プロレスラー列伝4
アンダーテイカーといえば10年以上もWWFマットでトップを張る、国宝級、いや無形文化財にも等しいレスラー。
彼の歴史は長い・・・本名が「マーク・キャラウエイ」という、まるでアイドル歌手のような名前なのは、この際不問にしたい。
ビンス・マクマホンさんは、彼を評して「悪魔を演じ続けているうちに、悪魔になってしまった男」という。
最初、彼は墓掘り人だった。
墓堀人テイカー
名前からして、アンダーテイカー(葬儀屋)だから。
リングで葬った相手を、持参した棺桶の中に放り込み、釘を打ち付けて去っていったものだ。
棺おけ
そのうちマネージャーとして、ポール・ベアラーも登場。
太ったヒットラーのような風采で、声は長島のように甲高い。
ポール・ベアラー
彼はテイカーに、必須アイテムとして、「金色の骨壷」を授けた。
これが敵に奪われると、テイカーは弱くなってしまうのである。
さて当時、アンダーテイカーはヨコズナ一味と抗争していたのだが、そのストーリーも味わい深いものがあった。
ヨコズナ
棺桶マッチ(なんだそれわ)で、卑怯にもヨコズナの子分10人くらいに襲撃されたテイカーは、
自分の大事な骨壷で頭を殴られ、哀れにも棺桶に放り込まれてしまう。
子分達が棺桶を運び出そうとすると、会場の大スクリーンにテイカーの姿が映り、
「私は死んで天国に行きます」とか語った。
しばらくたって、テイカーは復活。
しかし、それはニセモノのアンダーテイカーだったのだ。
ニセモノは我が物顔で振舞うが、やがて本物が復活する日がやってきた。
マネージャーのポール・ベアラーが骨壷に祈ると、本物のテイカーが墓の底から蘇ってきたのだ。
不思議な骨壷
そいでニセモノと対決して勝利する、という、まあ書いているとトホホ〜なストーリーですが、
これも見てると大変面白いわけですね。
次はディーゼルとかストーンコールドとの闘争で、今度は「生き埋めマッチ」。
リングの脇に墓場が作られていて、そこには人を埋めるための穴と、スコップが用意されていた。
勝った方が負けた方が穴に放り込み、土をかけて一丁上がり、という
「本当にだいじょぶなのか?死なないのか?」と心配になる試合形式である。
しかも墓石にはご丁寧にも、「死んだ日」(その試合当日の日付である)まで刻まれていた。
埋められたのはテイカーの方で、土の中から彼の手がニョキニョキ生えて来るシーンは、マジ怖かった。
子供は引きつけ起こしたんじゃないだろうか。
生き埋め
この頃から、ポール・ベアラーとの確執が表面化していく。ベアラーもなんか胸に一物ありげな、嫌なヤツなんですね。
案の定、テイカーが世界王者を取ったとたん、ベアラーは裏切りを働くのだ。
ひざまずいて、「骨壷ちょうだい」ポーズをとるテイカーを足蹴にし、マンカインドというレスラーのもとに走ったのだ。
マンカインド
命より大事な骨壷の行方を、呆然と見送るテイカー。
しかし、あの骨壷にはいったいなにが入ったのだろうか。
アメリカの骨壷には、ちゃんと取っ手がついているんだね。などということを考えさせてくれる、骨壷の行方であった。
マンカインドというのは「自虐キャラ」で、トラウマのために他人と話しができず、
地下のボイラー室に住んでいる、という異色のキャラであった。
テイカーとベアラー
テイカー、マンカインド、ベアラーは三つ巴の抗争を続けるが、
火の玉で相手の顔を焼いたり(実際テイカーの顔には火傷が出来た)
なかなかすごかったが、最終的にはべアラーはテイカーに重い火傷を負わされ、復讐を誓うのであった。
このころのテイカーの入場シーンときたら。
これは舌筆に尽くし難くて、ジミーちゃん好きのあなたなら、きっともうもう、たまらないかと。
まず、曲の前に重い鐘の音。「葬送行進曲」に似たメロディーに乗って、まず露払いとして、
フランシスコ派の修道僧の服装をし、松明を掲げた20人ばかりが登場。
松明軍団
彼らが作る松明のアーチの下を、長身を(2m8cmあります)魔王のコスチュームで包んだテイカーが静々と入場。
そう、テイカーはいつの間にか、墓掘り人から暗黒帝王に変身していたのだ。
暗黒帝王テイカー
「おまえの秘密を知っているぞ!テイカー、おまえは子供の時に実家に放火しただろう!
