Mansun日記第13章 (1998年7月)

LEGACY SINGLE REVIEW

MANSUN / LEGACY CD1

▲ あー、もうなんか“Wide Open Space”のB面だけで堪能しちゃったよ。“Legacy”は来年まで取っておいてもいいくらい。“Closed For Business”でさえ、まだ堪能しきれてないんだから。
◆ そう言わずと。
● といっても、実はもうスリーブも見ちゃったし、曲のさわりも聴いちゃったんだよね。オフィシャル・サイトで。
◆ 情報早いのはいいが、驚きや楽しみがないなあ。
▲ ビデオもあるんだよ。
● えー、見せて!
▲ なぜかハードディスクにダウンロードできないので、まだ見てない。容量でかくて時間かかるし。どうせBeat UKでやるから、はるかにきれいなでかい画面で見れるし。
● いま見たいー! こんなのちんたら書いてる間にダウンロードすればいいじゃない。
◆ そうしよう。で、その間にスリーブ鑑賞。
● 鑑賞も何も、この写真は今、私のデスクトップの壁紙になってるから、毎日見てるんだってば。
▲ Mansunのオフィシャル・サイトが新装開店して、そのホームページになってたんだよね。その画像をそのまま頂いて壁紙にした。
◆ いつもながらのPennie Smithの写真だけど、メンバー写真をカバーにしたのって初めてだよね。
● なんでもない、スタジオでのスナップなんだけどね。でもPaulがかわいいからいいや。
◆ 憂愁の表情がとってもセクシー!
▲ 憂愁って、いつも通り無表情なだけなんでは? しかし、同じ写真でもホームページの青いモノクロのほうがすてきだと思わない? Stylorougeってほんとにセンス悪いな。
● いいの。これだけ美しい人は顔さえ出しておけば。
◆ Mansunのサイトはデザインもすてきなのにねえ。
▲ 中の写真は見たことない。
● かわいいなー‥‥
◆ お約束のポスターもついている。フロント・スリーブと同じ写真で、ツアー広告になっているんだけど。
▲ ポスターはいいけど、こんなちっちゃい6つ折りのポスターつけるなら、ポストカードでもつけてくれたほうがうれしい。
● 両方ほしい! Paul Draperピンナップ集なんかもいいわ。

◆ とかなんとか言ってる間に、ダウンロード終わったみたいよ。
● セーブできないってどうして?
▲ こういうオートプレイのムービーって、セーブ・コマンドが効かないのよ。
● だってキャッシュに残ってるでしょ。
▲ それがキャッシュには名前だけあるんだけど、容量は0KBだから単なるリンクだけみたい。
● そんなアホな。これをクリックすれば、ほらクイックタイムが起動するじゃない。
▲ だからそれはサーバから読んでるんでしょ。
● だったら、ためしに他のフォルダに移してみよう。ほら! ちゃんとセーブされてるじゃないか。
▲ あれ? あれ? どうしてだ?
◆ インターネットの仕組みって、私自身がまだよくわかってないせいか、魔法みたい。
● とにかくこれでMansunは私のもの。さあ、見よう見よう。
(ムービー流れる)
▲ なんだ、これは‥‥
◆ 人形アニメなんだけど、その人形がバービーとケン人形で、ケンがMansunの4人に扮して演奏するのを、バービーがテレビで見ながら踊ってるの。
● Mansunは出ないの?!
◆ そういや、この人たちはビデオの質もそれほど高いとは‥‥
● それにしたって! こういうのは顔を出せないほど醜いバンド、それも音楽もつまんないバンドがやれば、まだ笑えるんで見てられるけど、Mansunのやるこっちゃないよ!
▲ 少なくともお耽美な曲調とユーモラスなビデオがまるで合ってませんな。
● がく‥‥曲だけ聴いたほうが良かった。

