Mansun日記 第7章 (1997年6月)

MANSUN LIVE COMPILATION '97 (bootleg)


◆ Mansunのブートレッグ・ビデオ買ってきたからみんなで見よ。
● 見たい見たい! きゃんきゃん!
▲ ブートレッグというものはアーティストの権利を侵害し、ひいては芸術の‥‥
● なこと言ったって、体が必要としてるんだ、体が
◆ もう禁断症状で死にそう!
▲ Mansunはドラッグだとは言ったけど。
★ まあ、そんなわけで、私はめったなことがないかぎり、ブートレッグは買わないんですが。
● だいたいが欲しがる人がいるのに、出さない方が悪い。
▲ またそういう暴論を。
● でもそうだと思わない? 東南アジアあたりで売ってるコピー商品は別として、こういうオリジナル商品の場合、ブートレッグだけ持ってて正規品を持ってない人はいないよ。わざわざ高い金出して質の悪いブートレッグを買うくらいなんだから、正規ビデオが出れば必ず買うよ。こんなありがたいファンはいないじゃない。なのにその需要を無視するから悪い。どんなバンドもアルバム1枚出すごとに、ライブ1本、コンピレーション1本のビデオを出すべきよ。
★ でもそれは採算からいって無理。という間隙にこういう商売がなりたつんですが。

◆ そんなわけで、エアーズをのぞいたときはほんの冷やかしのつもりだったんだけど、見てしまったらもうたまらなくて‥‥
★ エアーズは必ず試聴させてくれるってところが良心的だね。ブートレッグは不良品も多いから。
● それ以前に、中味自体が不良のことの方が多い。
◆ Mansunは2本出てたんだけど、1本はギグの隠し撮りで、まあ、画質は推して知るべし。これはテレビからの録画だから、短いけどこっちにしたの。
▲ それこそ元手ぜんぜんかかってない、詐欺みたいなもんだけどねえ。ホームビデオでエアチェックしたものをコピーしただけでしょ。
★ いくらしたの?
◆ 3千円。でもね、イギリスに友達作って、Mansunの出る番組ぜんぶチェックして録画してもらって、それを日本へ送ってもらって、NTSC変換して編集するのに、どれだけ手間と金がかかるか考えたら、これだってただみたいなもんよ。
● いいよ。文句あるなら▲は見なくていいから。
▲ 見たいですぅ!
◆ だいたいが私たちには、あらためてPaul Draperの正体を確認するという大事な目的があるのだ。
★ だってあれだけ近くで本物見たのに!
● でも、その後も写真やビデオで見るたびに別人のように変わるんだもの。混乱して記憶もあやふやになってしまう。その点、テレビ画像なら嘘がないし、思い出すよすがになるかと思って。
▲ それじゃあ、見ます。うわあ、ドキドキ‥‥

◆ 1曲目はTFI Fridayの“Stripper Vicar”。
▲ きゃー! やったー!
★ なんだかだ言って、▲がいちばん興奮してるんじゃない。
● それほど画質悪くないじゃない。これならこないだ買ったSuedeの英国版と変わらないというか。
◆ たとえ正規ビデオでも、PALから変換するとどうしてもこれくらい荒れちゃうんだよね。音もハイファイできれいだし。とりあえず見られれば文句ないよ、私は。
★ これはまだ髪が長かったころですね。
● かわいい〜!
★ ◆は「薄汚い」とか言ってたけど、かわいいよねえ。こういうくちゃくちゃっとした髪好きだわ。長くてもブロンドだと重い感じしないし。
▲ そのブロンドが気にくわなかったんでしょ。
◆ だからいいんだよ、ナチュラル・ブロンドは。でも、この髪型だとCrispian Millsみたいだ。
● 似てないよー!
★ 似てるとしたら髪型とブロンドってところだけでしょ。
◆ ハンサムなところも似てる。
● この人、最近Crispianにも気があるんじゃない?
▲ 気の多いやつだ。
◆ でも彼、こんなに小さかったっけ? 確かに大きいとは思わなかったけど、これで見ると小人みたい!
▲ 撮り方の角度の問題じゃない? ギグでは見上げる形だから。
◆ 変換のせいで画面の縦が縮んでるんじゃないか?
▲ だったらデブに見えなきゃおかしい。こんなに細いし。
● 小さくてもステージでは大きく見せるというのは、大物の証拠よ。
★ ちなみにPaulのお洋服は、迷彩のジャケットにタータン・チェックのズボンというキチガイみたいな取り合わせ。
▲ 普通の人がやったら道化だけどね、こういう人は何着てもいいのだ。
● そりゃ、Manicsファンはそう言うよな。
▲ 一言多い。

