MIX JUCE



 どうして電話くれないの?

 どうして一緒にいてくれないの?

 どうして二人でいるのに、私と話してくれないの?

 どうして記念日なのに忘れるの?





 だぁー!!!!!

 どうして、こうも女と言う生き物はうるさいのだ。

 電話だぁ?圏外って事もあるだろ?

 一緒にいてくれない?同じ部屋にいるんだから、一緒にいることになるだろう?

 私と話してくれない?無言でもいいじゃないかぁ?

 記念日?覚えてられるか、そんなものぉ!!




 「雄二は、私の事嫌いなの?」

 「ぬ…………」

 「聞えない!」

 「だぁー!!!!」




 最近は、こればっかり。侍たるもの、そう簡単に好きだとか言えるものかぁ!





 「…今日…ドライブでも行くか…」

 その日は、久々の連休で。

 「わーいい!行く!雄二と一緒ならどこでもいい!!」

 俺の家に遊びに来ていたを、また喧嘩にならないようご機嫌伺いに出てみた。



 「じゃぁ…草津に温泉でも…」

 「やだっ!」

 「なっ!」


 俺が言い終わらないうちに、否定された。どこでもいいと言ったではないかぁ!!


 「も少しロマンチックなところがいいの!」

 「はぁ…っ…。」


 酒井さんは、疲れちまったよ…。



 よし。


 ちょっと俺も、も少し頑固に行ってみますか。








 「ねぇ…雄二?どこ行くの?」

 「秘密だ。」

 「温泉だったら承知しないよ…」

 「…」


 ちょっと温泉へ行くには不釣合いなスウィートソウルミュージックが車内に流れ。
 俺の言葉に不安を持つ彼女は、始終無言。










 「雄二一人で入ってくれば?」


 そう草津に来た。いつも振り回されて、たまには、俺に付き合ってくれてもいいだろ?
 明日も休みだから、どうせならと一泊するつもりで、急遽旅館を手配した。
 その旅館の部屋で、は、ご立腹。
 彼女は座椅子に、怒りの気持ちを込めるようにドスンと大きな音を立てて座る。



 「…じゃ、行ってくる。」


 このままの言いなりのまま、過ごせば、俺酒井さん気力も持ちません。
 ちょっと突き放してみます。











 「いいねぇ〜、こういうの!」

 たまには、いいじゃないの、こんなのも。
 だって、俺も30だもの。こんな休日も好きなわけ。


 露天風呂から見える夕景は絶景。


 「はぁ〜。疲れが和らぐ、和らぐ。」





 こんな事を俺が風呂ん中で言ってるあいだもは怒ってるはず。


 怒れ、怒れ。


 怒ったところで、今回は謝らんぞ!











 「……ゆうじぃ…」


 ぬっ?今俺を呼ぶ声が聞えたが気のせいか?


 「……ゆうじぃ…」



 気のせいではないらしい。

 溢れる草津の湯の湯気の向こうにの姿が見えた。


 「!な、なんだぁ?」

 「…ゆうじと一緒にお風呂はいる…」

 ばつが悪そうな顔で、小声で呟く

 どうした?

 どういう風の吹き回しだ?

 っていうか、ここ混浴だったわけ?




 「…じゃ、俺は上がるぞ。」

 「だめ!」

 「なんだぁ!?」

 「さっき、ここの女将さんが部屋に来て…」

 「で?」



 俺の視界から外れ、身体を覆っていたバスタオルをとる。

 バスタオルは、小さく置かれている岩の上に。

 そして、サッと俺に背中を向けたまま湯の中につかるの姿に、一瞬ドキっとする。

 何度も見たの背中とはいえ、こういうシチュエーションでは、また感じが違う。

 俺は、横目でチラチラと左横のの生足を見てしまう。



 「…ここの混浴に入ったカップルはね…」

 「なんだ。」

 「末永く幸せになれるんだって。」

 「…」

 「その話聞いたから、入りにきたの。」

 「…」



 湯気の向こうのの顔は、笑顔で俺を見ていた。


 聞けば、その女将さんの好意で1時間だけ俺達のために貸切にしてくれたらしい。

 「…そうか…」


 精一杯答える。







 しばらく俺達は湯の中で、身体を任せた。






 …にしてもが裸で横にいると思うと…どうにも落ち着かないのだが…。







 「あ!今雄二変な事考えたでしょ?ここ、お風呂だよ?」

 「う、うるさい!考えてないっ!」

 「…ふ〜ん。お風呂の中で…ってのもイイカナって思ったんだけどなぁ〜。」

 「えっ?えっ?」

 「嘘だよ。やっぱ、考えてたんだ!」

 「…」









 女と言う生き物は、まったくわからん。

 女の気持ちは、さっぱりわからん。

 まるで、どれがベースになってるのかわからない「ミックスジュース」のように…。
END

■あとがきと言う名の言い訳
何となく気分で、おちゃらけた雄二を書きたかったのです。てか、おれは温泉でもいいぞー雄二<ばか。2004/02 ちょこっと手直し。