Novella
Renaissance




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77年作品。
私がルネッサンスの中で一番好きな作品だ。
今までのルネッサンス作品と比べ、若干暗めかも知れない。フォーク・トラッドが色濃く表現されている。
アニーの優雅さ・気品というより、妖しさ・崇高さを感じる。

実は、私が最初に触れたルネッサンスのアルバムなのだ。(曲ではオーシャン・ジプシー)
そのため、思い入れは強い!!

とにもかくにも、アニーの声が最高だっ!!!!
私はかつて、これ以上の美声に出会ったことがない。
聴いているだけでリラックスして心地良くなり、自然に耳を傾けてしまう。発音がクリアなのもいい。ちょっとした息使いまで音を拾ってしまう。まさに“拝聴”状態だ。

初期のアルバムでは低音はやさしく軽く歌っていたりするが、Novellaでは力強い。
例えば、最も好きな“Can You Hear Me?”と、これまた好きな“Carpet Of The Sun”を比較すると、“Carpet Of The Sun”はまるで少女のように素直で純真である。歌詞も、自分を取り囲んでいる大自然の恵みである太陽、やわらかい緑の草、山、海、大木などをまっすぐに見つめ、それらがわたしとあなたの世界の一部、成長していきましょう。。と、あくまでも前向きだ。怖れや穢れや疲れを知らない、無垢な魂が宿っている。
(余談1: サビの部分は、♪She's a carpet of the sun〜 かと思っていました。ほぉ〜、彼女は太陽でできたカーペットのように、温かくて包み込んでくれる、素敵な人なんだな。そりゃ魅力的だわとマジ信じてましたぁ。^^;)

それに対し、“Can You Hear Me?”では、中世ムードあるアコギに乗って始まる、アニーのけだるそうな歌声は、成熟した女性のものだ!!深く封鎖された中世の森を感じさせる。歌詞は現代的であるが、サウンドだけ聴くと、バンド名にあるように、ルネッサンス音楽なのだ。その時代の光景がありありと目に浮かぶ。
教会が地域の中心にあり、文化の中心でもある。手工業や農業を営み、秋の収穫の喜びがあり、お祭りを開く。集落のはずれには未踏の地である深い森がある。
(余談2: 高校の選択授業で西洋経済史を選び、私は中世の土地囲い込み運動やギルドを担当しました。その時の発表ににBGMとしてNovellaを使おうと、本気で思ってましたぁ〜^^。;)
しっかりと生活に根ざしたような安定感を、Novellaから感じてしまうのだ。
まるで、中世時代をそのまま切り取ってきたかのような雰囲気が閉じ込められている。“The Sisters”や“Midas Man”に使われている効果的な「鐘の音」による影響もあるだろう。

どちらの声質もとっても好きだ。


さて、ここからmasshならではの
見方を書いていく。

私はクラシックとメタリックなRockが融合したネオクラシカルが好きなわけだが、一気にネオクラシカルが好きになったわけじゃない。その流れの秘密を解くヒントがNovellaにありそうなのだ。PrologueやCarpet Of The Sunではなく、Novellaなのだ。
それを聴きながら探り、書いてみたい。


Novellaはメロディック・ハード

思うに、ルネッサンスの作品の中でNovellaだけ異色だと思う。
他の作品はプログレで、Novellaは厳密に言うとメロディック・ハード、もしくはネオクラシカルの領域である。
音がまずソリッドというか、堅い。ドラムスに歯切れがある。メロディーがマイナー調だ。
ネオクラシカルのアルバムには、必ず2曲ほどバラードがあるが、ルネの場合全曲バラードと考えるとわかりやすい。
さらに、“Can You Hear Me?”と“Touching Once”はロックオペラという位置付け。スケールが大きい。
アニーひとりのボーカルで進行するし、目まぐるしい場面展開はないが、切れ目がなく、形式や様式が自由で流れに乗っているのは、ロックオペラと言うに値するだろう。
アコギやピアノの演奏やオーケストレーションの上に、テクニカルな早弾きギターソロや荘厳な早弾きキーボードソロの乗った図を想像してほしい。メロディック・ハードでなくて何だというのだろう??
Angraの「Temple Of Shadows」を思い出してほしい。The Shaow HunterやNo Pain For The Deadに近いものを感じる。アダージョにも近い。
また、情景を表現しているかのような静と、躍動的な動の対比。まさしくメロディック・ハードの核心部と言えよう。

アニーの天を突き抜くような、よく抜けた声はどうだろう?ルネッサンス作品の中でも乗りに乗った時期なのではなかろうか?
また、タイトルがNovella(小説⇒お伽噺)だけあって、他のアルバムとは違った世界観を描いていると思う。
シェーラザードといい対比をなしている。


