プロレスラー列伝12

 

ブッカーT物語

 

ジェフ・ベックにも影響を与えたという偉大なミュージシャン、ブッカーT・ジョーンズとは、まるで別人のブッカーTの話である。

偉大なミュージシャン、ブッカーT・ジョーンズ 彼に影響を受けたという、ジェフ・ベック

どうもこの列伝も回が進むにつれ、トップどころのレスラーも出尽くし、
あとは面白い人々も残り少ないのではないか。(エジクリやハーディーズはどうした、という声もあるが)

そこでWWE史上、燦然と輝くアホ・キャラクターbP、ブッカーTが満を持しての登場。

2001年にWCWは、WWF(当時)に吸収合併された、というより買収されてしまったので、その栄光の歴史は幕を閉じた。
一時は月曜プロレス視聴率戦争で、WWEを凌駕していたのに、時の流れというのは残酷なものである。
元WCWのレスラー達は、メリルリンチに吸収された元山一証券営業マンも及ばないくらい辛酸を舐めるのではないか、と怯えていたのである。

ギミックではWCWとECW、二つの会社の株を、ビンスの息子のシェインと、娘のステファニーが買い取って父親に叛旗を翻した、ということになっていた。

当時のWCWチャンピオンだったのが、ブッカーTであった。
WCW時代のブッカーは、とりたてて特色のないレスラーだった。
しかし強いことは強かったので、この当時で5回目のチャンピオン戴冠である。

5タイムス・チャンピオ〜ン

レスラーを味付けもしないで放っておくようなことを、WWEがするわけはない。
上層部はブッカーの持ち味、「アホをやらせたら天下一品」というのを鋭くも見抜き、以来ブッカーはこの路線を驀進。

まずブッカーには、ロック様とのカラミが用意された。
決め台詞は、SUCKA!(Jスカイでは「タコ」と訳されている。また週プロでは「おたんこなす」である)なにかというと連発。

二人の最初の出会い。
ロック様「・・・・ん!? 貴様、何者だ!?」
ブッカー「俺はブッ・・・」
ロック様「(片手をブッカーの顔の前にかざして)名など関係ナシ!」
ブッカー「(青筋がたっている)知らねえのか?俺はWCW王者だ、サッカア!」
ロック様「タコのWCW王者、だな!?そうロック様は理解した!タコ王者でいいか?」
SUCK〜〜A (観客のチャント)
ブッカー(青筋)「サマースラム(特番名)で、おまえと勝負する男だ!」
ロック様「(余裕のある様子)サマースラム?会場の駐車場係りか?」

絶好調のロック様節

・・・・次。
ロック様の人気に憧れるブッカーは、自分で自分のことを「ブック様」と名付け、
映画スターであるロック様に対抗すべく、ハリウッド・オーディションを受けにいくのである。

受付の女性「失礼ですが、お名前は?」
ブッカー「俺はブッ・・・・」
受付「(突然片手をかざして)名など関係ナシ!」
ブッカー(青筋)

オーディションでブッカーは、ト書きまで感情を込めて読んでしまう、というベタぶりである。

ブッカーが演じるのは18世紀の英国貴族、チャタベリー卿である。
どだい最初から無理があった、と思わせるキャスティングだ。
監督「あー、ブッカー。ト書きは読まなくていいんだ」
ブッカー「なんだと?俺はバカすぎてこの役は出来ねえってのか!?」
監督「・・・・」
ブッカー「聞いてくれ。・・・・この首飾りは私の真の愛の証。カメラ、首飾りを受け取るチャタベリーの方へ。信じよ・・・」

感情豊かにオーディションを受ける

ト書きを5回も混ぜて読んでしまう、というアホぶりを遺憾なく発揮したあとで反省しないブッカーが
「俺はロックより才能があるんだ」
と、言い放つや、今まで興味なさそうだった主演女優の態度が急に熱心になる。
「ロックって?あなたロックを知ってるの?」

「俺はサマースラムでロックの野郎とやるんだ」
「ロックの運転手かなんかで?ああ、ロックの執事なのね。サイン貰ってきてくれない?」
とまで言われる始末。

監督まで身を乗り出し、「ロックはブリティッシュ・イングリッシュを喋れるかな?」
ブッカーは激怒し、監督をボコボコに。

・・・・・と、ここから小人のブッカーTをロックがリングに連れてくるくらいまでが、最高潮に面白かった二人。
小人は甲高い声で「さっかあ〜」とセリフを決める。

*注:小人、ミゼットというのはWWEの伝統のお家芸なのです。どこからともなく、そっくりな小人を探してきて登場させるのです。以前は小人同士のマッチがあり、最近ではミニダスト(ゴールダストの小人)というのも登場しました。