★ ところでこれ、口パク?
● テレビだもの、しかたないよ。
▲ 嘘、これは生音よ。
★ どっちかわかんないよー。
◆ 音が荒れてるから、レコードでも生っぽく聞こえるということはあるよ。
▲ これは生だって! 私はCDがすり減るほど聴き込んでるんだから、間違いない。レコードとは違う。だいたいレコードには必ず入ってるキーボードが入ってないじゃないか。
● えー、こんなうまかったっけ?
▲ おまえら、わざわざライブ行って何聴いてきたんだ?
◆ だってあれはPAに近すぎたということもあって‥‥
★ Manicsのブートレッグを見たときも、あまりのうまさに最初レコードかと勘違いしたけど、Mansunがこんなにうまかったなんて!
▲ Mansunはうまいよ!
● こんなにかわいくて、曲も良くて、演奏もうまいなんて! 涙が出ちゃう。

◆ 2曲目は“Wide Open Space”。これはTOTPだな。
▲ この音はレコードだね。TOTPって生演奏になったんじゃなかったっけ?
● しかし、早くも顔が変わった!
★ ほんと、ちょっぴり髪切っただけなのに、同一人に見えない!
▲ これは画面が白っぽく飛んでるせいじゃない?
● この違いはそんなもんじゃないよ。だいたいぜんぜんかわいく見えないし。
★ 後ろの毛がチョロチョロ長い、こういう髪型きらい。
◆ 好意的に見れば、デビュー時のBowieみたいに見えないこともないが。
▲ お召し物はやはりミリタリー調のカーキ色のジャケットに赤いTシャツ。Manicsみたい。すてき。
◆ Manicsのコスチュームのことはあまり口にしない方が。
★ しかし、まいったな。こう顔が変わるんじゃ、よく似た別人がステージに立っててもわからないよ。

◆ 続いてやはりTOTPで“She Makes My Nose Bleed”。
★ TOTPってバンド・ネームのわきに必ず‘from Chester’って出身地が入るのね。
▲ 出身地は大切だもん。最近じゃChesterって地名を見るだけでドキドキする。
● まるで全国地域対抗歌合戦でもやってるみたい。
◆ みたいじゃなくて、実際やってるじゃん。道理でイギリス人がバンドの出身地を重視するわけだ。
▲ 重視するから出身地を付けてるんじゃないの?
● もちろんManchesterが連戦連勝だけど、最近Oxfordがけっこう強いな。
★ でも混合バンドはどうするの?
◆ それでも活動拠点はあるじゃない。

● ルックス的にはここから現在の髪型になる。やっぱりこれがいちばんかわいい。
★ 長いのもかわいかったよ。
◆ こうやって続けてみると、確かにさっきの面影もかすかにあるな。
▲ 面影ってほんの1、2か月前じゃないか! なんでそうコロコロ変わる?
● しかし、生でもそうだったけど、苦しそうな顔して歌うねえ。
★ ほんとに苦しいのと違う?
▲ だって口パクなのに!
◆ こういうのって、そのシンガーの持ってる癖だからね。
★ 無表情って点でMary Chainと似てると思ったけど、やっぱり違うわ。確かに写真やインタビューじゃ無表情だけど、この人はステージじゃけっこう表情豊かだから。ただし終始苦しそうな顔だけど。
● 衣装はジーンズ素材のジャケットにトレードマークの安全ピン。だんだん格好も普通になってきて、まるで普通の子みたいに見える。

◆ ここで短いインタビュー番組が入ります。Amsterdamと言ってるから、オランダへ行ったときのものだな。わざとらしくチューリップも映るしね。
▲ わくわく‥‥こういう普段の素顔こそ日本じゃ絶対見られないもので‥‥
● ぎゃっ! これは例のヒゲPaulだ!
★ 髪を黒く染めて、オールバックにして、目バリ入れてたころですね。
● “She Makes My Nose Bleed”のビデオと同じ。どうして◆がこれを見て、Paulをすてきだと思ったのかさっぱりわからないな。どう考えてもこれが最悪の時期なのに。
★ でも、おかげで私たちはMansunに出会えたんだから。
◆ 私が見て感動したのはMMの表紙だってば。
● でもこの時期でしょ。
◆ あそこじゃヒゲはなかったんだよ。
● たいして変わらんじゃないか。
★ ◆が見て感動したのはスーツでしょ。とにかく童顔の女顔にヒゲは無理だ。
◆ とにかくここまでの4本、知らない人に続けて見せても、絶対同一人物とは信じないね。
★ 私だって信じられないもん(笑)。

