三年B組という名の

 

 学校から帰り、ふとテレビをつけてみた。すると熱血教師・坂本金八の姿があり、なにやらお怒りになっている様子である。どうやら生徒の一人が「死にそうー」とか言ってしまい、坂本さんの逆燐に触れてしまったということだ。「ペラペ〜ラ、ペラペ〜ラ・・・・・だから簡単に死ぬとか言うなよ!!」と、大量の皮肉が坂本の口から飛び出す。ファンの方には申し訳ないが、私はこのドラマはあまり好きではない。


  最初の頃は、このドラマは学園青春ドラマ。運動会前になるとやたら張りきる男子と、それをかっこいいと騒ぎ立てる女子と、それをおもしろく思わない男子の壮絶なエゴイストが描かれたドラマ。バレンタインデーになり、どっちが多くもらえるか二人でおおっぴらに勝負し、結局両方とももらえずに、帰り道の本屋で雑誌を立ち読みした所、「チョコを何個もらえるかで勝負する奴はチョコをもらえない」という記事を目にし愕然となるドラマ。内心そうだと思い込んでいたこのドラマを初めて見た時は、あまりに想像と違っていたため、ショックのあまりインフルエンザにかかってしまった苦い記憶がある。


 このドラマの主人公、坂本はだてに国語教師をやっておらず、漢字の成り立ちについて鬼のように詳しい。トリビアに投稿できるレベルのものまで知っている。だが「へぇ」と言わせることができても、あまりおもしろくないのでボツになる可能性がとんこつスープのように濃厚である。それを坂本は知っているため、生徒達に教えるだけで自分自身に妥協し、ほのかな自己満足を得ているのである。


 だがそれを見るのに耐えかねた視聴者たちの手によって、「漢字の成り立ち王決定戦」という大規模な大会が東京ドームで行われた。当然坂本のもとに招待状が届く。参加者は皆強豪ぞろいで、有名大学の教授達がわらわらと集まる。坂本は所詮アマチュアだ。大丈夫だろうか? 開催者も心配な表情をしている。だが彼らの心配をよそに、坂本は次々と強豪達を倒していく。「人という字は二人が支え合っているという意味なんだ!」どんな漢字に対しても最後には必ずこのように言う坂本に対し、教授達は次第にやる気をなくしていく。そしてついに坂本の優勝が決まる。彼は勝利インタビューで「みなさんが私を支えてくれたおかげです!」と言う。素直に「辞書をいっぱい読んだからです」と言わないところが偽善的である。


 坂本の目が覚める。「やっべ、夢だったのか、やっべ」 このような夢を見るとはかなりの不満を抱いているとみえる。『人という字は二人が支え合っているという意味なんだ!』 人に夢と書いて「儚い(はかない)」と読む。うまいことを言っても結局こじつけなのである。 

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