FMナイトストリート 1990.8.27 XTC 1日目

 

はい皆さんこんばんは伊藤銀次です。さて今日から木曜日までの4日間、「伊藤銀次の夏合宿 ロック大図鑑 夏季集中講座」として、XTC、いろいろですねえ、叩けばほこりがいっぱい出ますねえ。もうとにかく含蓄の深い、しかも、世界で一番、この日本で人気のある、XTCを特集したいと思います。いろんな角度から、XTCのアルバムを順を追って聴いていったり、彼らに関係あるもの、いろいろ掘り探っていきたいと思っていますので、ロックファンの人、ぜひ最後まで楽しんで、4日間、聴いてくださいね。それじゃあよろしく。Beat Goes On!

まず第一日目、今日は、XTCの初期、「ホワイトミュージック」、「GO2」、「ドラムス&ワイヤーズ」までの、曲の移り変わりを研究していきたいと思います。

♪XTC「Science Friction」

これは1977年に発売された「3D」というEPの中の曲です。
XTCが活動を始めたのは、イギリスのスウィンドンという所で、アンディ・パートリッジ、コリン・ムールディング、テリー・チェンバースの3人で、なんと1973年、ずいぶん前ですよね。スカイクレイパーとか、スターパーク、スネイクスなどと名乗っていましたがそれがヘリウムキッズという名前になり、’75年にはデッカレコードで7曲レコーディングしたが未発表のままであるなどと云々と、これはヴァージンから出ている詳しいライナーノーツに書いてあります。まっ、こういったことは、ライナーノーツ買って読んでくれや。ヴァージンと契約した時には、キーボードにバリー・アンドリュースという人を加えて、名前もヘリウムキッズからXTCに改めています。

このサウンドを聴いていると分かるように、後期のXTCとずいぶん違いますよねえ。非常にキーボードがチープなサウンドで、どっちかというとテクノポップっていう感じだよね。この辺が初期のXTCの特徴ではないか、と思います。

続いては、’78年1月に発売されたセカンドシングル

♪XTC「Statue of Liberty」

やっぱり、相当、後期のXTCとはサウンドが違いますけどね。音も薄いですし、まっ、これは、非常に、お金が無かったこともありますし、当時は非常にライブバンドっぽいですしね。プロデューサーの、ジョン・レッキーもかなり影響していると思います。続いては’78年のファーストアルバム「ホワイトミュージック」の中から

♪XTC「This is Pop?」

これなんかは、割と、XTCのギターバンド的な匂いが出てますよね。不協和音的なギターのぶつけ方とか、アンディ、パートリッジ色が出ています。でも、やっぱし、アルバムの中の他の曲を聞くと、非常にキーボードの要素が強いよね。どっちかというと「有頂天」っぽかったりもしますよね。日本のグループにもずいぶんXTCの初期のアルバムが影響を与えてるっていうのを、改めて思い知るわけですが、まだまだ後期のようにひとつのスタイルを見つけて深く突き詰めていく、求道者型のXTCっていう姿勢があんまりなくて、この時代はまだ非常に初々しい、いわゆる民主的なバンドって感じなんだよね。みんなで持ち分担が決まっていて、みんなで知恵を出しながら作っているような初々しさがありますが、なぜか、このアルバムには一つミステリーがあって、ボブ・ディランの「見張り塔からずっと」が入っているんですよね。何でこれが入っているのか、僕にもよく分かりませんが、聴いていただきたいと思います。

♪XTC「見張り塔からずっと」

ほんとに正体不明のアレンジで、はっきり言ってバラバラですよね。ベースのアプローチとかは非常に16ビートっぽいソウルのパターンをロックから持ってきたようなアレンジですが、キーボードはほとんどもう「イン・ア・ガダダヴィダ」ですよね。そしてアンディ・パートリッジのボーカルはほとんど原作の面影もありません。でもこれが非常に初期のころのバンドらしさが出ていると思うんですよね。まだ模索中というか。特にバリー・アンドリュースがいた時代は非常に模索とか実験が多いんですよね。
この「ホワイトミュージック」はイギリスでは38位までしかいってません。チャートの中に4週間しかいませんでした。

