Mansun日記第17章 (1998年8月)

Mansunつるべ打ち(2)

“Being A Girl”シングル・リビュー

Mansunスリーブについて

◆ 今日は8月26日、待ちに待ったMansunのセカンド・アルバム“Six”の日本盤発売日だ!
▲ 英国では9月7日なんだよね。
★ よって、さっそく行って買ってきました。1日違いだけど自分への誕生日プレゼントね。
● そしたらヴァージンに、このアルバムからのセカンド・シングル“Being A Girl”が入っていたので、それも買ってきました。
◆ というところで、シングル・リビューと行ってみよう。アルバムはちゃんと章を立ててじっくりやるから。それに順番から言ってもこっちが先だから。
▲ しかし、このスリーブ‥‥
★ だっせー!
◆ それが第一声なの!?
● かわいいじゃん!
★ Mansunのスリーブには毎回文句を言っているが、これはないでしょう、これは。
● どういうのかというと、これは写真なのかイラストなのか‥‥
▲ 写真を取り込んでレタッチしたものだと思う。
★ モノクロの線画風のメンバーの顔に、いろんな色がぬたくってあるの。
● 昔のポップス・レコードみたい。
◆ 「Andy Warholにまねびて」と書いてあるな。アーティストはPete Nevin。
▲ 確かにWarholかもしれないけど、Warhol自体、ちっともいいと思わないし。
★ 見るからに粗悪な模写って感じで。
● Paulはちゃんとフランス人形のように描かれていてかわいいからいいの。
★ でもAndieは顔がゆがんでてかわいそう。
▲ Stoveはフランケンシュタインみたいだし、Paulだけ恥ずかしいほど美少年に描かれてる。
● だってそれが事実なんですもん! 写真なんだから! ちなみにこれが元写真だ。
▲ でも、目と口のところに色を付けるのって、ミンストレル・ショーの黒人かピエロみたいで変だよ。
★ これなら写真そのままのほうがいいね。
◆ 2枚のCDの表裏がそれぞれのメンバーの顔になっているんだけど、CD1は表がChad、裏がStove、CD2は表がPaulで裏がAndieってのはなんでかね? 当然Paulが1枚目かと思ったら。
● 2枚目だからいいの、というのは嘘で、あまりにPaulばっかり出過ぎは民主的じゃないからでしょう。
▲ CD1とCD2でフォーマットを変えるのもわざとやってるとしか。今度も1枚目はプラケースで2枚目が紙だ。
★ せめて背文字ぐらいは統一できないの? 片っぽはおなじみのMansunロゴで、片っぽは普通の活字だったりして。
◆ 文句あるっての? 中味は最高なことはわかってるんだから、入れ物なんて。
▲ Mansunは他のすべてが完璧なだけに、スリーブがどうしていつもこうしょぼいのか、よけい気になるんだよ。
★ これならまだPennie Smithの撮ったメンバー写真をそのままスリーブにした方がましだよー。
▲ でなかったら、もういっそ黒字に数字だけにするとか。(MansunのシングルはしばしばNINE EPというふうに番号で呼ばれ、これにもそう書いてある)
★ しかし、PaulとStoveってアート・スクール出身で、デザイン・スタジオで働いてたんでしょう? そっちの才能はなかったか。やめて正解だね。
◆ 黙れ黙れ! Mansun様のやることに文句を言うか!
● かわいいからいいのよ。
◆ おまえもそればっか言うな!
● ◆も変なの。人がほめると文句言うし、けなすと怒るし。
▲ 自分のものだと思ってるから妬いてるだけよ。
◆ そういや、Manicsの今度のアルバム・スリーブもひどいと思わない? Mansunはメンバー写真以外使っちゃいけないけど、あの人たちはメンバー写真だけは使っちゃいけないのに。おまけにこうこうと明るい野外で!
▲ 黙れ! Manicsこそ入れ物なんかなんだって!
◆ というふうに自分が言われるとむかつくでしょう?
★ 実際あれも許しがたいな。というのも、Manicsといえば、Suedeと並んでスリーブのかっこよさが売りだったのに。そっちの才能もRicheyとともに失われたか。
▲ だって、ManicsやMansunはスリーブ・デザインには関係してないでしょう。Suedeと違って。
◆ でも当然バンドに相談はするし、最終的にOK出すのもメンバーでしょう。その点、さすがBrettは、美しいものに対する感性は人一倍っていうか。
● あんたも怒るのか自慢するのかはっきりしなさい!
★ それにアルバム・スリーブときたら‥‥
◆ その話はあと!