▲ ‥‥ところで、今しゃべってる、これは誰ですか?
◆ 誰ですかって、ああた、Paulに決まってるじゃない。
● えーっ! こんな声だったの?!
◆ これには私も驚いた。この人はものすごく高いキーで歌うじゃない。だから地声も高いんだろうと思ってたけど、しゃべるのを聞いたら、深みのある低いバリトンだったのだ。
▲ うそー! Richeyの肉声を初めて聞いたときも見た感じとの落差に驚いたけど、この人はそれ以上!
★ だいたいRicheyの声聞いたのはあれが初めてでしょ。この人はシンガーなんだよ。生でも歌聴いたのに、こんな声だなんて想像つかなかった。
◆ なーんて、なんてしびれるような美声なの! 声までこんなにすてきだなんて。
★ でも、TFFのRolandに似ていると感じたのは間違ってなかったね。話し声もRolandそっくり。
▲ でも同じ人が“Stripper Vicar”や“Wide Open Space”を歌ってるなんて信じられない。これ、ほんとにPaulなの? やっぱり別人じゃないの?
◆ (苦笑)本物です。
● だって、私が見た人とは顔も違うし声も違うじゃないさー!
◆ 七色の声に加えて、驚異の声域! 天才じゃないかしら。
★ してみると、普段はかなり声作って歌ってるんだね。あんな苦しそうな顔なのは、やっぱりほんとに苦しいのかも。
● だからあんなに顔をくしゃくしゃにして歌うと。
◆ だったらなんで最初から低いキーで歌わないんだよ?
▲ それがロックだから。
★ でもこれだけ無理してると、喉痛めるんじゃないかと心配。
◆ くれぐれも健康には気を使ってほしいですね。アクセントもきれいねー。
● やっぱり教養ある人のしゃべり方をするね。これはイメージ通りだけど。
▲ かすかに訛りがあるけど、これがChester訛りなんだろうか?
● この人はLiverpool生まれのウェールズ育ちだから、いろいろまざってるのでは?

★ しかしインタビューじゃ、しゃべるのはPaulばっかりね。
◆ 当然でしょ? 彼のバンドなんだから。
● だったらなんでステージじゃ一言も口きかないんだよ?
▲ あのMMの座談会もあるし、とにかく暗い人だという印象があったから、これだけペラペラしゃべるのも驚きだ。
◆ それはインタビュー記事読めばわかったじゃないか。
★ ただし、仮面のような無表情で(笑)。
▲ これは徹底してるね。とにかく顔の筋肉が微動だにしない(笑)。
● やっぱりこういう人って初めてだわ。暗い人とか、シャイな人とか、神経質な人とかはたくさん見てきたけど、ここまで無表情っていうのは。
★ まるで顔面麻痺かロボットみたい。
▲ おまけにうつろな目。大丈夫なんか、ほんとに?
◆ 大丈夫です。
★ あなたに保証されても‥‥
◆ Suedeのコンサート・リビューのあとがき読まなかったのか? 無表情は貴族のしるし。天才のしるしなんだ!
● ほんとかねえ?

★ かんじんのインタビューの内容は?
◆ それはやっぱりポップ番組だから、質問もくだらない質問ばっかりで。「Spice Girlsで誰がいちばん好きですか?」とか。
▲ 「“She Makes My Nose Bleed”の歌詞は何を意味してるんですか?」という質問に「言えない。ファミリー・テレビジョンじゃ何があっても絶対に言えない」とか答える(笑)。
● やっぱりそういう歌だったのか!(笑)
▲ それだって、普通は冗談めかして言うものじゃない。実際、冗談のつもりだろうけど、この人はそれを眉ひとつ動かさずに、真顔で言うからおかしい。
◆ やっぱり根はMary Chain並みのコメディアンなのかもね。デッドパン・ユーモアは基本よ。
● 好きなバンドはと訊かれて、「Bee Gees、Carpenters、Abba、Blondie」というんだけど、それも無表情なままで(笑)。
▲ あの顔で、あの表情で言うセリフじゃないぜ!(笑)
★ それもそのセリフと仏頂面のPaulのアップに続けて、そのバンドのクリップ(どれもこれも思い切りバカっぽい)を流すところがシャレがきつい(笑)。
◆ あれはシャレで言ってるんじゃないと思うけどな。
● やっぱり変だ。この人は絶対普通じゃない。

