「恥」
「耳」のそばに「心」があると「恥」ずかしい。
<設定>
修学旅行の帰りのバス。
遊びつかれて、さすがのみんなも眠たそう。
先生も疲れたのか、騒ぐ僕らを注意せずに前を向いて座ってる。
僕は隣で寝ているタカシの寝顔を撮ったりして遊んでいた。
けれど一向に起きる気配もなく、つまんないからそれはすぐやめた。
後ろ向きで話してたユウスケが大人しくなった。
どうやら車酔いしたらしい。
周りも続々と寝だして、なんとなく僕らもおとなしくなった。
気が付いたら、さっきまで話してたナオヒサまで眠ってる。
手持ち無沙汰で、ずっと流れる景色を眺めてた。
久しぶりに家に帰れる安堵感と、旅の終わりの切なさ。
あー僕もだんだん眠くなってきたなー。
…。
…。
「ねぇ、隣座っていい?」
驚いて隣を見ると、カナエが前の席に身を乗り出していた。
「ねぇ、いいでしょー?サキが寝ちゃって暇なのよー。」
「あ、ああ…。」
言うが先か応えるが先か、カナエは補助席のシートを倒して、座席を確保していた。
大きく伸びをしてカナエがぽつりとこぼす。
「あー終わっちゃったねー。」
「え、なにが?」
シンジラレナーイ、といった顔でこちらを見る大きな瞳。
「修学旅行に決まってるでしょー?学校生活最後の大イベントよ!」
「そういやカナエ、実行委員長になったりしてずいぶんはりきってたもんな。」
嬉しそうな笑顔。
「うん!たーくさん思い出作っちゃった!」
「ほんとにねー。楽しかったわ。」
ちょっと恥ずかしそうに、つぶやいた。
「…ほんとはもう一つ、思い出作りたかったんだけどな。」
「え?なに?」
ぶんぶん、と音がしそうなくらい大きく手を振る。
「なんでもないなんでもない!それよりさー、自由行動どこ行ったの?」
「え?ああ、中華街に行ったよ。それがさー、聞いてくれよ…」
・
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「…で、タカシのやつが、…ってあれ?」
「すーすー…。」
どうやら寝ちゃったようだ。
幸せそうな寝顔に、思わず顔がほころぶ。
「あーあ、自分から誘っておいてこれだもんなー。」
だけど、まあ許そう。かわいいから。
その時、バスが大きく揺れて、カナエの頭が僕の肩に寄りかかる。
「〜〜〜〜〜〜っっっっつつつ!!!!」
思わず周りを見回してしまった。
幸い後ろの方の席だったから、誰にも気付かれてはいないようだ。
(どうかばれませんように…。運転手さん、安全運転でお願いします。。。)
そしてどうか、このまま、目を覚ましませんように…。