続いて2枚目の「GO2」を紹介するわけですが、これも21位までしかいってません。おまけに、今までお届けした3曲のシングルは、いずれもチャートインしていません。まだメジャーチャートでは受けてなかったですが、ヴァージンが契約したグループとしてはかなり期待されたみたいで、「ホワイトミュージック」が出た後、即、トーキング・ヘッズの前座をつとめたり、この辺は、セックス・ピストルズに続いてヴァージンレコードがXTCと契約したということで、パンク、ニューウェイブムーブメントの中に、間違って置かれたと。これがXTCの悲劇の始まりだったんだよね。これがますます彼らをひねくれさせてしまう、ということですが。
「GO2」のジャケットがすごいんですよ。 いきなりジャケットに字がびっちりと書かれていますね。「
this is the LP record disc cover.this is writing is the design upons the cover.」ということが延々と、まっ、たいした駄文ですけど、「CDは手でさわらないでくれ」みたいな文章がずっと面々と書かれているという、こんなジャケットないですよね。それでは「GO2」に収められている4枚目のシングルを聴いてください。

♪XTC「Are You Receving Me」

さて続いてこのアルバムの1曲目に入っている曲を聴いてください。

♪XTC 「Mechanic Dance」

さて、ざっと「GO2」あたりをまとめてしまうと、このアルバムは「GO+」という、初回だけ12インチシングルがおまけについていました。これは最近出たアルバムの中、けっこう「宇治拾遺集」的なやつで、今まで手に入らなかった「GO+」が入っています。でもこれは非常にアバンギャルドです。というのもこの「GO2」は、非常にダブ的なセンスとか、実験的な色彩が強くて、ファーストアルバムよりもさらにこういった色彩が強いんですよね。「GO+」はさらにダブ的な要素が強くて、この傾向はやがてアンディ・パートリッジのソロアルバム「Take Away」に引き続いていきます。

大きな特徴は、このアルバムで、キーボードのバリー・アンドリュースが脱退します。代わって、デイヴ・グレゴリーというギタリストが入ってきます。今まではキーボード、ベース、ギター、ドラムという編成だったんですけど、今度はギター、ギター、ドラム、ベースという編成になります。そして作られたのが次のアルバムですが、今までシングルヒットがなかったのですが、ようやく、このアルバムからヒットが出ました。「Life Being At The Hop」という曲で、イギリスのチャートで54位までしかいってませんが、やっとのことでシングルヒットが出たということです。この「ドラムス&ワイヤーズ」というサードアルバム、大きな変化はメンバーが一人代わったということもあるけど、プロデューサーもスティーヴ・リリーホワイトに代わりました。いまや飛ぶ鳥を落とすプロデューサーですけど、この当時はまだまだ無名ですね。むしろXTCと共に、彼のスタイルを作っていったと言ってもいいくらいに、当時は非常に斬新な音を作っていました。じゃあ、「ドラムス&ワイヤーズ」の中から、初のチャートインシングル

♪XTC 「Life Being At The Hop」

まったくバンドサウンドが変わりましたよねえ。特にやっぱりギターサウンドになったっていう感じがします。今までのキーボードとギターが妙にかみ合わずにお互いに自己主張してたようなサウンドが、一転して2本のギターが、お互いの役割をわかり合いながらサポートしているという、より熟したバンドになってきたという感じがものすごくあるんですけど、実は僕は、XTCと出会ったのはこのアルバムからでした。これ、ジャケットが非常に派手な、ブルーと、イエローと、レッドと、グリーンですよね。思わず手をのばしてしまうジャケットで、買ってしまいまして、これから僕は、ファンになりました。それ以前のアルバムは、いまいちピンとこなかったので、これ以降の「ブラック・シー」で、すっかり私はとりこになってしまいました。なぜかというと、僕はギタリストだからね。この当時、アンディ・パートリッジとデイヴ、グレゴリーという二人のギタリストの作ったサウンドは、ギターサウンドの新しさというのがあって、ギターのアルペジオとか、いろんな要素を使った新しいギターアンサンブルというのは、僕にとっては目のウロコが落ちるくらいの、アレンジの新しさがあったので、ここから思いっきりのめっていきましたけどね。

今度は彼らにとって初めてのヒットらしいヒット、これは僕もしびれまくった曲です。

♪XTC「Making Plants For Nigel」

非常にリズムパターンもきっちりとアレンジメントされてきていますね。このあたり、やっぱりスティーヴ・リリーホワイトの影響だと思います。スティーヴ・リリーホワイトは、ドラムの録り方が非常にうまい人ですよね。
じゃあ、2曲続けていきましょう。

