佐藤正人の“音楽セミナー”


第7回 「アンサンブルについて4」

1 トランペットアンサンブル
  (1)トランペットアンサンブルの基本
  (2)アタックとタンギング
  (3)レパートリー
  (4)配置について
2 ホルンアンサンブル
  (1)ホルンアンサンブルについて
   ・アインザッツの出し方(合図)
   ・自分の譜面は責任をもって
   ・ホルンの奏でるハーモニーの美しい魅力
  (2)レパートリー
  (3)配置について

1 トランペットアンサンブル
  (1)トランペットアンサンブルの基本
 トランペットのアンサンブルを演奏するうえで、まずいちばん気になるのは耐久力の問題です。 トランペットはマウスピースが小さく、浅く、金管楽器でいちばん高い音域を受け持つため、当然バテやすくなります。 今ここで、もう一度トランペットの基礎的な奏法を考え直してみましょう。

 トランペットは、実際吹いてみるとすぐに音の出る人と、いつまでたっても出にくい人がいます。 また、初めて楽器をもつ人は、あたかも火を起こすときのように頬をふくらませ、真っ赤な顔をして力まかせに吹こうとします。 唇にマウスピースがくい込むほど押し付けていると、震動するべき場所に圧力をかけるわけですから、当然音は出にくくなります。 トランペットの音の出にくいという伝説は、この変から生まれているのでしょう。

正しい奏法はこの逆をやればいいのです。
 ・ 体の力を抜く。
 ・ 楽にマウスピースを当てる。
 ・ 呼吸は深くなめらかに。
 ・ 体、特に上半身に力が入っていると肩や首、喉が締まってしまい、通りの悪い詰まった音色になります。
   歌うときと同様に、口のなかや喉、そのほか体のなかの空間に音を響かせるために、
   体のなかをいつも広くとっていれば、柔らかく豊かな音色が得られます。
   そして体の重心を下に意識することで姿勢が安定し、安定した音を出すことができるようになります。
 ・ 初心者というのは、少しの時間を吹くだけでも、すぐに頬の筋肉が笑いすぎたときのようなだるさを感じます。
   今まであまり使われていない筋肉を使うのだから当然なことですが、少し音を出すことになれてくると、
   今度は唇の中央、特にマウスピースの当たっている部分が疲れ、これを「バテ」といいます。
   トランペットを吹く上で大切なことは、唇の細かいことにこだわるよりも、顔全体、
   または体全体の大きな単位で考えるべきです。
 ・ 一般的に腹式呼吸という言葉が流行し、楽器を吹く人は、必ず一度はこのことで悩みます。
   本来、人間が生きるために呼吸をし、吹くために空気を吸えばいいことです。
   学問的に難しく考えるからややこしくなるだけで、単純なものです。皆さんが「あくび」をするとき、
   ゆったり、たっぷり呼吸をしています。これで腹式呼吸の説明は十分です。
   このあくびの状態というのは、体の力は抜け、口のなかから肺にかけて十分に広がり、息もたくさん肺に入ります。
   この状態が楽器を吹くのにいちばんよい状態なのです。
  (2)アタックとタンギング
 アタックとは、音の出る瞬間のことで、発音の良さ、素早さが明確なアタックといえるでしょう。 したがって、唇の真ん中に不必要な力が入っていたり、マウスピースを強く押し当てていたりすると、 震動する部分を無理矢理止めていることで、良いアタックは生まれません。 常に唇の中央を楽に柔らかく保つことが、良いアタックにつながる第一歩となります。

 次に舌つき(正確には舌ひき)ですが、「音をはっきり」というと舌つき(アタック)を強くし、 無理矢理に、乱暴に音を出す人がいますが、これでは正しいアタックはできません。 舌つきを強くすると唇が固くなり、反応が悪くなってしまい、早い、細かいタンギングはできなくなります。 逆によいアタックができれば、そこから早い、細かい、タンギングができていくようになるのです。
  (3)レパートリー
作曲者/編曲者 曲名 出版社
〜三重奏〜
ヴォルコフ 3本のTp.のための「4つの小品」
トマジ
H.Tomasi
3本のトランペットのための組曲
SUITE for Trios Trompettes
ALPHONSE
LEDEC
〜四重奏〜
平吉毅州
T.Hirayoshi
ラプソディ
RHAPSPDY for 4 Trumpets

