Mansun日記 第28章 (1998年10月)

MANSUNつるべ打ち(8)

1. Rockin' On(December 1998)−眼球譚その2

◆ あと、こないだの来日記事の載ってるロッキンオン、まだ見てなかったでしょ。
★ あのさ、今気がついたんだけど、この雑誌のタイトルって英字はrockin'onだけど、だから私たちもこれまで「ロッキンオン」と呼び慣わしてきたんだけど、よくよく見ると、日本語表記は「ロッキング・オン」になってる。発行元も「株式会社ロッキング・オン」だし。
▲ えー! なにそれ? たしか昔はロッキンオンって言ってなかった? いつの間に変わったんだ?
● 変わったも何も、単に注意してないので気づかなかっただけかも。
▲ だってもう何10年買ってるんだよー?
★ とんだミスでしたねえ。固有名詞表記には私はずいぶん気を使ってるんだが。
● ずっとMansonだと思ってたらMansunだった、みたいなもんか?
★ 弱ったなあ。これまでの全部書き換えなきゃならない。
◆ 冗談じゃない! 英語と日本語が違ってるほうが悪いんだ! 英字のほうがはるかにでかく書いてあるんだから、これでいいの!
★ しょうがないから、今後は英字表記に統一して、これまでのところは勘弁してもらおう。
◆ とんだミソがついたが、とにかくこれ。
● あ、つまんねー写真
★ ほんと。いかにもただのインタビューのスナップで。これまで日本で撮った写真というと、やたら気取ったお耽美なのばっかりだったから。
▲ しかもたったの3ページ! クロスビート(8ページ)とは差をつけてくれるじゃないか。
● MLがまだあればねえ。当然のようにお耽美ピンナップがついたのに。
◆ ええい、文句あるか! Paulの写真が見られるだけでもありがたいと思え。

● だってなんかかわいくないしー、くたびれてオヤジくさく見えるんだもの。
◆ こういう目をした人にオヤジくさいという言い方はないでしょ! こんな目をしたオヤジがあるか!
★ ほんと。いつ見ても驚くが、目が異常にでかいね。眼球の大きさなんてそう個人差ないと思うので、これは顔が異常に小さいのか?
▲ 顔も異常に小さいうえ、目も異常にでかいんだと思うな。
◆ それだけじゃないよ。目そのものも大きいが、目の玉がまた異様に大きい。白目がほとんどない状態で、三白眼の反対なんだが、こういうのって何て言ったらいいんだ?
★ 黒目がち‥‥とは言えないか。青いから。
● バンビの目。
◆ それだ、それ! これはJohnny Marr(オヤジになる前)とかのあの目だ! なんで今まで気づかなかったんだろう? 
▲ それはね、その形容がつく人はたいてい茶色の目で、青い目だと大きくてもあまり目立たないからだよ。
● でも、こうやって見ると、Johnnyもそんなに黒目がちってほどでもないねえ。Paulのほうがよっぽど目玉でかい。
◆ 淡い色の目の人は普通は目が小さく見えるものなのに、いかにPaulが目が大きいかという証明じゃない。Johnny Marrなんか問題じゃなくかわいいわね。
★ でも私たち、三白眼を愛してたんじゃないの? 「顔じゅう目ばっかり」という男の子は嫌ってたはずなのに。
▲ あのー、誰かお忘れじゃありませんか?
● は?
▲ 「バンビの目」といえばあの人でしょ!
◆ そんな人、私のアイドルでほかにいたっけ?
▲ 大きなうるんだ黒目がちの「バンビの目」といえばRicheyでしょ!
● ああ、そういやすっかり忘れてた。
▲ 冷たいやつら!! どうせあんたらにとってはもう‥‥
◆ ああ、愁嘆場はあとにして。そういやそうだ。Richeyがまさにそれだった。彼も目は茶色かったけど。
★ 「ゾンビの目」という噂もあったが‥‥
● しりあがり寿に「子鹿のゾンビ」というマンガがあるのだが(笑)。しっぽにチョウチョじゃなくてハエがとまってる(笑)。
▲ 誰がゾンビだ!!
◆ しかし、どっちかといえばPaulのほうがはるかにゾンビらしいという矛盾(笑)。完全にうつろだし、目は死んでるし。
▲ ほっとけ!
● とにかく、これでこの人がなんで女の子みたいに、下手すると赤ちゃんみたいに見えるかという理由がわかりましたね。
◆ 確かに赤ん坊のうちはどんな動物でも、目の比重が大きく黒目がちだからね。
★ それだけじゃないよ。おまけにまつげはこの三者の中でいちばん長いし、その目に加えて、あごがない丸顔。これは大人の男の顔じゃないよ。
▲ そういやRicheyは確かに目は愛らしいけど、あごはがっちりしてたし、男らしい輪郭の顔立ちだった。

