secret”という地獄の予言の説明なのか、曲に動きがない。
バラード好きな私でさえそう思うのだから、メロスピ好きな人には相当物足りないだろう。
そういう人には、むしろ先行発売された、ミニアルバム(5曲中3曲がSymphony Of Enchanted Lands Uからの収録)がオススメです。フルアルバム未収録のThunder's mighty Roarが、5枚目のPower Of DragonflameのWhen Demons Awakeのように、ファビオの珍しいデス声で歌われ、かなりハードだ。
バランス的には、フォークトラッド調な曲とクラシック的な曲を1曲ずつ削り、それを疾走曲にすればオッケーだぁ。

これらの変化は、サシャ・ピートとミコのプロデュースでなく、今回からギターのルカとキーボードのアレックスによるプロデュースになったからであろう。
ヘヴンズ・ゲイトのメンバーであるサシャ・ピートは、シンフォニックを大幅に取り入れ、壮大にして華麗、必殺のスピードチューンあり〜の、感動的なバラードあり〜のの、全てを満たす名プロデューサーだ。
今回は共同プロデューサー&エンジニアとして名を連ねているものの、作品の主導権を握っているのはルカとアレックスであるのは容易に想像がつく。サシャの発言力は薄れてしまっただろう。
う〜ん、二人は放っておくとクラシックへ走ってしまうので、それをハード&メタルに留めるために、プロデューサーは置いた方がいいんじゃないのか??

さぁ、要望はこれだけ書いておけばいいだろう。
ちゃんとレビューを書かなくては。
Symphony Of The Enchanted LandsUは、疾走曲が少なく、クラシックがかり、フォークトラッド的な部分も多い作品だと認めてしまえば、がらりと違った顔を見せてくれる。
でないと、『つまらない作品』で終わってしまう。
初めはとっつきにくくても、聴き慣れてくると、ここまでクラシックと融合しているHR/HMを作れるバンドはそうないことがわかる。これがどんなに凄いことか!!

Martinu Philharmonic Orchestraを大幅にフューチャーし、50人ものコーラス隊を使った演奏は、そりゃぁ〜迫力がある。
まるでオーケストラとの共演ライブのようだ。
Guardiani Del Destinonでは、オーケストラとルカのギターが交互に鳴り、まさにライブしている。実に楽しそうだ。
が、なにも、ここまで生オーケストラをやらなくても。。。生演奏よりも、シンセで作った宇宙的な音の方が実は私は好きなのだ。
とはいえ、時代背景は古代または中世の暗黒時代を意識しているので、クラシックにこだわる気持ちはわかる。
要は、バランスなのだ。私はメロディック・ハードなRockを聴きたいのである。クラシックではない。もちろんクラシックがあっていいのだが、やりすぎなのだ。
6曲目のErian's Mystical Rhymes〜The White Dragon's Orderは、10分を超える壮大な曲だが、クラシックの部分を3〜4分切り取り、コンパクトにまとめれば、もっと良くなると思う。間延びして聴こえるのが残念でならない。

そういうのに片目をつぶって聴くと、“第7の黒い書物”の出現による大いなるストーリー展開に沿った楽曲は、重厚さと大仰さが随所に表れ、ラプソディの世界観を紡いでいっているのがわかる。
ルカのお得意の早いリズムのリフは健在だし、散りばめられたネオクラシカルな音階のギターソロは、ルカにしか弾けないであろう輝きを帯びている。重く格調高くて速いのだ。今回は特に
The Last Angels' Callや Secred Power Of Raging Windsの2曲でクラシックの名曲のフレーズを弾いている。まるでスペース・オデッセイみたい。これが小気味良くて、聴き入ってしまうのだ。

ファビオは相変わらず情感を込めた歌声を聴かせてくれる。彼の美声には惚れ惚れする。
私がラプソディを好きな理由のひとつだ。
特にバラード。5曲目のThe Magic Of The Wizard's Dreamは、やさしく、力強く歌い上げる。声に艶がある。
けれど、スカボロー・フェアみたいに聴こえるGuardian Del Destinoはこれでいいのか??パクリみたいだぞ!!

アレックス・スタロポリは、毎回見事なオーケストレーションを聴かせてくれるが、今回は本物が参加しているから、どこでどう活躍しているのか今イチわからない。せめてピアノソロでもあればまた違った雰囲気になって良かったのだが。
たまにあるキーボードソロでは、ルカに負けないクラシカルなフレーズで主張している。

アレックス・ホルツワースとパトリース・ガース(前回のジャケには写真がなかった^^;)のリズム隊は、主張しないものの、しっかりと下支えをしている。
かなりテクニカルなのだが、他がそれ以上に目立ってしまうのよね〜。

フォークトラッドには名曲が多い。
8曲目のDragonland's Riversは、水の音や鳥のさえずりなどの効果音に乗せ、ファビオがやさしい歌声を聴かせてくれる。
ブラックモアズ・ナイトにも似た、東欧調の作品に仕上げている。


高い水準にあるのだが、今までが良すぎたのと、落ち着いてしまったのが残念だったのと、彼らならもっとやれるはずだという期待感で、惜しい作品になってしまった。
ラプソディでも毎回はキツいってことだろう。
ルカの超絶ギターソロを、これでもか!で聴かせてくらたらなぁ〜。
アコースティック・ギターやピアノでより“静”を表現してくれたらなぁ〜。

また、彼らをお手本に、シンフォニックなサウンドを取り入れたバンドが増えてきて、かつてのインパクトが薄らいでしまったのもあるだろう。
でも、新たなる物語は序章が始まったばかり。今後の巻き返しは必ずや果たせるだろう。
何しろ、実力はピカイチなのだから。
次作が楽しみである。いっそのこと、サントラを作ってしまえ!!(((((((((;^▽^)