プロレスラー列伝10

ウイリアム・リーガル物語

悪の英国紳士。

リーガルを形容する言葉は数あれど、これほどハマっているものもそうはあるまい。
その前は「悪のコミッショナー」であった。

ウィリアム・リーガルは英国ブラックプール生まれ。
世界プロダンス選手権で有名な所、というのが、のちの紳士・リーガルを彷彿とさせる。(強引だろうか)

本名はダーレン・マシューズである。
ウィリアム・リーガルになったわけは、その前名乗っていたロード(英国貴族の称号。サーより偉い。ジェフリー・アーチャーなどがこのクラス)・スティーブン・リーガルというのが、WWEにはスティーブ・オースチンをはじめ、スティーブという名前の選手が多いから変えた、という理由らしい。
で、英国王子の名前をいただいて、ウィリアムとした。

名前をいただいたウィリアム王子(ハゲは遺伝する、という変な画像しかなくてすみません・・・)

まともな写真がありました

 

名前を変えてから、リーガルはその真骨頂を発揮。

それまでの彼の軌跡を端折りながら追ってみよう。

18歳で英国でプロデビュー。
キャッチ・アズ・キャッチ・キャンという、(しかしカタカナで書くと超ダサー・・・)
古典的な英国式のレスリング・スタイルを身に付けるのであった。
これは一名ランカシャースタイルとも言われる、大変玄人受けのする激シブなものである。

ランカシャー・スタイルの渋い試合

そして志ある英国人が昔からそうしてきたように、彼もまた海を渡り米国WCWに入団。
WCW時代はHHHを手下に使っていたくらい偉かった。

パシリをしていた当時はポール・レベックと名乗っていたHHH 

この頃は英国貴族・ロード・スティーブン・リーガルであった。
日本にもたびたび来襲、当時の王者・橋本真也の必殺技・DDTを唯一返した名人として賞賛を集めた。
ちゃんと打ち合わせをしとかなかったからだ、という説もあるが・・・・

当時の王者・橋本さん

さて、リーガルはWWEにいっとき移籍したが、その時のキャラは「頭の足りないキコリ」であった。
チーン、ざんしょ?
さもありなん、ということで、このキャラは全く大衆受けせず、リーガルは失意のうちに(知らないけど、多分そうであろう)WCWに戻るのであった。
そしてまたWWEへ。

頭の弱いキコリキャラ

「英国よりの親善大使」
と、いうのが今度のキャラで、これによってリーガルは水を得た魚のように生き生きと(そうか?)活躍するのであった。
親善大使なので、試合会場ではニコヤカな笑みを忘れない。
「これが作り笑いってもんだな」というのを会得させてくれる、素晴らしいロイヤルな笑みである。

絵に描いたような作り笑い

親善大使といっても、一筋縄でいくものではない。
米国人から見た、嫌味な英国人という最大限のステレオ・タイプを目指す。

雑誌の表紙にもなった、立派な親善大使です。

その活躍ぶりの一環は・・・・
「下品なあなたたち米国人に、本場英国のテーブル・マナーを教えてあげましょう」
と、リングにテーブルを設置。

テーブルマナーを米国人に教えてあげるリーガル

ブーイングの中、テーブル・マナーを伝授するが、突然現れたジェリコによって、テーブルはグシャグシャにされてしまう。

ジェリコが現れ、テーブルはメチャクチャに

驚きと怒り

復讐を誓うリーガル卿

ジェリコとの抗争はけっこう引っ張った。
忘れられないのは、「クイーンズベリー公妃試合形式」。
なにそれ!?
あせってはいけない。
当時から誰もわからなかったのだ。
ただリーガルと公妃をのぞいては・・・・

縦ロール・ヘアに貴族風ヒラヒラの服装をしたオバサン、であるのだが―――

これがクイーンベリー公妃だ!!(TWANG様ご提供)

ビンスに取り入ったリーガルは、辞めたミック・フォーリーの後を継ぎ、WWE(当時はWWFだが)のコミッショナーに就任していた。
コミッショナーというのは、マッチ・メイク権を持つ、レスラー憧れの(本当だろうか・・・)職掌である。

リーガルは職掌を利用して、恨みのあるジェリコに不利な試合をさせるなど、「悪のコミッショナー」ぶりを遺憾なく発揮していた。

5月の特番、「バッククラッシュ」。
シェインが15mダイブを決めたその会場で、いよいよ「クイーンズベリー公妃形式」による、ジェリコとリーガルの試合が始まった。

ジェリコ有利で試合は進む。
リーガルが負けそうになると、ゴングが鳴る。
公妃は「第一ラウンド終了」と、厳かに告げる。
しかしラウンド制?一体何ラウンドで、1本何分なんだろー?
誰も知らない。