● それはそうと、なんか肌荒れしてませんか?
★ それは写真がザラザラした感じだからじゃない?
◆ いや、Glastonburyで見たときもそう思ったし、例の「フランス人形写真」の印象が強すぎるせいか、お肌もセルロイドみたいにツルツルだとばかり思っていたが‥‥
▲ うん、同じ号のJames(Dean Bradfield)なんか、毛穴まで見えるほどの接写だけど、肌は彼のほうがツヤツヤしててよっぽどきれい。
● もしかして顔はまるっきり老けないが、年がそういうところに表れてきてるんじゃないか? 26才はお肌の曲がり角!
▲ まさかー。1年やそこらでそんな変わるか?
★ そういやJim(Reid)も「なんとなく、くたびれて薄汚い感じになってきた」と思ったのが、老け始めだった‥‥
◆ Paulは薄汚くなんかないー! くたびれてるのは元々だし。
★ 生で見たときはどうだった?
▲ 肌の肌理までは見えないよ。でも色の白さでカバーしてるが(このピンク色の肌がまた赤ちゃんぽい)、どうも肌はあまりきれいじゃないな。
◆ ていうか、この顔でひげ剃り後なんかが目立つから、違和感きついだけよ。
★ そういや、けっこう毛深いんじゃないかという説もあった。
◆ 毛深くもない!
● 大丈夫よ。隣にいるのがChadだから(笑)。とにかくこの胸毛、じゃなかった喉毛見て! 長くてクルクルカールしてて、三つ編みにできそうじゃない。
★ そこまでは長くないが、十分ブラシをかけられる長さ!
● いや、マジでとかしておかないと、もつれて痛そうだ。喉でこれなんだから、下の方はどうなっているのか‥‥
◆ Chadをバカにするな!
▲ そうよ。胸毛があったって人間だ!
★ いや、ここまですごいと、ほんとに先祖帰りとしか‥‥遺伝子分析してみたい。
● 胸毛のチャンピオンといえば、Paul Rodgers 《元Free。といっても誰も知らんだろうな》 という人がいたが、あれよりすごそう。いつもマフラーしてるのかと思ってしまう。
★ でもPaul Rodgersは剛毛なんでむさ苦しいだけだったけど、Chadは胸毛もリンスしたみたいにツヤツヤでやわらかそうで、きれいじゃない。
◆ なんの話だか‥‥
★ でもこれでこの人も顔は童顔だからなあ。
● そこがかわいい。クマのぬいぐるみみたい。
▲ 一度脱がしてどうなってるのか見てみたいという気はするな。
◆ でも本当に毛深い男ってのは、手の甲までワサワサ毛が生えてるが、Chadはそんなことないし。
● 気持ちわるいことを言うなー!
◆ おまえが始めたんだろ!