Mansun / Being A Girl (CD1) (Parlophone, 1998)

◆ あー、つまらんことでもめてしまった。やはりMansunは音で勝負よ。そこでシングル・リビューに入ります。まずはCD1。
▲ しかし立て続けにシングル出してるね。“Legacy”が出たばっかりだし、もうすぐアルバムも出るのに。
◆ それが彼らの本来の戦略ですもん。
★ 働き過ぎだよー。チャート戦略としてもあまり賢いとは思えないし。ある程度飢餓感をあおるのも戦略でしょ?
◆ 私の飢餓感は毎週出してくれてもおさまらない。
● あ、またポスターがついてる!
▲ 何かと思ったら、この4枚のポートレートを並べただけか。
◆ でも並べるとけっこうかっこいいじゃん。New Orderのポスターにこういうのなかったか?
★ Peter Savilleとなんかくらべたらバチが当たる。
◆ まずはタイトル曲だが‥‥
● ねえ、“Being A Girl (Part 1)”ってどういうこと?
▲ 当然CD2がPart 2、かと思ったら、こっちもPart 1だ。なんだ、こりゃ?
★ (Part 1)ってのもタイトルのうちなんじゃない?
▲ でもアルバムは単に“Being A Girl”だけだよ。
◆ よくわからんがとにかく聴こう。作曲はPaul、プロデュースはPaulとMark‘Spike’Stent。
(曲流れる)
★ ずいぶんシンプルな曲ですねえ‥‥
▲ 今度は生っぽい音にすると言っていたが、これは本当に大変身だ。前が凝りに凝ってただけに。
● でも“Legacy”はオーバープロデュースだなんて言ってたのに! これとあれが同居してるの? それじゃアルバムはどうなっちゃうの?
◆ その話はあとだ。
★ まるでデモ・テープみたい。
◆ ていうか、スタジオ入って一発録りした感じね。
★ 勢いだけで作ってるっていうか。まるで新人バンドがなけなしの金かき集めて自主録音したみたいっていうか。
▲ 新人がこれだけできたら驚きだよ。サビのコーラス部分なんかMansunらしいメロディアスなハーモニーが生きてるし。これはこれでClashみたいでかっこいいが、でもあまりにもこれまでのMansunと音が違うんでとまどう。
★ Clashというよか、3分ポップに対するおちょくりみたい。
◆ でも、Mansunには荒削りなロックンロールの部分もあったけど、ここまで単純なのはなかったよ。歌にしろ、ギターにしろ。
▲ 最後はブチッと切れて終わるのも変。徹底的に意図してラフに作ってあるのはわかるけど。
★ やっぱり‘Spike’に問題があるんじゃないか? これはアルバムにも暗雲が‥‥
◆ 言うな! Mansunが間違ったことするはずないんだ!
★ だいたい、これがシングルなの? マジで? これまでのキャリアをふいにする気?
◆ 「ふいにする」って言い方はないでしょう? こういうのって案外まちがってヒットするような気がするし。
▲ 「まちがって」という言い方もないんじゃない? 
★ そういや、今度のアルバムのマテリアルはすべてツアー中に作ったからライブっぽいとは言ってたが、これなんてサウンド・チェックの時に適当にジャムってたらできちゃったような曲だし。
▲ ファーストはあれだけ考え抜かれて緻密に構成されてたのに。
◆ アルバムがみんなこれだと決まったわけじゃないでしょ。
★ もしかしてツアーで疲れ果てちゃったんじゃないの?
◆ そんなはずは‥‥《とかなんとか言ってたがー‥‥この杞憂は“Six”を聴いて吹っ飛ぶ、というか、また別の悩みができる》

● 歌詞は?
▲ まんまだなあ。「女の子だったらいいのに。そしたらぼくの人生ももっとスイートなものになるのに」という。
◆ あいかわらずあやしいな。
● だいたい「男の子でいるのは、レモンをしゃぶるようなもの」なんですか?(笑)
◆ それも妙にホモっぽいよ! ひょっとしてすごくエッチな歌なんでは?
★ ていうか、Paul独特の「狂ったユーモア」が一面にちりばめられた詞。‘Tax on cigarettes treats my cancer / These things elevate me above animals’とか。
● わけわからーん!
▲ でもmanじゃなくてboyだし、womanじゃなくてgirlなんだね。
★ それは彼のキャラクターからいって、なんの違和感もありませんが。「少年」そのものだからね。
◆ でもソソるよなー、この歌詞はやっぱり。