★ ところでその他3人の名前がまったく出ませんね。
◆ だって、ここは完全なワンマンバンドじゃない。
▲ そうは思わない。Mike Edwards(Jesus Jonesの独裁者)がワンマンだっていうような意味のワンマンバンドじゃない。
◆ どっちみち、テレビじゃPaulしか映らないし、私はPaulにしか興味ないし。
● ああ、でもChadは素顔を見ているうちにかわいいなと思うようになったよ。あのアゴとブロンド縦ロールはやっぱり勘弁してほしいけど。
★ この人は表情がかわいいのよね。無表情なPaulと対照的に、Chadは小さい子供みたいで、いつもニコニコしていて、まんまるに見開いた目をクリクリさせて、びっくりしたような顔してるのがかわいい。
▲ これまた、それだけ見たらバカかもしれないと思うところだけど、実は賢いし、すごくもの考えてるから不思議だよなー。ギターもうまいし。
★ 人間って一面的じゃないよね。
◆ ところで話しながら、PaulがときどきChadとちらっと目を合わせるでしょ。あの見交わす目と目が以心伝心って感じで、他人には立ち入れないものを感じたね。
● またあんたはそればっか。
◆ しかし、見れば見るほど不釣り合いなカップルだ。

◆ さて、ライブに戻って次はTFI版“Wide Open Space”。テレビ出演時のものだからシングル曲だけで、どうしても同じ曲ばかりになってしまうんだけど。
▲ それにしたってこれだけ集めるのは大変だよ。これってデビュー以来のMansunのすべてのテレビ出演じゃない?
◆ で、とにかくこのPaulをエアーズで一目見て、これは買って帰らなきゃ一生後悔することになると思ったのだ。とにかく死ぬほどハンサムに映ってて。
● 要するにあれでしょ。黒いスーツを着て、ワイシャツにネクタイを締めている。どっちかというと、ハンサムよりスーツが好きなんでしょ?
◆ でもハンサムじゃない。うっとりー!
● こういう童顔の人がスーツにタイしめると、スクールボーイみたいでかわいいのは事実だけど。
★ でも、これは今の髪型になってからで、私たちが見たのと同じだよねー。
▲ やっぱりこういう格好するとDamon Albarnに似ているなー。
◆ (鼻息荒く)Damonなんか問題にならない、似ても似つかないというのが、これだけ言ってもまだわからんのか!

● しかし、いかにもだと思うのは、曲が終わったあとのPaulの表情。さっきも言ったように、歌ってるときはまだ表情があるんだけど、終わったとたん、能面のような無表情に戻る。
◆ 普通は1曲終わると、ほっとして表情ゆるむもんなんだけどねえ。普通と逆ね。
★ しかもちゃんとオーディエンスの歓声に手を上げて応えたり、ぴょこんとおじぎしたりはするんだよ。しかしそれも機械じかけの人形のようなギクシャクした動きで、その間、表情は固く凍り付いたまま。冷たい目で憮然としたように観客を見ている。
▲ 私たちが見たときのまんまだねえ。するとこれはやっぱりいつものことなんだ。もしかして日本じゃ機嫌でも悪かったのかと思ったけど。
● とにかく普通の人じゃないよなー。それにこの人かなり傲慢な感じだよね。頭は下げても、「ふん」といった顔で観客を見下している。
◆ 当然でしょ、傲慢でも。なにしろこれだけの大天才なんだから。
★ でも惜しいなあ。これは生で見ているときも感じたけど、せっかくこれだけの愛くるしい美少年なんだから、ほんのわずかでもにこっとするか、それが無理ならせめて表情ゆるめるだけでも、どんなにかかわいいだろうに。