2. Mansun as Cartoons

● じゃ、ついでにもひとつかわいいもの見ちゃお。これ、インターネットで拾ったんだけど、Mansunを“Sesami Street”のマペットに見立てたイラスト。
★ あ、かわいい!
◆ なるほど、それで“Six”のお勉強ってわけね。ちゃんと合ってるじゃない。
▲ これ、NMEのアルバム・リビューのイラストじゃないか?
● 違います。これはMM。NMEのイラストレーターはもっとエグくてかわいくないし、イラストがつくのはアルバム・オブ・ザ・ウィークだから、NMEに載るはずがない。
★ この週は買わなかったの?
◆ フィーチャーにならなかったのでむかついて買ってない。
● でもManicsのは買った。これもかわいいんだよ。画像がないのが残念だが、Jamesがお父さん、Nickyがお母さん、Seanが赤ちゃんで家族の肖像。
▲ まんまだがな。
● おまけにRicheyは壁の絵になってるんだけど、それがすごくかわいく描けてるの。
★ でもこの絵、ちゃんと特徴をとらえてるよね。Paulは例のシャツ着てるし、Andieは眉毛ピアスしてるし、Stoveはちゃんと眉毛がつながってるし(ほんとはつながってはいないが、かなり濃いのは事実)。似てないのはChadだけで。
▲ Chadこそ似顔絵は楽なのにな、ほっぺたと胸毛だけでわかる。
◆ でも他はちゃんとマペット顔になってるのに、Paulだけなんかリアルじゃないか?
● そこがまたたまらんのですわ。髪型はそっくりだし、目は半眼だし、目の色まで本物そっくり! それじゃ、もう一発かわいいの。《この絵“Chester Park”は、Grey Lantern Onlineにあります》
▲ これは似てないよー!
● これはイギリスで人気のある“South Park”というマンガのパロディなんだよ。キャラクター全員この顔なの。服装が違うだけで。
★ でも、Paulが昔よく着てたあのモコモコのフリースを着てるから、ちゃんとPaulだとわかる。
◆ これってアニメ?
● だかなんだか、さっぱりわからないんだけど、かわいい絵のわりにはけっこうブラックな話みたいな気がする。だからこの落ちでも違和感ないわけ。題して“Chester Park”。
▲ そうか。「今どき少女マンガでも、これだけベタな美少年は描けない」と言ってたけど、ギャグにするという手があったか。
● かわいー!

3. またまたチケット騒動

★ ところでさあ、Mansunのチケット発売ってまだなの?
◆ まだ新聞に載らないんだよ。
★ でも1月17日なのに、まだ予約開始しないなんてずいぶん遅くない?
▲ たしかに2月のManicsの広告はバンバン載ってるもんな。こっちはもう先行予約入れちゃったけど。
★ 念のため、チケぴあのサイトを確認してみたほうがいいんじゃない? Mary Chainのこともあるし。
◆ まさか私が見逃すなんてことは‥‥(と言いながら、チケぴあサイトに接続する)Mansun、Mansunと‥‥ゲゲーッ! 「発売中」って書いてある! そんなバカな! いつの間に?!
▲ まただ! また当日まで、イライラしながらぴあスポットに通い詰めなきゃならない!
● 念のため、明日ヴァージンに行ってみたら?
◆ もう残ってるわけない! ああー!
▲ いつ売り出したんだろう?
★ ふつう予約開始は土曜日からで、明日が土曜日だから、早くても先週‥‥
◆ ああー!(頭をかかえる)
● どうも新聞広告見逃したみたいね。忙しかったから。
◆ --CENSORED--を呪ってやるー!
▲ 嘆いてたってしょうがない。前回のことがあるから、たとえ売り切れててもまだ買えるのはわかってるし。それより明日いちばんにぴあスポット行くんだよ。
◆ だって土曜は--CENSORED--で、夜まで買いに行く暇なんてない!
★ もうここまで出遅れたら多少の遅れは関係ないっていうか。逆にまた新しく入ってるかもしれない。
◆ ああー!

(翌日)
◆ あ、あった!
▲ ほんとに? それって売れ残ってたってこと? また人入らないんだろうか?
★ だからあとから流した分かもよ。
● とにかく超ラッキー! わーいわい!
★ 整理番号何番?
◆ Aの663番、ってことは前回よりは多少ましだな。
▲ 関係ないよ。ブリッツはハコでかいし、とにかくこちとらやる気が違うし。
● 1枚しか買わなかったの?
◆ 4枚買ってどうするんだよ?!
● そうじゃなくて、1日しか行かないのかってこと。
◆ だって東京はこの1日きりなんだもん。あとは大阪と名古屋で。
● そっちは行かないの?
◆ 無理いうなよー! --CENSORED--やなんかでむちゃくちゃ忙しい時期なんだから。
▲ 金と暇さえあれば、世界中追っかけもやるのになあ。
● とにかく夢みたい。来年早々、MansunとManicsが見られるなんて。
▲ あー、Manicsはまあ‥‥
◆ まだ言ってる。