〜五重奏〜
プレスティ
L.L.Presti
5本のトランペットのための組曲
SUITE for Five Trumpets

ヴォルコフ
K.Wolkow
4つの小品
FOUR PIECES

クロール
B.Krol
ペッツォ・フェスティーヴォ 作品95b
PEZZO FESTIVO, Op.95b

  (4)配置について
 トランペットは、あらゆる楽器のなかで最も指向性のある楽器です。 ですから演奏会などでのパートの配置は特に気をつけなくてはなりません。 トランペットは音が直線的に聞こえてくるので、真正面を向くことは避けましょう。 大体正面に対して45°くらいの角度を向いて演奏したほうがよいでしょう。 さらにpの時にはより内側に、fの時や最後のフィナーレのときには正面を向くなど工夫をします。 そしていちばん肝心なことは、演奏がしやすいこと、つまりメンバー全員がお互いに合図を出し、 確認できることがよいアンサンブルにつながります。
1 ホルンアンサンブル
  (1)ホルンアンサンブルについて
Hr.アンサンブルは、2名から12名位までの編成の、作品があります。 アンサンブルでは、指揮者がいません。なので指揮者の役割を演奏者自身がやらなくてはなりません。 どんなアンサンブルでもそうですが約束ごとを決めなくてはなりません。
   ・アインザッツの出し方(合図)
アインザッツの出し方(合図)
 曲のスタート、途中でテンポが変わるとき、最後の音を切るとき、 以上のような場合の合図は普通1番Hr.を演奏する人が行います。 なれないころは声で「1、2、3、4」と始めれば揃うと思いますが、 声なしで楽器を少し動かしたり、ブレスを吸うスピードでテンポを感じてあわせてみましょう。 また曲の途中、終わりの音の時に合図を出す場合には、吹いている音が揺れないように注意しましょう。
   ・自分の譜面は責任をもって
自分の譜面は責任をもって
 アンサンブルでは自分の譜面がしっかり吹けていないと、 メンバーの吹いている音を聴きながら吹く、ということはとうてい無理です。 自分の譜面がしっかり吹けるようになって、メンバーの音を聴きながら合わせることができるようになって、 初めてアンサンブルといえるのです。とりあえず、自分のパートはしっかり吹けるようにしましょう。
   ・ホルンの奏でるハーモニーの美しい魅力
ホルンのハーモニーはとても美しいものがあります。 良い響きをつくりだすにはメンバーどうし音程がしっかりあっていないといけません。 お互いの音を聴いて音をあわせることは、とても難しいことですが、 練習を重ねていくうちにできるようになります。 練習方法のひとつとして、ユニゾン(同じ音)の練習をしてみるとよいでしょう。

・同じ音程で音階練習
・オクターヴに分かれて音階練習
・易しいエチュードなどを一緒に吹いてみる
・易しい曲などを一緒に吹いてみる
  (2)レパートリー
作曲者/編曲者 曲名
〜二重奏〜
H.Voxman Selected Duets for French Horn
〜三重奏〜
Kling 30 selected pices
M.Pottag Trio album
K.Janesky Jagerstucklein
Jacobson 3 holidays
C.Butts Choral and call
F.Clark Seicento
J.Chambers 6 trios from Op.82
Morzart 5 trios
Borris,Sigfried Leichte terzette,Heft 「
Loudov,Ivana Suite
Martin Serenade op.14
Muller 6 trios
Schiffmann,Harold holiday fanfares
〜四重奏〜
ライヒャ
A.Reicha
「6つの三重奏曲」より
SECHS TRIOS
ボザ
E.Bozza
「ホルン四重奏のための組曲」より
SUITE pour Quartre Cors en Fa
Susato/Muller Danceries
H.Reiche Bresel-polk
Brahms 6 folk song
Rossini Le Rendez-vous de Chasse
M.pottag Quartet
G.E.Holmas Horn Symphony
P.Koepke IntroDuction & Scherzo
R.Price 3 motets
G.Lampe Horner musik
P.Angerer Quartett
K.Atterberg sorgmarsch
R.Beck Quartett op.1
S.Borris Musik for WaldHorn op.109
P.Cadow 3 stucke fur 4Horner
O.Franz 100 Quartettet
V.Goller Fanfaren
P.Hidemith Sonate(1952)
P.J.Korn Serenade op.33
J.L,Franz Intermezzo,Gavotte op.74
H.Reiche Brezel-polka
W.Rein Waldmusik
N.R.korsakow Notturno
N.Tscherepnin 6 quartette
R.Wagner Pilgerchor(arr.F.Liftl)
D.F.Weber 3 quartette
M.Wessel Sonate
  (3)配置について
ホルンは他の楽器と比較するといちばん異なっているのは、 ベルが後ろを向いて、そのなかに右手をいれて演奏するという点です。 そしてステージで演奏する場合、ベルから出た音は反響板に当たって、 客席に届くので「何番ホルンのベルが反響板にどう向いているか」ということだけで、 ずいぶん響が変わってきます。

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