次ぎはウォール・オブ・ジェリコでリーガルがタップ・アウト。
公妃はスックと立ち上がり、
「関節技は無効ですね」
とうとうブチ切れたジェリコに、技をかけられてしまう公妃であった。(書いてるとかなり下らないですねー)

リーガルをかばう公妃(TWANG様ご提供)

最後はジェリコにのされる(TWANG様ご提供)

あと、ミディオンとのからみ。
ミディオンというのは、会場でストリーキングをやる、という気持ちの悪いインパクトのみで保っていたレスラーである。
WWEに入る前は、ただの養豚業者だった。(養豚、というのが最高)

元養豚業者・ミディオン

それがなぜか、リーガルと絡み、キスシーンまで演じる。(げろー)

やおい系ではない

あと、親善大使活動としては、
「アメリカをよくするための10の提言」があげられる。

アメリカをよくする10の提言を読み上げる

以下、抜粋。
1、正しい女王陛下の英語を使うこと。
  アメリカの方々が英語を使いたい、というのであれば正しい英語を使うべきです。
  我々英国人と同じスペルを使うべきです。(誤ったスペルの説明:colour>color とか)

2.礼儀正しく、正しいアクセントで話すこと
  あなた方が、我々の言語を使わざるを得ない、と感じていらっしゃるなら適切で正しい語法でお話なさい。 (以下延々と、アメリカ人の心をくすぐる罵倒が続く)

3.アメリカが再び英国植民地に戻ること

4.国連をロンドンへ移す

5.XFL(アメフトリーグ)を、ラグビーチームにしましょう
  アメリカ人の愛してやまないアメフトをこき下ろしまくり。

6〜以下、車は左側を走れとか、紅茶を飲めとか、大変楽しい、
アメリカ人の神経を逆撫でする提案を考えてくれたリーガルであった。

WWE・NYのレストランで、アメリカ人に「下品な食べ方はいけません」と教えてあげるリーガル卿

ヒールで売っているリーガルではあったが、実は心温まるエピソードもある。
それはタジリとの関係である。
当時コミッショナーをやっていたリーガルの所に、WCWの所属選手・日本人タジリがやってきた。
「会社がつぶれたので、働かして下さい」
タジリはアメリカ人がイメージする日本人そのままに、妙にペコペコとしている。
「私のお茶汲みでいいのかね」
「ハイ、それで結構ですんで」
全部会話は日本語である。
リーガルには日本語が分かるらしい。
自分は喋らないが、タジリの言っていることは分かる。
他の選手に、タジリの日本語を通訳してやれるくらい、よく分かるのである。
リーガルは、タジリがWWEで選手としてひとり立ちするまで、師匠としてよく面倒を見てやり、その絆は
「師匠の死に水は私にとらせて下さい」と、タジリに言わしめる程緊密であった。

お茶汲みをするタジリ

やがてリーガルはWWEを裏切って、アライアンス入り。

不敵に団体を裏切るリーガル

ここでもコミッショナーを務めるが、決戦で負けてしまい、アライアンスは消滅。(ストーンコールドの項参照)
リーガルはビンスに、「一介のレスラーになって出直します」と、泣きつく。

ビンスに復職を哀願

「ビンスのケツにキスする会」の、栄えある第一回目の会員はリーガルであった。

ビンスのケツにキスする会に入会の瞬間

その後ランス・ストームを中心とする、「嫌米軍団」の一員となり、
「アメリカは傲慢」
「世界の嫌われ者」
と、まあアメリカ人以外には周知の事実ながら、アメリカ人には認めたくない、シャレにならないことを連呼し、
911テロ一周年を目前にしたアメリカ人を、いやが上にもヒートアップさせるのであった。

嫌米軍団はなんとなくなくなってしまったが、ここから引き継いだものに、リーガルの新必殺技「神の手」がある。
つまりこれは、指金具をつけて相手を殴る、という反則でこのギミックがあるがために、リーガルの本来の持ち味、
ランカシャー・スタイルのレスリングが見れなくなっているのは残念なことである。

華麗なランカシャースタイルの試合

リーガル・ストレッチ(必殺技の一つ)を、ぜひまた拝見したいものだ。

彼の実像は物静かな英国紳士で、自宅では沢山の蛇などの爬虫類を飼っているらしい。

自宅でへび君とともに

物静かな英国紳士

 

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