◆ 続いて最新シングルの“Taxloss”、ということはこの中じゃ最新のビデオだと思って間違いない。
▲ (興奮して)これだ、これだ! これが私の見たMansunだ! 着ているものも同じだし、あの時のまんま!
●★ かわいー!!
★ これは音も本生ライブだしね。アレンジもライブ用のアレンジで、演奏も超かっこいい!
◆ やっぱりレコードもいいけど、ライブもいいなあ。すべてにおいて最高だわ。
★ Suedeは?
◆ (うろたえて)そりゃもちろんライブのうまさじゃSuedeには及ばないけど。やっぱりPaulはかなりフラットするし、発声も苦しげだし‥‥でもいいんだ、これだけ若くてかわいければ!
● たしかにこれがいちばんかわいく見えるね。なぜかと思ったら、最近じゃめずらしく、マスカラつけてるんですね。この人はせっかくフランス人形のようなぱっちり目をしているのに、金髪でまつげも色が薄いから、スッピンだと寝ぼけたような目になってしまうのだ。絶対マスカラはした方がいいよ。

◆ 最後にもう1曲、TOTP版“Taxloss”。
● なんでTOTPだと、こういうふうに色が青く抜けちゃうんだろう?
★ 前の方が絶対かわいい。あれがほんとのMansunよ。
▲ だいたいこれは音も口パクだし。
★ あー、終わっちゃった。また巻き戻して見よう。
◆ その前にいちおうまとめやってくれない?

★ それで結論は?
▲ 確かにルックスもいいけど、ルックス以前に惚れた!
◆ そうよ。これだけいい音楽作るんだから、顔なんかぶちゃむくれの、脂ぎった髪した、三重あごのニキビだらけのガキだったとしても、あんたら、文句言えない立場なのよ。
★ そこまですごい人はそうはいないっていうか(笑)。
◆ でなきゃ、ただのみすぼらしい貧相なおやじだった可能性だってあるのよ。なのに、ひとりでこれだけの曲と詞書いてプロデュースして、歌って演奏してる男の子が、こんな天使のように愛らしい美少年だったなんて! あんたら、そのありがたみがわかってるの?
● なにもあんたに感謝するいわれはない。
▲ (外野はまったく無視して)‥‥というのも、ルックス的には決して私たちのタイプじゃないから。やっぱりブロンドだし‥‥
◆ それはもういいことにしたの! (替え歌を歌う) The colour of hair is unimportant as I said before...
★ 字余り。
● 嘘つき。
▲ ‥‥やっぱりここはルックス以前に音楽だな。(しみじみと)最近つくづく思うんだけどさ、Mansunってもしかして、私が-CENSORED-年間の生涯で出会った最高のバンドかもしれない。
◆ (驚いて)それってどういうこと? つまりSuedeより、Clashより、Manicsより好きってこと?
▲ うん。
● それだけじゃないよ。それを言ったら、New Orderより、Doorsよりいいってことになっちゃう。
★ そこまで言い切るのは無理だと思うな。しょせん、まだファースト・アルバム出したばかりの新人じゃない。
◆ だいたいがDoorsというのが、越えるのがほとんど不可能な関門だからな。「Doorsを超えた」というフレーズも何度か使ったけど、それはただのレトリックで。
★ そりゃ、死んだ人には勝てないよ。
▲ でも、どこを取ってもぜんぶ好き、気が狂いそうなくらい好き、なんでかわからないけど無性に好きっていう、こんなバンド、これまでなかったような気がする。
◆ Clashは? Manicsは? そうじゃなかったの?
▲ それは下心も入ってたし、何かしら保留事項がついてたような気がする。
● Mansunに下心ないとは言わせないね。“She Makes My Nose Bleed”や“Drastic Sturgeon”聴いてヨダレ流してたのは誰だよ?
★ これはあれだな。つまり、Richeyを失った▲は前ほどManicsにのめり込めない、だけどその穴はあまりにも大きいというわけで、新たな崇拝の対象を求めてるのよ。
▲ それはあるかもしれない。だけど、それだけじゃない何かがこのバンドにはある。たとえRicheyが健在だったとしても、Mansunの魅力に太刀打ちできたかどうか。
● そこまで言う? 生きるの死ぬのと大騒ぎしておいて。
▲ あんたらだって同じくらいMansunにいかれてるじゃないか。
★ でもそれはMary Chainだって、Take That(笑)だってそうだったよ。
▲ それとこれとはモノが違う。
◆ だから私も最初のリビューでそう書いたじゃないか。というわけで、なんか知らんがえらいことになってるMansun。いったいこの先どうなりますやら。ってところで今日は終わり。