One more day --another side



 もう戻れない事はわかってる。

 彼女と俺の笑顔が輝いていた時間に…。

 納得したはずなのに…。










**********


 待ち合わせた代官山の駅は人込みでごった返していて。
 彼女は壁にもたれながら。
 俺は彼女を見つめながら。
 最後の時間を惜しんだ。


 あのとき、夕陽が筋になっていて。
 オレンジに光るの涙を見て苦しかったのだけ鮮明に覚えてる。


 「…ごめんね。でもあたし…薫の事今も好きだから…」

 「…じゃぁなんで!」


 が消えそうな声で俺に言った。
 沈みかけた夕焼けが、沢山の人が居る街中を照らして。


 「薫は…あたしをいつでも見てくれた?」


 その時だよ。

 「後悔」って言葉の意味を知ったのは。
 イブの日。
 食事をするのに待ち合わせたあの駅の改札で、はその言葉だけを告げて。

 人ごみの中へと消えていった。







     君を愛していた。

     心から…。







 伝わっていると思ってた。
 僕のありったけの想いが。


 言葉だけじゃ伝わらないものもある。


 そんな言葉をよく聞くけど。
 それでも、言葉じゃなきゃ伝わらない事がある。


 それだけじゃ足りないの?









 いや…違う…。

 僕は、「言葉」にかまけて君を…。

 君をいつからか見なくなってたんだね。


**********









 あれから、食事も喉を通らなくなって。
 安岡や他の奴らも外に出るように誘ってくれたんだけど。

 けど俺は。
 誰もいなくなった、この部屋で。
 写真をフローリングの上に並べて。
 唇を噛み締める事を毎日用に繰り返す。





     どうして去っていくの?

     君を愛してるのに。

     君は全てを残したまま去っていくの?

     僕との思い出も?






 思い出が残るこの部屋で。

 輝いているその写真には。

 僕とが笑いあってた頃の二人が写ってる。




















 あれから2週間後。

 一通の葉書が届いた。

 その葉書の裏には、知らない男と写ってるの笑顔。

 彼女が残していった写真と変わらない笑顔があった。


 そして一言だけ。

 くせのある字で、書かれてた。


  〜この人と結婚します〜



















 もう戻れない事はわかってる。

 だけど。

 俺の中から全て消さないと。

 消さないと、俺は次へ踏み出せない。

 君のように強くはないから。


 だから。

 この次君と出逢ったときは笑顔でいられるように。




 そして。

 また生まれ変わったとき君と出逢えたら。

 今度は上手くいくようにと。




 その願いを託して。






 おめでとう



 その一言を言わせてほしい。




















 そして僕はゆっくりと押しなれた番号を押してゆく。

 この最後の電話が。

 この恋を忘れるための試練だと思って…。
END

■あとがきと言う名の言い訳
まったく跡形なく消えていたので、全然前回と話変わってると思います。要所要所は変わってないけど。この曲を別の観点から、書くと別れた二人の話にも聞こえて、そっからこれを書きました。