さっかあ〜

抗争していたWWEとアライアンスは、ストーンコールドが裏切ってアライアンス側主将になったことで、いきなり盛り上がる。

アライアンスの皆さん

しかし、アライアンスの選手には、ストーンコールド妻、デボラの激マズクッキーを強いられる(食べないとストーンコールドがコワイ)という苦行もあった。

デボラの激マズクッキー

そのアライアンスも、生き残りマッチでWWE軍に負けてしまい消滅。
ブッカーはお笑い路線で人気が出ていたせいか、新生WWEでも余裕で生き残ったばかりか、ビンスのお気に入りに抜擢。

ビンスの用心棒兼お気に入りに抜擢

ビンスを付けねらうストーンコールドとの抗争が勃発する。

この抗争は、全天候型というか、野外型というか、色々な場所でロケがあったので
なかなか楽しめたのである。

ある日。
ブッカーは、ストーンコールドの愛車を盗み出して乗り回す。

ストーンコールドの愛車を盗難するブッカー

ストーンコールドに追い詰められた(いつもこのパターンである)ブッカーは、教会に逃げ込む。
そこではチャリティのビンゴ大会が開催されていた。
席についてビンゴの紙を手に取るブッカー。
「ふうう〜〜〜。どうやらまいたようだぜ。さてビンゴでもやるか、サッカア〜」

教会でビンゴ

そこに、今までの女性の澄んだ声とは打って変わった、ダミ声が。
「次の当たりナンバーは、3:16・・・・」
恐怖に見開かれたブッカーの目には、ストーンコールドの姿が!!

ストーンコールド登場

あわてて今度は聖堂に逃げ込むブッカー。
懺悔の小部屋に入ると、そこには告白にやって来た若い女性が。
「私は罪深いことをいたしました」
「よしよし、主はいつもあなたと一緒です。悔い改めなさい」
若い女性の告白が、色っぽい部分に関わってきたので、ウハウハ喜ぶブッカー。
ここらへんの表情などが、ブッカーの真骨頂であろう。

懺悔を聞いてウハウハ

結局この日は、車が必要な尼さんの影に隠れて教会を脱出。
さすがのストーンコールドも、尼さんには手出しできなかったのだ。

また、その次には。
スーパーマーケット(郊外型で巨大)でストーンコールドにのされるブッカー。

スーパーでの争い

棚の中のもの、すべてが武器となる。
ミルクをかけられ、

ミルクをグビッと

その上から小麦粉まぶしにされたブッカー。

それをブッカーにかけて、上から小麦粉まぶし

ストーンコールドは気がすむまでブッカーをボコったあと、
カートにブッカーを乗せてレジへ。

ついでに豆も・・・会計へ

いったいいくら払ったのか、気になるところである。

ブッカーTの妙技、スピンルーニー。
ワナワナと震える左手を、カッと見開いた目で見つめたあと、

ジッと手を見る

すばやく背中をマットに接しクルクル回るという、相手に全くダメージを与えないという点では画期的な技。

妙技・大回転

くだらないけど、ぜひ見たい技の一つである。

しゅたっ。

この技と、ブッカーにほれ込んでしまった男がいた。
そう、その名はゴールダスト。黄金のゴージャスな男である。
ブッカーとタッグ・チームを組むのは、ゴールダストの悲願となった。
手を変え、品を変えての勧誘の数々。

ブッカーを口説くゴールダスト

ベッドで待ち伏せされたり、コンビニに現れたりの、神出鬼没ぶり。

とうとうタッグを組むことになった二人。
「どうせお笑いだろー」
という世間の声もあったが、意外にもこのチームはブレイク。
タッグ王者にも輝いた。

愛し合う二人<違う

コスプレ好きなゴールダストは、その間にも色々な扮装をして
笑かしてくれたが、だんだんこのチームの弱点がゴールダストにある、
という風評が強まり、彼は愛するブッカーのために身を引く決心をした。

スターウォーズのコスプレ

「今度の試合で負けたらチームを解散しよう。その方がお前のためなのだ」
なんという麗しい、ゴールダストの愛であろうか。

しかし、背水の陣で挑んだその試合は、乱入によりあっけなく負けた。

試合後、がっくりしているゴールダストに、悪のユニット、すなわちHHH、そのマネージャーのリック・フレアー、バティスタ、オートンの一味が襲い掛かり、
哀れゴールダストは配電盤に激突、感電して入院してしまう。

悪のユニットの面々

しんゆうゴールダストのために、一人復讐を誓っている最近のブッカーであった。
・・・・・このようにお笑いで生きてきたブッカーであるが、
黒人ならではの瞬発力と身体能力にも恵まれ、レスラーとしても
きわめて優秀である。
脚も長い。(何故)
彼のシーザー・キックなどが、その長さと、脚力が生かされた逸品といえよう。

華麗なるシザーズ・キック

「5回もWCWチャンピオン・・・・」
がブッカーの決めセリフの一つだが、ぜひWWEチャンピオンにもなって欲しいものだ。

 

 

 

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