そして両親と、赤ん坊だった弟を見捨てて逃げただろう!」という爆弾発言がベアラーからあったのは、97年のことだった。
「うっ」
身に覚えがあるのか、絶句するテイカー。
「弟のケインは生きているぞ!ヤツは全身ヤケドだらけになりながらも、おまえに復讐するために生きてきたのだ!!」
ケインはベアラーの導きのまま、WWFマットに登場。
顔も焼け爛れているため、マスクをかぶっている。
当然、兄弟は激しく抗争する。
にらみ合う二人
ケインはテイカーを棺桶に押し込め、ガソリンを撒いて火を放つ。消火作業後、開けてみた棺桶はカラだった。
こうなると、もうプロレスというより、プリンセス天功ショーのノリである。
数ヵ月後、復活したテイカー。後ろには、自分が入っていた棺桶を引っ張っていた。
「ケイン。おまえには、俺を止められねえ」
ケインは呆然とし、次に激怒。
ここらへんの抗争もすでにマジックショーのノリで、地獄の業火を操るケイン
(指差すと炎がゴオオッと上がる)と、やはり指差すと会場に落雷させるテイカーの勝負は、マジしゅごかった。
北斗の拳、みたいだった。また見たいものです。
地獄の炎
巨大なお兄ちゃんよりデカイ弟、てのもすごかった。(ケインは2m10ありますね)
そして、「両親のお墓マッチ」というのは、悪いですが笑えました。
両親の墓石を賭けて、仲の悪い兄弟が対決するのだ。
その後、ベアラーがまたしても爆弾発言。
「テイカー、おまえの両親が、デスバレーで葬儀屋をやってたのは、知っているな。俺はそこの従業員だったんだ。それでおまえの
母親に誘われて、浮気の相手をしてたのさ。まったく、おまえらの母親ときたら、とんでもないビッチだったぜ」
この一言で、仲の悪かった二人の兄弟は結託。
テイカーはケインのマスクを被り、ベアラーをだまし討ちにした。
しかし、またベアラーにそそのかされ、ケインはテイカーと抗争、敗れてXパックと友情を育む。(ここらへんはケイン物語の項参照)
その後WWF乗っ取りを宣言した暗黒帝王テイカーは、裏でビンスと手を組み、ビンスの愛娘、ステファニーを誘拐したりした。
実はこれは、ビンスの依頼によるものだったのだが・・・
誘拐者の影におびえながら、自家用リムジンに乗り込んだステフがほっとしていると、
運転手に化けていたテイカーがおもむろに振り向き、
「お嬢さん、どちらへ?」
「きゃあああーー!!!」
その時のテイカーはマジ怖かったです。
こんなヤツに誘拐されたら、ステフに限らず、誰でも泣いてしまうでしょう。
ステフはテイカー一味に、十字架(みたいなもの)に磔にされ、魔王の「聖なる花嫁」になるべく会場へ。
乱入して、彼女を助けた王子様の役は、ストーンコールド・スティーブ・オースチン!!
はげ頭の王子は、ステフに抱きつかれて困惑の表情。(俺は悪役だったはずだが・・・・)
ストーンコールドとテイカー
「はっはっは、ステフ、これはビジネスだよ!」
現れたビンスは、こうい言ってテイカーとの結託を表明。
こんなお父さんだから、ステフもぐれてしまったのですね。
HHH長期欠場時も、WCWとECWの侵攻におびえるWWFマットを、テイカーは支え続けた。
反目するロック様とジェリコを和解させたり、選手を取りまとめたり、まさしく守護神のようであった。
しかし、悪の香りを漂わせることも忘れない。
左腕を怪我した「弟さん」の容態を尋ねられると、「ケインの腕の怪我は大したことじゃねえ」
「ガキの頃、ケインは顔を焼かれていた。もちろん俺にな!」
「そんな俺が、今晩何をすると思う?」
なんて怖い人なんでしょう。
こんな素敵な兄貴を持った、ケインて一体。
「My Little brother ケイン」とかの発言には、ビックリしましたが。
そうか、リトルかっ、2mあってもリトルなんだなっ!!
「俺のかわいい弟ケイン」とでも訳すのか。
トーリにだまされるケイン
その前に彼は3度目のイメチェンを遂げ、今度は「アメリカン・バッドアス」(アメリカの不良中年)になった。
ハーレーにまたがって入場、コスチュームもヘルスエンジェルスばりなので、
まるでロブ・ハルフォードみたいだが、なで肩のロブより、肩幅が10倍はある、ということを申し述べておかねばなるまい。
テイカーが乗ると、ハーレーも小さく見えるし。
最近では「ストーカーに付け回される妻を持って、困る夫」にもなった。(ここで初めて妻のサラが登場した。
テイカーが喉のところに、「SARA」という刺青を入れているくらい、熱愛している美人妻である。実はテイカーは晩婚らしく、
新婚ホヤホヤであることも判明した。)犯人はDDP(ダイヤモンド・ダラス・ペイジ。この苗字で、あの顔は許せない)。
ストーカー、DDP
試合のある日ごとに、サラをストークした、変なビデオを送りつけてくるのである。
このDDP、異常なまでに変態の役が似合う中年男で、まるで歯磨きのCMのようなその笑顔は、
夜ウンウンうなされてしまいそうなインパクトを持っている。
「有名になりたいヤツは相手をしてやる」という決めゼリフが特意な、テイカーへの挑戦だった。
兄嫁をガードするケインもなかなか良かった。
テイカーと兄嫁を守るケイン
現在テイカーは突然のヒール・ターンをとげ(あの業界でいう、悪役に変身すること)
「俺を尊敬しろ!敬意を払わないヤツは、ボコボコの目に合わせる」
とかゆー、困ったことになっている。リック・フレアーにからむのは、ただの老人いじめのようだ。
しかし、ぜひもう一花咲かせてもらいたいものである。
完
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