《以下は『Mansun以外ニュース』と題した章に出てきた話ですが、やっぱりMansunに触れずにはいられなかったのと、なかなか興味深い内容なので一部収録。George Michaelの「公衆便所逮捕事件」(GeorgeがL.A.の公衆便所で男をハントしようとして、おとり警官に捕まった事件。彼としてはきわめて不本意な形でカムアウトするはめになってしまった)が話の発端。》

4. セクシャリティから見た80s VS 90s

◆ そこで私は重要な発見をしてしまった。
▲ またかよ。
◆ 80年代と90年代ポップのどこが違うかと言って、それはセクシャリティの問題なのだ。80年代英国ポップ・シーンを彩った代表的グループ(Culture Club、Wham!、FGTH、Smiths、Pet Shop Boys‥‥なんなら、やや小粒だが、ここにDead Or AliveとBronski Beatを入れてもいい)はいずれも筋金入りのゲイであったにも関わらず‥‥
● メンバー全員がってわけじゃないでしょ。リード・シンガーがでしょ。
◆ ‥‥にも関わらず、90年代に入ったとたん、このゲイ・パワーが一気になりをひそめてしまうのだ。
▲ でもお‥‥
◆ もちろん90年代にも我らがMansunはもちろんのこと、性的アンビギュイティを売り物にしたバンドは数あった。だけどその人たちはどう?

Suede‥‥あくまで体はストレート。
Manics‥‥Richeyについてはもう知りようがないが、ほぼ間違いなくストレート。他の3人は完全なストレート。
Take That‥‥真相は不明だが、全員ストレートだと公言。
Gene‥‥あれだけバイだと言い張ったにも関わらず、Martin Rossiterは結婚して子供まで作ってる。
Mansun‥‥これも未確認だが、たぶんストレート。
Placebo‥‥Biran Molkoはバイセクシャルだと言い張っているが、証拠は何もなし。
Gay Dad‥‥これも本人はゲイだと言うが‥‥

● メンバー全員でなくてもいいなら、SuedeのSimonは間違いなくゲイなんだし‥‥
◆ だから90年代の代表的バンドで、ゲイだという確証のあるバンド、ゲイ・ソングを歌うバンドがいるか? ゼロだよ、ゼロ! カムアウトしている人もSuedeのSimonと、なぜかこれもSuede関係だが、David McAlmontの2人しかいない。
▲ 言われてみるとそうだねえ? 人口の割合からいって、ゲイ・ミュージシャンが極端に少ない。
● ゲイでないとなんでいけない?
◆ バランスの問題だよ。チャートを占めるのがすべて女だったらいやだろ? すべてボーイグループや、ガールグループだったらいやだろ?(最近そうなってるが) それと同じで、セクシャリティもゲイ、ストレート取り混ぜていなくちゃ変なのに、90年代はやけに偏ってる。最近のチャートがつまんないのはそのせいかもしれない。
▲ そこまで言う? 実際、ゲイ・グループがチャートをにぎわせていたころの方が、活気があったし楽しかったのは事実だけど。
● いてもカムアウトできない‥‥って状況じゃないしね。変だね、ほんと。
◆ そこで思い出してもらいたいんだが、皆さん、覚えているかな? 現在の有力バンドで、George Michael大好きと公言しているバンドがひとつだけあるんだが。ファースト・アルバムにGeorgeにゲスト参加してもらおうとまでしたバンドが。
● またー!
▲ そうやって何もかも強引にMansunに結びつけようとする!
◆ 強引じゃないでしょ。過去10年、まともなロック・バンドのインタビューで、Georgeの名前を口にした人なんてMansun以外皆無だった。私がまたGeorgeを気にし始めたのも、Paulのあの発言があったからで。
▲ だからってPaulもゲイだと思い込むのは考えすぎだよ。
◆ 彼がゲイだなんて言ってない! そうじゃなくて、スピリットの問題だよ。George自身言うように、彼の曲にはゲイ・テイストが満ちあふれているそうだし、それを好きっていうことは、そういうものに理解があるってことじゃないか。よって、やや停滞気味の英国音楽シーンを救うのは、Mansun以外ないのであった。
● 『Mansun以外』っていうので始めたのに、強引にMansunで落とすのはさすが。というわけできれいに落ちたようなので、今日はここまで。