december
   november.02
    october

Art Of Fighting
wires  cd


>>>trifekta

今頃ながらようやく聴きました、12月に日本盤リリースが正式決定したArt Of Fightingの1stフルアルバム(2001年作)。オーストラリアのメルボルンで活動する男女4ピース・バンドで、本国ではミュージック・アウォードで受賞するなど確固とした地位と人気を得ています。厳選したクリアーな音色を散りばめたインストゥルメンタルと壮大でいてメランコリックなメロディーの対比が見事で、それはあたかもポストロックのようでありスロウコアのようでもあって、しかしどちらでもないという何とも絶妙な立ち位置。どちらかといえば地味な作品ではあるけれど、聴けば必ずや熱心なリスナーを獲得していくであろう名作です。


Giardini Di Miro
the academic rise of falling drfters
cd&lp

>>>2nd rec

イタリアの至宝Giardini Di Miroの新作は、(タイトルから推して知るべし)前作「rise and fall of academic drifting」のリミックス・アルバム。ただし、単なる寄せ集めではなく曲順通りに解体・再構築してみせた言わば「裏」となるコンセプチュアルな作品。順にStyrofoam、Herrmann&Kleine、Nitrada、Turner、Opiate、Dntel、Errolencounteredという流れでリミックス曲が次々とバトンタッチされていくのですが、各々のつなぎには全く違和感はありません。それどころか各リミキサーの個性が1つの作品を通して奇跡的に解け合ってすらいます。ポストロックとエレクトロニカ。その境界線はますます曖昧になって行く...。


Plus Ganzwind
s.t  cd


>>>schinderwies productions

和める雰囲気の落書きジャケット、そしてバンドへのコンタクトとして記載されているのはメンバーのTELナンバー(笑)。そんな愛すべきリスナー目線な5ピースの新人Plus Ganzwindのデビュー作は、ドイツのレーゲンスブルグにあるレーベルSchinderwies-Productionsから。透明感のあるフォーキー&アコースティックな音色がゆらゆらと漂っていたかと思うと、フリーキーなギターワークが突然どこからか降って来たりと、なんとも不思議なポストロック空間を創っています。小鳥のさえずりやゲーム音声といった遊び心やユーモアが挿入されていたりもして、やはり一筋縄ではいきません。こちらも大注目のバンドです。限定500枚。


Salvatore
fresh  cd


>>>racing Junior

ユニオンにて400円で拾った掘り出し物は、ノルウェーのオスロを拠点に活動するSalvatoreの昨年リリースの3rdアルバム。この6人組もすごくユニークでクラウトロック、ジャズ、ダブをベースにして宇宙的な広がりをみせるインストゥルメンタルを展開しています。しかし決して難解な音楽ではなく、音の輪郭自体は瑞々しくポップですらあるので多くのリスナーに受け入れられそうです。ノンジャンルな雑食性や即興性という点ではTortoiseとの共通項も見出せるのだけれど、何と! 彼らに惚れ込んだジョン・マッケンタイアが自らオファーし、シカゴにてプロデュースを行った新作がちょいと前にリリースされたとのことです。


Monopot.
optiness  cd


>>>smalltown supersound

Kim HirthoyやJaga Jazzistらを抱えるノルウェーの人気エレクトロニカ・レーベルから、また1つユニークな才能が開花いたしました。他レーベルから過去に数作リリース済み、Arab Strapとツアーをした...程度の情報しか掴めず彼らについての詳細は不明なのですが、恐らくバンド・スタイルかと思われます。清冽なアコースティック・セットにエレクトロニカ・テイストを加えた趣きで、全体のトーンとしてはどっしりと重くて暗い。でもどこか繊細な暖かみも忘れていない。そう、まるで「もしも北欧の人たちがスロウコアをやったら....」的な夢想を現実に提示したかのようなSサウンドスケープなのです。


Lemko Hall
s.t  lp


>>>speakerphone

Tristezaとのスプリット・リリースによって日本でも知名度が若干上がった?であろう、スウェーデンのスリーピース。求道者然りとした「音」へのこだわりが見事に結晶化した作品がこれ。無駄なものを削ぎ落としたシンプルな演奏は限りなく崇高な響きを伴っていて、聴き手の緊張感を否がおうにも高まらせていく。ま、マルチな演奏家である彼らは曲毎に楽器を持ち替えることで、微妙なアクセントとニュアンスの変化を帯びさせていく。そして、修行僧のようなストイックな行脚の末に辿り着くのは、トイマシーンやメロディカ、バンジョー、ハーモニカで奏でられる可愛らしい人力エレクトロニカな「el u'ltino」。厳しさと優しさが同居した美しい世界は抱きしめたくなるような曲とともに静かに幕を閉じていく。限定300枚LPのみ。


