私と阿世知君は試験会場へと向かった。中学校から歩いて15分程度で着くため、余計なことを考えずに高校に到着することができた。私達は緊張をほぐそうと、あえて面接の会話を避け、音楽や映画の話をしていた(彼も洋楽が大好きで、レッドツェッペリンやエアロスミスを今でもよく聞いている。彼の影響でツェッペリンは大好きになったが、エアロスミスはなんだか好きになれない。ゴメン)。しかしお互いぎこちなさが見え隠れし、多少気まずい気持ちにもなったのだった。どういうことかというと、前から説明しているように私の内申はひどいものだった。それに比べ彼の内申は非のうちどころのないものだった。ようするに、私が落ちて彼が受かるという可能性が十二分に高いのだ。彼はもちろん口には出さなかったが、うすうす感付いていただろう。

  そして私達は高校に着いた。私達の他にも何人かがウロウロとしていて、私は彼らの顔を覗くたびに、
(・・・・うん、こいつには勝てそうだ)
(こいつは・・・・なかなかのオーラが出てるな・・・)
・・・・かわいい子いないな・・・・
などと思っていた。面接直前なのに随分余裕があったんだなぁと当時の自分に感心している。

 そして私達受験生は、控え室のような所に入れられた。その部屋の雰囲気からすると、どうやらそこは化学の講義室のようであった。教壇の前に大きな机(普通に座ると四人座れる)が横に三つ、縦に四つほど並んでおり、入り口から一番近い席から受験番号の若い順番に座らせられた。そして一枚の紙が配られた。どうやらアンケート用紙のようで、先生っぽい人がこれを基準に面接すると言った。しかしアンケートの内容は、どのような大学に行きたいか、どういう高校生活を送りたいか、交通機関はなにかなど、ホントにこんなこと聞かれんの的な質問も多々あった。 それを書いた後、早速一番右の前の男が呼ばれた。緊張が走る。

 「じゃあ次は69番の人、どうぞ」
ついに阿世知君の番である。彼は小さな声で、じゃあ行ってくる、と言った。勇ましい。それから3分ほどして私が呼ばれるのだが、その3分は異常に長かった。ウルトラマンがいたらもう帰っているだろう。そのぐらい長く感じたのだ。

 「次、70番の人、どうぞ」
私だ。私はゆっくりと立ち上がり面接会場へ向かった。といってもその教室を出て廊下を50mほど歩いたところにある教室なのだが。マニュアル通りノックを二回して失礼します、と言って部屋に入った。試験官は3人いて、女が一人で男が二人であった。三人とも50歳前後に見えた。

「それじゃ座ってください」

私は椅子に座った。すると受験番号と名前、及び出身中学校を聞かれ、答えた。記憶によるとものすごいハキハキ答えた気がする。自分で喋ってる時も、俺ってこんなにハキハキ喋れるんだなぁと感動していた覚えがある。その後も用意済みの質問をされ、ペラペ〜ラペラペ〜ラって感じで答えられた。こりゃいけんじゃね?と試験中に思った直後である。

面接官「将来はなにになりたいですか?」

私「国語の先生になりたいと思ってます」

面接官「それはなぜですか?」

私(・・・・・なんでだろう)
私の頭の中でテツ&トモが歌っている。しかしここは台本いらずのタジマの異名を持つ私である。思いついたことをとにかく口に出した。

私「あの、近頃、日本語が乱れていると言われていますよね。だけど、必ずしもそういうわけではないと思うんですよ・・・・・(以下略)」

です、ますで答えるはずが、〜よね、〜ですよという語尾になった時点で私は汗かきまくりだった。喋ってる途中でいきなり試験官がキレたらどうしよう。動揺した私は、その後も前半のようなキレがなく、面接は幕を閉じたのだった。

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