◆ とにかく問題はB面だ。MansunのB面曲はひょっとしてA面よりいいんだから。これは例のHoward Devotoとの共作曲も入ってるし。
▲ とりあえず2曲目は“Hideout”。曲はDraper/Chad/King、プロデュースはPaul。
★ こりゃまたやけにハードでラフなギター‥‥
● でもプロデュースは狂ってる(笑)。
▲ 歌はお耽美だし。
◆ びっくり箱のような楽しさがあるね。これはMansunらしいじゃないか。
★ でも何がなんだかよくわかんなーい。
◆ だったら次だ。“Railings”。曲はHoward、プロデュースがPaulとHoward。
★ へー、Mansunが「他人の曲」レコーディングするなんて初めてじゃない。
▲ (感動して)HowardがMansunのために書き下ろしてくださったんですか!
● おー、お耽美だ! 大仰に泣いてるし、ドラマチックだし、歌は死ぬほど色っぽいし。
◆ どうだ? やっぱりMansunはMansunじゃないかー!
★ 人の曲なのに。でもアレンジはずいぶんシンプルだし異常。エンディングのChadのギター・ソロも異常だよー。
▲ いいなあ、やっぱりいいよなー。
● バッキング・ボーカル付けてるのはHowardだよね。
★ あの人は音痴だから歌はあまりいらないのだが。
▲ Howardは歌だってうまいし、美声です!
● そのぶん、Paulの天使の歌声が引き立つからいいわ。
◆ Paulはこれと“Everyone Must Win”がいちばん好きだって言ってたんだよね? ね? ということは、やっぱりこっちが本来のMansunの路線なんだよね?
▲ そういうことになりますな。
◆ あー、良かった。だったら基本は何も変わらんじゃない。
★ 確かにいい曲だけど、ちょっと疑念の黒雲が胸をよぎるんですが。
◆ 言わんでいい!
★ この手の早熟すぎる天才というのは、セカンド(かサード)で誰にも理解できないような、進みすぎた実験作つくって、大衆人気も批評家の支持も失い、見捨てられるというのもひとつのパターンなんだけど。どうも“Legacy”とこれと聴くと、その気配が‥‥“Legacy”のリビューでもEMFにたとえるようなこと言ってたけど。
◆ だからそういう縁起でもないことを言うなー!
▲ EMFほどはまだ狂っちゃいないよ。
★ “Cha Cha Cha”は超傑作です!
● でもこれと“Being A Girl”が共存してるってあたり、なんかあれに似てるね。
◆ 違うー! 絶対に違う!
● あ、そういや、Mansunサイトにはビデオもアップロードされているはず。あった、あった! さっそくダウンロードしよう。

Mansunビデオについて

★ なんじゃ、こりゃー! と言うのは“Legacy”と同じだが。
◆ 男子更衣室が舞台で、タオル1枚の男の子がうろうろして、変にホモっぽいぞ。
▲ というか、これはわざと男臭いイメージで、歌詞との対比をねらったものでしょう。
● またバンドが出てない!
◆ ま、とりあえず裸の男の子はわんさか出るし、けっこうきれいな子もいるし。
● 私はPaulが見たいの! Mansunサイトはせっかくこんなきれいな大きいビデオ・クリップがあるのに!
★ 悪いけど、この人たち、ビジュアルに関しては全滅っていうか。Mansunほどの大物で、これほどチープなビデオばっかりというのは‥‥
▲ “Taxloss”は金はかかってたじゃないか。
● あれもバンドが出ないー!
▲ 忙しいんだからしょうがないよ。ビデオ撮りにつきあってる暇なんてない。
● ツアーなんかいいから、ちゃんとしたビデオ作れっていうの!
▲ 「なんか」という言い方も。
● ビデオは大事なんだよー!
★ ビデオはほとんどすべて見てるよ。
● 断片だし、クイックタイム・ムービーは小さいし、バンドがほとんど出ないし、かんじんのPaulがかわいく映ってるのが少ない!
◆ だったら生で見た方がいいじゃない。本物が原寸サイズで1時間見られるんだから。
● くり返し見て、頭にたたき込むのが大切なの。ああー、photographic memoryがほしい!
▲ 本人を誘拐拉致するという手もある。(歌う) I kidnap star in my car...(Take It Easy Chicken)