Diefenbach
s.t  cd&lp


>>>display, speakerphone

間違いなく欧州ポストロックの最高峰。Diefenbachはデンマークのコペンハーゲンで活動する5ピース。ポストロックという呼称が果たして正しいのか、収まりきれるのか、彼らの豊潤な音楽性を前にしては判断しかねるのも確か。一音一音が「そこ」でしか存在し得ないという地平のもとで鳴らされていて、エレクトロニクスと絶妙に融け合う各楽器の音色、配置、構成、展開...何もかもが流麗にして完璧。小さいレーベルによる極小プレス数という難点が緩和されさえすれば、MogwaiやSigur Rosといったバンド以上の名声を得ることは容易。fat catやsouthernあたりがライセンスしてくれれば、と強く思ってしまう。


Bosco & Jorge
ally in the sky
 cd


>>>sixgunlover





Godspeed You! Black Emperor
yanqui u.x.o.  cd&2lp


>>>constellation






Arco Flute Foundation
everything after the bomb is sci-fi
cd

>>>cenotaph audio

3作目にしてようやく日本でも紹介され始めているピッツバーグのポストロック・バンド。太陽の光も届かない真っ暗な深海を遊泳しているかのような緩やかなサウンドスケープで、ときおり轟音ギターが入ってきたりも。長尺な曲が大半を占めるのだけれど、テープコラージュを効果的に使ったりと細部に拘った音作りのため全く飽きさせません。雰囲気としてはTarentelの1stに近いような気がします。ちなみに1stのsecond lesson、2ndのthird lessonという時系列がゴッチャのタイトルなのは、前身バンドMeishaで1st lessonというアルバムをリリースしたからだと思われます。ややこしい(笑


Sputniks Down
much was decided before you were born  cd

>>>human condition

駆け出しの新人でありながら、NMEの'one of Glasgows top 5 bands'や'top 50 bands in Scotland'に選出されたポストロック・バンド、Sputniks Down。NMEをして重要と位置付けられたその音楽は、TortoiseやTrans Amといったシカゴ勢にも通じるようなエレクトロニックな部分も併せ持っていて実にユニーク。グラスゴーのシーンを見渡せば、明らかに異端であるのは間違いなさそう。しかし、まだ20歳そこそこというからテクニックやアイデアの熟練を含め今後の成長が楽しみでもあります。ちなみにスプリットをリリースしたお友達、El Hombre Trajeadoのメンバーがゲスト参加。


Wow Kafe
over kansas  7"


>>>play

アメリカのポルノ・スターの名を拝借した、The Jeff Stryker Bandとして活動を始めたグラスゴー発ポストロックバンド(結局はWow Kafeと改名することになるのですが)の唯一のマテリアル。あらゆる諦念から解放されたかのようにゆったりと爪弾かれるギターのフレーズ。あまりにも涙腺に訴えかける切ない響き。ギターが泣いているとはこういうことを云うのかなぁ、としばらく考えてしまいました。そんな「静」のA面。一方、またしても泣きの旋律で始まりつつ終いには怒涛のフィードバックノイズに雪崩れ込む「動」のB面。全3曲捨て曲なし。MogwaiのStuartもお気に入りです。


Out Hud
street dad
 cd&lp


>>>kranky

GSLから!!!とのスプリットをリリースしていたOut Hudが、意外にもKrankyから1stアルバムをリリース。気狂い感満点の要注意バンド。針を落とした瞬間から引き込まれて行くディープな異世界を形成するのは、80年代のUKポストパンクやダブ、アシッドハウス、そしてヒップホップといった要素。それらを強引にではなく丁寧に消化して今の時代に鳴るべき音として弾き出しちゃっていることに驚き。This HeatやPop Groupといったオリジナル勢はもちろんのこと、De Factoや、DFAレーベルあたりに通じる切れた混沌具合が最高にかっこいいです。


Themselves
the no music  cd&2lp


>>>anticon

変態鼻声ラッパーDose Oneの、HoodやBoom Bipへのゲスト参加は、アブストラクトヒップホップのフィールドを飛び越え、ポストロックやエレクトロニカにまで踏み込んでみせた痛快劇でもありました。更に本家Anticonでは、TortoiseのJon Herndonをリミキサーに起用するなど、ますますジャンルレス化が進んでいます。そんな総勢8名からなるウェストコーストの異端児たち=Anticonから、Dose OneとJelをフィーチャーしたThemselvesの新作。Dose Oneのマッチョイズムとは無縁なラップとJelのフリーキーで深遠なバックトラックが見事に融合してて、気持ちよいことこの上なし。ここから始まるヒップホップへの道も多いにありだと思います。


Q And Not U
different damage
 cd&lp


>>>dischord

ベーシスト脱退後にリリースされたシングルでは、こちらの不安を吹き飛ばして健在振りを示すばかりか、新境地まで切り開いていたことに驚きを隠せませんでした。そして、プロデューサーにFugaziのIan Mckayeを再び迎えて制作した2ndアルバムの到着。ザクザクとギターで突き進んで行くお得意のスタイルから、歌に重点を置いたジャジーな曲やダブっぽい実験的な曲まで、バラエティーに富んだ仕上がりとなっています。一聴すると突拍子もない切り貼り的な構成なのですが、実のところよく練られていて、聴けば聴くほど惹き込まれていきます。Faraquet亡き今、dischordとDCシーンの将来を担うのは、やはり彼らしかいません。