◆ しょうがねえな。というわけで曲聴きます。この“Legacy”はエクステンディド・ヴァージョン。
● ‥‥ふーん?
▲ だいぶ音変わったね。ギター・オリエンティドというのは嘘じゃなかった。
● でもなんかー‥‥
◆ 荘厳でドラマチックな曲調には変わりないじゃない。音も死ぬほど凝ってるし。
▲ でもMansunを聴いて初めてオーバープロデュースじゃないかって気がしたな。過剰な装飾が曲の良さを殺してしまっているような。
◆ いや、これまでの曲だってすべてオーバープロデュースだったのよ。だけどそれをオーバーと感じさせないのは、プロデュースのうまさで、その意味でもPaul Draperの才能には感心したんだ。
● プロデューサー変わったんじゃないの?
◆ そんなはずは‥‥あれ? ほんとだ。これまではいつもPaulの単独プロデュースだったのに、この曲だけはPaul Draper & Mark‘Spike’Stentになってる。
● だったらその‘Spike’が悪い。
▲ いや、悪いとは言わないけどさ、凝りすぎだとは思う。
● デコレーション・ケーキのような音ですね。聴いてると胸焼けがする。
◆ ギターもちょっと耳障りだし。
● メロディがかわいくないのがなあ。でもきっとB面は死ぬほど良いに違いない。B面聴こう、B面。
◆ それじゃ“Can't Afford To Die”。ちなみに表題曲以外はPaulとChadの共同作曲になっている。
● なるほど、これはライブの音に近いわ。このギターのうるささは。ベースまでブンブンいってるし。
▲ かっこいいじゃん。
● でもMansunの最大の美点であるメロディの美しさが、ギターのやかましさに埋没して聞こえなくなっちゃうという欠点もライブと同じじゃない。
◆ 聞こえないってことはないけど‥‥Mary Chainじゃないんだから。とりあえず最後まで聴こう。“Spasm Of Identity”
● 何これ? インストゥルメンタル?
▲ に近いね。歌はほとんどスキャットだけ。
◆ なんというか、ずいぶん前衛的な曲だね。おもしろいし、むちゃくちゃ凝ってることに変わりはないけど。
● なんかこれは‥‥なにやらEMFの“Cha Cha Cha”に感じたのと同じものを感じるぞ。EMFがサードで到達したところへ、Mansunならセカンドで行っちゃうのも大いに考えられるし。これは下手するとEMFの二の舞に‥‥

《EMFを知らない人のために解説。EMFはアイドル・バンドとしてデビューして、破格の商業的成功を収めたのだが、セカンド、サードとむちゃくちゃアバンギャルドな前衛路線に走り(それがまためちゃめちゃかっこよかったにもかかわらず)、ファンにも批評家にもまったく理解されず、人気を失って解散した。なまじ才能と才気がありすぎたための悲劇》

◆ アルバムも聴いてないのに結論を急ぐな。最後は“Check Under The Bed”
▲ これは歌がはっきり聞こえるし、美しいメロディじゃない。
● しかしやたら元気がいいし、ギターがやかましい。
▲ このギターをやかましいの一言で片づける気? これはすごい、すごいプレイだよ。
● EMFもそうだった。
◆ うーん、しかしあれだけ売れたあとで、こうもフォーマットを変えてしまうというのは‥‥とにかく2枚目も聴こう。

MANSUN / LEGACY CD2

● なぜ? なぜ1と2でケースを変える? こっちは普通のプラケースで。
◆ これはわざとやってるんじゃないの?
▲ だとしてもまるで無意味。こっちはスリーブもただの赤い地にロゴだけだし。
◆ 裏ジャケのスタジオでのPaulとChadのスナップはかわいいじゃん。
● スリーブが歌詞カードになっているのはいいけど、写真は1と同じやつだし。サービスが足りない。
◆ これだけいい音楽作って、それ以上のサービスなんかいらないよ。こちらはタイトル曲のショート・バージョンのほかに、“Wide Open Space”のリミックス、それに新曲が2曲入ってる。
● タイトル曲はべつに変わらないな。でも耳が慣れてくると、やっぱりいい曲だと思えてきたけど。
◆ ほら!
● だからMansunが悪いとは言わないよ。ただ、彼らにはいつも「むちゃくちゃいい」のを期待してしまうだけで。
◆ ギターを少しおさえて、代わりにストリングスでも入れたほうがとは思うね。
▲ それじゃファーストと同じになっちゃうじゃない。今回のMansunはこのスタイルを選択したんだから。それにこれが本来のMansunのスタイルなんだから。
◆ それはわかるし、認めるけど。これ、フル・オーケストラ・バージョンでやったらすてきだろうな。
● お!“Wide Open Space”は、あっと驚くテクノ・ミックスじゃない。
▲ リミクサーは誰?
◆ The Perfectoこと、Paul Oakenfold & Steve Osbourneだ。
● やったじゃん!
▲ でもお‥‥これはオリジナルのほうがいいよ。
◆ 確かにこの人たちの音もいい加減飽きてきたっていうのか、今のダンス界の最先端から見ると、古くさくて単純すぎるような気がしてきた。それとも単にこのミックスの出来が悪いだけかしら?
▲ Mansunの初期の曲はリズム・ボックス使ってるから、テクノとは相性がいいはずなんだけどね。
● Pet Shop Boysミックスみたいに聞こえる。
◆ それは美しメロディとディスコ・リズムがPet Shop Boysの特徴だからでしょう。
▲ まあ、めずらしいという価値はあるけど。
◆ 次は“GSOH”
● どういう意味だ?
◆ “Good Sense Of Humour”です。これはlonely hearts adをからかった歌。男と女のテレフォン・ボイスで、クサい会話がはさまる。
▲ 遊びとしてはおもしろいけど。
● 確かにここまでの曲、ライブで聴いたら、さぞかっこいいだろうとは思うけど。
◆ ラストは“Face In The Crowd”。これはインストゥルメンタルで、初のChadの単独曲。
▲ へー? 特徴のあるリズムに、ちょっとオリエンタルなリフで。
● Japanみたいですー!
◆ Japanに似ているなんて、それだけでもすごいことじゃない。