Sistersのギターソロ

マイケル・ダンフォードのスパニッシュなギターソロが聴ける。
これを無理があるが、リッチー大先生のセカンドのSpanish Nights(I Remmber It Well)と比較してみる。
ああ、テンポからして全然違うわ。コード進行は同じだが。それだったら、Beyond The Sunsetがまだ似ている。なぜか?
つまり、どうアレンジしたところで、ルネッサンスはイギリスなのだ。さもなかったらフランス。スペインのような、自由で気まま、ヘタをすると汗かきのようなものは皆無。規律正しく、格調高いのだ。
イギリスの丘の続く大地を思わせる。
Sistersは、スパニッシュギターよりもキーボードによる情景や教会の鐘の音が優先される。スパニッシュギターはいわばアクセント。哀愁ややりきれなさを引き立てているようだ。Sisterとは、文字通りシスター。スペインからの異人であり、異国情緒を運んでいるってことだろうか?


オペラちっく

最近のメロディック・ハードではオペラちっくなコーラスを
「クワイア」と呼んでいるようだ。
“Can You Hear Me?”でも、冒頭の嵐が丘を思い起こさせるような風の音のあと、軽快な前奏が鳴り響き、すぐにオペラちっくなコーラスが入る。
アニーひとりのスキャットは他のアルバムでもよく聴かれるが、混声のクワイアとなると、“Can You Hear Me?”と“Sisters”の最初の部分くらいしか思い浮かばない。繰り返し歌われる。これが神聖で心地良い。まるで礼拝堂にいるかのようだ。
Novellaが他のアルバムよりも好きかどうかは、この“オペラちっく”が決め手となろう。
クワイアは、荘厳で幽玄ななメロディック・ハードバンドには不可欠である。アダージョは効果的に使用している。広がりがぐんと出てくるのだ。


特徴的なのは、アコギの多用

それまでのルネッサンスは、ピアノがバンドの旋律を奏でていたと思う。重要なパートはほとんどJhon Toutのピアノだ。Trip To The Fairがいい例だ。
それはそれでいい。作品として完結している。名曲である。
それし対し、アコギを使った、フォーク調な曲で勝負したのが“Can You Hear Me?”だ。
6:27からのアコギのアルペジオは、同じメロディのアルペジオと違って音が引いているというか、こもり気味で、丸い音が、時を遡り、遠い記憶を呼び起こしているかのように、とろけるような懐かしい気持ちにさせてくれる。
さぁ〜っと、イギリス郊外の、どこまでも続く丘と草原と森の大地をイメージする。
出だしの歌メロの下地に流れているようなアコギに、中世の妖しさ、魔性を感じる。
4:00〜あたりの、Fly like a song〜のいろいろと表情を変えるベースラインもいい。

Midas Manもアコギ重視の曲だが、こちらはアニーの低音ばかりでちょっと残念。高音もないと!単調さが残る。残念!!
あ、いえ、低音が悪いんじゃなく、高音があってこそ低音が光るというか。。
とはいえ、ルネ作品だから水準は軽くクリアしている。


ピアノによる小曲の清々しさ

The Captive Heart(魅せられた心)は、可憐でこれまでのルネッサンスを一番引き継いでいる作品だろう。
可憐で上品なピアノとアニーの美声。
シンプルだが必要にして十分。
ピアノが邪魔にならずに、アニーの声を引き立てる。コスモスのように清々しい。
ぜひともボリュームを上げて、アニーの声に浸ってほしい。

特にボーカルが始まった最初の4小節だ。アニーは低音で実に伸びのあるつややかな声を聴かせてくれる。
高音だけじゃないのだ。
しっかし、どの曲でもアニーのボーカルが始まる時は、ゾクゾクするわ。声にはっとする。
ルネッサンスは、アニーの声の入りに細心の注意を払っているのだろう。


メタル化進化形はWithin Temptation

何度もあちこちに書いているが、Within Temptationは、ルネッサンスをメタルにした形式を取っている。(と思う)
これがまた、実にマッチしているんだわ。詳細は こちら
Novella最終曲のTouching Once(Is So Hard To Keep)(情熱)なんて、あのまんまメタルにできる。
ベースがリードを取っているような変則構成だが、まぁ、ベースはそのままとして、上からテクニカルな早弾きのギターをかぶせるだけで、メタルとして成立する。
クラシカルなイントロは、もちろんギターでガツンと一発。歌メロには、メロディアスなリフが加わり、サビからは、ボーカルをジャマしない程度にボーカルを追うようにギターが入る。
そして、4分〜6分台の演奏を縮め、サックスの部分で早弾きギターソロを決めれば完璧!!
サックスが入っているから、ジャズっぽく聴こえるけれど、情熱は紛れも無くRockです。それもヘヴィーな。


いろいろ御託を並べてしまいましたが、つまり、Novellaはアニーのボーカルばかり収録されているのがいい。
Jhon Campの歌が悪いのではなくて、アニーが素晴らしすぎる!!
他の声はいらないのだ。
それもあって、Novellaを聴く。