● それにビデオに出てても演奏シーンだけでさ、何もこの人に演技しろとは言わないけど(絶対に無理!)、せめて立ってるだけでもいいから、「素顔」を見せてほしいよ。
▲ ところが生ならそれが見られるかというと‥‥
◆ あの仮面のような無表情だし、ロボットみたいに全身硬直してるし(笑)。
▲ 生で見るとよけい感じるけど、まるで目に見えない鎧兜で全身を覆っているみたいだね。
★ やっぱりこの人はReid兄弟の同類なんじゃないの? 単に極端にシャイなだけの。
● そのレベルじゃないよー。
◆ 謎だ。この男は謎だ。
▲ 私が気になるのはふざけたビデオばっかりだってことだな。そりゃPaulのユーモア・センスは高く評価しているけど、ビデオには歌にあるほどの毒がない。
★ なんかビデオそのものをなめてバカにしてるような感じですね。
◆ 確かに、1本でいいから彼らの音楽並みの荘厳な耽美性を感じさせるビデオがあってもいいよね。
▲ ていうか、芸術性の問題だよ。
★ あと、ビデオにしろ、写真にしろ、色っぽいところがみじんもない。
◆ そういや完全無欠のPaul Draperにひとつだけないものがあるとすれば、それは色気。
▲ 曲と歌は死ぬほど色っぽいじゃないさ!
◆ だからそれと本人との落差がひどすぎる。
● お化粧してたじゃない。
★ 今どき化粧ぐらいじゃ。どっちかというとこのところ、SuedeといいManicsといい、不必要な色気ばかりふりまくバンドを見過ぎたせいもあって、このストイックさにはイライラしてしまう。《とかなんとか言ってたがー‥‥これはこのあとのツアーで大逆転をとげる》
◆▲ 誰がなんだって?!
▲ だったら何すればいいんだ? Paulがスカートはくとかストリップするとか?
★ それもあのロボットかお人形みたいな顔でやられてもねえ。
◆ Paulに無理なら誰か代わりに愛嬌ふりまくやつがひとりくらいいてもいいのだが、ChadはPaul以上にシャイでおとなしいし、どうやら色男代表のつもりらしいStoveも、それにはあまりに淡泊で地味だし。
● いいよ! あれだけかわいければお人形でも!
◆ 今度の『変態性愛論講座』は「人形愛」でやるか?
★ だからね、ああいう人がそのガードをほんの少しでも解いて、弱みを見せたらどんなに色っぽいだろうかと思って。
▲ それそれ! 私が「風邪ひきPaul」に興奮したのもそれなんだ! ああ、私にビデオを撮らせてくれたなら‥‥
◆ それ以上言うな! 今はまじめなリビューなんだから。
▲ だったら夢でやるからいいよ。
● だからそれには原材料がいるんだってば!

Mansun / Being A Girl (CD2) (Parlophone, 1998)

▲ とにかくCD2のほうも聴いてみよう。
★ ああ、まだあったのか、とにかくMansunは濃いもんで、もうたっぷり聴いたような気がしちゃう。
● たった3曲なのに。これまでは4曲入ってたのに。
◆ 1曲でもありがたいと思え。
▲ タイトル曲は同じだよねえ。だったら次“I Care”。
◆ ドキドキ‥‥
★ あ、きれい! アクースティック・バラードじゃない。
◆ キーボードがNeilみたいだ。ていうか、全体がSuedeみたいだ。
● ギターもきれいー! もちろん歌も。
▲ と思ったら、サビはいきなりハードなロックンロールになる(笑)。やっぱり狂ってるよ。凝ってるけど。
● まったく予断を許さないところがすごいね。
◆ (悩む)これが大衆にわかってもらえるかなあ。
● 自分だって何がなんだかよくわからないくせに。
▲ とにかく、こういうのができるのはMansunしかいないよ。計り知れないっていうだけでもすごい。
◆ とにかく次、3曲目は“Been Here Before”。
▲ きれいなタイトルだな。
★ キチガイみたいなタイトルつけるのはやめちゃったんですね。その代わり曲がキチガイだけど。
▲ お、いきなりChadのノイジーなギターで始まって‥‥
◆ あー、でもきれいなギターだ。やっぱり好きだなあ、この人も。
● メロディもきれいね。泣いてるし。
◆ 繊細な美しさとのびのびとした力強さのある、いい曲じゃないか。あー‥‥(ほっとして肩の力が抜ける) やっぱりMansunはいいよ。心配なんか何もない。
★ でもギターは美しいんだけど、それに時々ヒステリックな響きがまじるところに、不安感をおぼえる。
◆ おぼえない。おぼえない!