▲ いやー、しかし意外だったな。“Closed For Business”がわりとファーストの延長線上だったので、またあれかと思っていたのだが、ここまで方向転換するとは。
◆ ていうか、ライブに近い、ギター・ロックという発想はわかるんだけど、それがここまで凝った、難解なといってもいいくらいのものだとは。
● ポップな部分がどこかへ行っちゃったのも痛いね。
◆ でもしょせんシングルのB面だよ。これだけでアルバムを占うのは‥‥
▲ Mansunは進みすぎてる‥‥というのはEMFの時も感じたことで‥‥
● レーベルも同じParlophoneだし。
◆ そういう不吉なことを言うなって!
▲ とにかくアルバムが待ち遠しいですな。
● 聴くのが恐ろしいような気もする。
◆ でもできたものがなんであれ、天才のすることに間違いはないんだ!
▲ それだけは保証付きだけどね。
● 天才ほど世間に理解されないものはないんで。
◆ だから不吉なことを言うなー!

◆ ちょっとちょっと! Beat UKを見てたら、“Legacy”のクリップの紹介に、Howard Devotoと共作した“Railings”を含むとあるけど、これどういうこと?
● そんなのないよー!
▲ なんで? そのため2枚とも買ったのに。
◆ Howard Devotoとやった“Everyone Must Win”は死ぬほど良かったから(今のところMansunのベスト・トラックと言ってもいい)聴きたいのにー!
▲ アルバムに入るのかもな。
● 待てない! 聴きたい!
▲ だったらインターネットで調べればわかる。
◆ ちなみに“Legacy”はBeat UKでは初登場5位に入りました。
▲ よし。
● 1位じゃなきゃやだー!
◆ いいんだよ、1位なんてならない方が。5位ぐらいがいちばんいい。
▲ これだけ「高等な」シングルがいきなり5位っていうだけでも、英国の大衆の耳の良さの証明じゃないか。
● それにしちゃほかはカスばっかりのような気もするが。
◆ プレスなんぞクソ食らえ! リビューなんぞクソ食らえ! ファンはMansunの偉大さをわかってるんだから。

● グゾー!!!! Mansun取れなかったよー!
▲ だから言ったじゃない。昼じゃ間に合わないって。
◆ だって休み時間に電話するとしても、公衆電話じゃリダイヤルがきかないからまずかかるはずないし。それでもこれまでは、昼にチケぴあ行けばだいたい間に合ったのに。
● 私も長の年月コンサート通いをしてきたが、本当に見たいコンサートでチケット取れなかったことなんて、TFFぐらいしかなかったのに!
▲ Manics‥‥
● そういう不可抗力は別として! ぐやじい!ぐやじい!ぐやじい!! 2年に1度のチャンスなのに、私ほどのファンがMansun見れないなんて! どうでもいいやつは来るな! ただの暇人来るな!
▲ もうイギリス行って見るしかないな。
◆ ええい、私もだんだん腹立ってきた。壁紙のMansun見るたびイライラするから、別のに変えちゃお。
▲ Mansunに当たっても‥‥
◆ おまけに今日出たSelectの表紙がBlurなんでまたむかつくし。
● 今月はGlastonburyの特集で、Mansunも出ていたから期待してたのに、SelectはまだMansun嫌いらしくて10点中5点なんてつけてるの見てまた腹が立つし。
▲ もうほとんど八つ当たり(苦笑)。
◆ 観客の熱狂にくらべて、バンドはクールだからだめなんだと。あれだけの演奏して、他に何が必要だってのよ?! Selectはどこに耳つけてるの?
● こんなにかわいいのに!
◆ (話がまた来日公演に戻る)だいたい、Mansunほどの大物がワンオフ・ギグだなんて。
▲ 追加があるんじゃない?
◆ でも広告にも「1回限り」と銘打ってる。
● 向こうじゃあれだけいっぱいギグやってるのになんで?! もう10月までぎっしりだよ。
▲ だから待ちの姿勢じゃだめよ。行けばいいじゃん。ギグ情報はインターネットで手に入るんだし。
◆ 行きゃいいと言ってもねえ‥‥
● もう腹立つ! なんでイギリスってあんなに遠いの?! だいたいなんで▲は冷静なのよ?
▲ Mansunはまだいいよ。1回でも見られたんだから。Manicsは‥‥
● こっちはこっちで暗くなってるし!
◆ これはもうあれに行くっきゃないな。