The 1st Chapter

  Circus Maximus


ノルウェー出身のCurcus Maximusのデビューアルバム。
最近の私のお気に入りで、ヘヴィー・ローテーションである。
曲調は、メロディック・ハードで、DreamTheaterのメロディアスな部分を取り入れている。とってもテクニカルだ。
そこに、シンフォニーXのストーリー性のある大作志向が融合されている。
なお、英文によるオビには『SYMPHONY X, TNT, DREAM THEATER, PRETTY MAIDS and QUEENSRYCHE』と書かれている。
SYMPHONY Xほど荘厳さとおどろおどろしさはなく、TNTほどコマーシャルでなく、Dream Theaterほど重低音重視ではない。

このバンドの素晴らしいところは、DreamTheaterがImages&Wordsで示した“叙情性”が存在することだ。
変リズム&曲調が変わるので、かなりプログレ寄りのメロディック・ハードと言えるが、そこに親しみやすいPOP性を取り込んでいるのが特色だ。
2曲目の「Alive」にあるような、弾けるようなリズムと軽さに彼らの良さを感じた。
この手のバンドには珍しい“はかなさ”さえある。

それらは、ヴォーカルのMichael Eriksenの声質に起因する。
イケメン声なのだ!!
何のことない、私の好みの声なのだ。やや細めの声質だ。
低音はゲディ・リーのように豊かに響き渡り、中音は曇りがなくて耳障りが良く(80年代のジョン・ボン・ジョビか?)、高音はトビアス・サメットのように突き抜けてシャウトする。ハリがあるのだ。
声だけ取れば、コーラスも含め、リトル・リバーバンド(知ってる?)に一番近い気がする。
とにかく、一生懸命に歌唱しているのに好感が持てる。出し惜しみしないのだ。
高音のヌケの良さが心地いい。このデビューアルバムに全力を注いだ必死さがひしひしと伝わる。
似ているバンドというと。。。オランダのSun Cagedあたりだ。ボーカルの声質も近い。

ただ惜しいのは、情報を詰め込みすぎて、焦点がボケてしまったことだ。
曲は素晴らしいし、ギタリストやドラムス、キーボードの実力も申し分ない。それを、もっと聴きやすく“静”と“動”の対比をつけてくれたらいい。でないと、最後まで一本調子で、どの曲を聴くべきなのかわからなくなる。それ以前に疲れてしまう。
19分もの大曲の『The 1st Chapte』等にも静と動の対比はあるが、もっと徹底してほしい。音を止めるくらいやってほしい。また、“静”では楽器をひとつに絞ってもいいと思う。
ギターソロではサウンドの厚みを減らしていいと思うのだ。
ピアノソロに関して書くと、『Glory Of The Empire』の7分あたりの叙情的で素晴らしいソロは、ギターのリフにかき消されている。まったくもって残念なことだ。ピアノが印象的な曲なんだから、リフを控えるべきだろう。

それらを考慮に入れても、この完成度の高さは尋常ではなく、次のアルバムへの期待は高まるばかりだ。
Circus Maximusのような素晴らしいバンドのアルバムこそ、日本で発売されるべきだ。


番号  曲  名  内       容
1 Sin Dream Theater風の低音リフとリズムとメロディに乗り、メロディアスさは彼ら以上。
Dream Theaterがこうあったらいいなの願望を満たす、必殺チューンだ。
中近東風のフレーズを無理なく生かしている。→メトロポリスPt.2のHOMEをケヴィン・ムーアで演奏した感じ。
2 Alive 私が一番好きな曲。マイケルの必殺ヴォイスをたっぷりと堪能できる。
重さと軽さが共存し、テクニカルなのにキャッチーでもあるので、シングルカットは間違いなくこの曲になるだろう。(だからどうした?^^;)
聴き終えたあとの充実感は、何にも変えられない。本当に素晴らしい。
3 Glory Of The Empire Shaamanにも似た曲。もろ70年代プログレのイントロが美しい。
プログレのはかなさを持ちつつメタルと無理なく融合させられるのが、北欧ならではなんだろう。
4 Biosfear Liquid Tension Exeperimentに似たインストナンバー。
ヘヴィーなことはすべてこの曲でやってしまっている。
5 Silence From Angels Avove アコギを主体とした珠玉のバラード。切なさが伝わってくる。
6 Why Am I Here サビの“Why Am I Here”が印象的。
7 The Prophecy この曲もアコギ1本で始まる。いや、2本だわ。^^;
中盤からヘヴィーに変化する。ある意味力を抜いた曲。次の大曲への毒出しかも?
6:44あるが、これを5:00くらいにまとめるともっと良くなると思う。終わり方は正解。
8 The 1st Chapter 19分もの壮大な大曲。もろシンフォニーXの影響が窺える。だが、ギタリストのMats Haugenは、マイケル・ロメオほどに強く曲作りに関わっているわけではないのだろう。場面展開と歌メロ主導である。
短すぎる泣きのギターのソロが残念。オーケストレーションや、冗漫さを感じる長い歌メロよりいいと思うのだが。
9 Imperial Destruction 彼らの中ではシンプルな類のメロディック・ハードナンバー。
それでもかなり複雑なことをやっている。
全編を通して流れるもの哀しさはこの曲にはない。珍しく熱を感じる。
このタイプの曲を中途にはさんでも良かったのにと思う。というのは、曲の展開が読めて疲れないからだ。よくまとまった佳曲である。