Howard Devotoのこと

▲ しかし、話は前後するが、PaulとHoward Devotoの友情ってのも不思議だね。
● 似ても似つかないのに。美少年と野獣。
▲ そこまでひどくないよ!
● なら美少年と宇宙人
◆ 年も違うし、どこで知り合ったんだろ?
★ HowardがMansunのファンで、アプローチしてきたんじゃなかったっけ?
● いや、Paulは昔からHowardのファンだと言ってたぞ。
▲ インターネット・アーカイブスに資料ないか?
◆ 検索かけたけど、ないなあ。確かどこかで読んだんだけど。《この真相は後ほどThe Guardianのインタビューで明らかになる》
▲ でも奇遇。よりによって私のヒーロー2人が。
★ しかもHoward Devotoがヒーローだって人はかなり稀だよね。今じゃ知ってる人のほうが少ないでしょう。
◆ だいたいあの人が現役だってことも知らなかった。
▲ Mansunが引っぱり出したようなものだな。アルバム出ないかな? そうすれば当然Paulが全面協力するだろうし。
★ あ、それはちょっと聴きたい。
▲ あー、突然彼のレコードが聴きたくなっちゃった。
◆ Magazineはアナログしかないよ。
▲ LuxuriaのCDがあるだろうが。あれ? ない! Luxuria売っちゃったの?!
◆ そんなはずはないが。そのモニターの下の箱の中じゃない?
▲ あった! なんでいろんなところに入ってるんだよ?
◆ これだけのCDまとめて置く場所がないのが悩みなんだよ。

(“Beast Box”をかける)
★ あ! 似てる!
● えー、長いこと聴いてなかったんで忘れてた。
◆ 確かにMagazineは「労働者階級のPink Floyd」と形容されたこともあるように、プログレ的な大仰さがあったけど、それってまさにMansunにもあるし。
▲ それに独特のねじけたポップ性と、パンクっぽさと、あの歌詞。そおかあ! モロに影響受けてるんだな。
★ それに唱法も似てない? シンガーとしてもかなり影響受けてるとみた。
● まことトンビがタカを産んだというか。
▲ Howardのどこが悪い!
● この人もただ者じゃなかったことは認めるけど、それがなんかぎくしゃくしてぎごちなくて、居心地が悪い感じにさせるのがHowardの音楽じゃない。ところがそれがすべてあるべきところに収まったのがMansunというか。
▲ うんうん‥‥ああ、もっと聴きたい。たしかHowardってソロ・アルバムも出てたよね。
◆ 日本にあるとしたらレコファンだけだな。
▲ 今度行って探してこよう! インターネットでHoward情報も探そう。
◆ えーっと、これは念のために聞くんだけど、Howard Devotoってゲイじゃないよね。見るからにゲイっぽい顔してるけど?
▲ 知るか! ついでに言っとくけどPaulもゲイじゃないよ。
◆ いや、あまりに親密だからつい。
● ていうか、Paulのセックスなんてまるで想像できない。あんな人形みたいな男の子に。
▲ だいたい、そんなことしてる暇ないよ。
◆ なんかなー‥‥

▲ それじゃここらでアルバム・リビュー行くか。
◆ え、もう?!
▲ もうも何も、ここんとこMansunの話ばっかりじゃないか。
◆ 心の準備が‥‥それに、まだ英紙のアルバム・リビューやインタビューのたぐい入ってないしさ。それには向こうでアルバムが出てからでないと。
▲ そういう先入観なしで聴くの! なんのために先行発売盤買ったんだよ。
● そうだよ。聴こう聴こう!
▲ あー、アルバム・リビューは私と◆とでやるからね。
●★ えー!
▲ 4人もいると話があっちゃこっちゃ飛ぶし、集中できないから。
● だってあんたたちのものじゃないじゃんかー!
★ そうよ! ◆は発見者特権があるとしても、▲はずるいよ! おいしいところばっかり!
▲ ●は顔のことしか言わないし、★はあら探しばかりするからな。
★ 私は公正な批評家なだけよ!
● 私だって!
▲ だいたいこのところのMansunリビューを読んでると、まるでPaulはただのお人形さんみたいじゃないか。この人が(たとえ顔は無表情でも)どれだけ感性豊かで、どれだけ才能のある、どれだけ頭のいい男かってこと、みんな忘れてるんじゃないの?
● だからその上、顔までいいなんてすばらしいと言ってるの!
▲ (うむを言わさず)それじゃまたあとでね。ほら、行くよ。(◆を引っぱる)
◆ えー、でも!