♪XTC「Helicopter」

♪XTC「Outside World」

いやあ、「Helicopter」を聴くと、もうほとんど白井良明のギターですよね。ムーンライダースを思い出しますし、「Outoside World」のギターは布袋ですよ、これは。非常に影響を与えているような気がします。やっぱり今聴きなおして思うのは、初期の2枚と比べてリズムの枠組みが非常にしっかりしている。コリンは1枚目、2枚目でも非常にいいベースパターンを弾いてはいたけれど、ギターのリズムとあまりうまくかみ合っていなかったですよね。それが見事にきっちり曲の枠に組まれているというのは、スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースセンスのせいでしょうね。ほんとに、スティーヴ・リリーホワイトに出会ってなかったら、このバンド、どうなってたかわかんないすよ。ここは初期の大きな剣ヶ峰だったですね。その証拠に、あの人間嫌いのアンディ・パートリッジがスティーヴ・リリーホワイトとこのあとまた、「ブラック・シー」でも演ってますね。スティーブ・リリーホワイトに出会ってプロデュースセンスを盗んだと言っても過言ではないでしょうね。それと共に、スティーブ・リリーホワイトに出会ったことが、コリンのメロディーセンスを引き出すことになったのではないかと思います。「Making Plants For Nigel」の、どことなく60年代のポップグループっぽいメロディーセンスは、割ととんがってるアンディ・パートリッジじゃないセンスで、この曲のヒットによって、XTCの違う部分も出されて来てると。うまくまとめましたがね。なかなか大変だこのグループはいろんな角度があって。

4枚目のアルバム「ブラック・シー」の先行シングルかと思ってたのですが、アルバムには入らずにシングルのみとなってしまいました。’80年に発表されたシングル

♪XTC「Wait Till Your Boat Goes Doun」

♪XTC「General&Majours」

はい、いかがでしたか今日は。明日は、第二夜としてXTCの「ブラック・シー」「イングリッシュ・セトゥルメント」「ママー」を取り上げたいと思います。このあとは、「XTC拾遺集」もあリますので、ぜひ聴いてくださいね。


XTCの拾遺集、これは、「宇治拾遺集」というのがありましたからね、落穂拾いですね。XTCのメインラインを、ファーストからずっと追っていくんだけど、どうしてもこれだけではカバーしきれないものがあるわけですよ。例えばアンディ・パートリッジのソロとか、彼らのプロデュース作品とか、そういったものをできる限り拾って、一つの尺度では測りきれない、アメーバ集団XTCの音楽をいろんな角度から見ていきたいと思っています。

まずお届けするのはアンディ・パートリッジのソロ、これは1980年に「Take Away」というアルバムタイトルで一枚出ていますが、これは非常に変わったジャケットで、ビキニスタイルの人形がそこらじゅうに散乱しているという、非常にアバンギャルドなタイプで、ジャケットの紙もいわゆるアルバムのジャケットのようないい紙じゃないんだよね。どちらかというとXTCはポップな側面とアバンギャルドな側面がありますが、これはアンディ・パートリッジのアバンギャルドな、実験的な側面が凝縮された過激なソロアルバムです。僕は毎日のように、必ず朝起きてはこれを聴くようにしていました。こういったとんがった部分を聴かないと、自分がだめになっていくような気がしたもんですよね。’80年当時は。(笑)そういったことも思い出しながら聴いてみたいと思います。

♪アンディ・パートリッジ「Commashality」

これは、本当に自宅レコーディング的ですよね。まっ、当時はイギリスのスカとかレゲエの影響でしょうか、ダブサウンドというのが重宝されて非常にこれが当時は新しかったですよね。なんか倉庫で演ってるような感じがね。この曲は、まだ、このアルバムの中ではましな方で、曲らしい曲なんです。もうどんどん進んでいくと、とんでもなくわかんなくなってくるということで。このアルバムは非常にドラムに特徴があって、本当に実験的というか、自宅レコーディングという感じがするんですよね。

続いての曲も、ドラムが非常に、湯気という感じの音で、特徴があります。

♪アンディ・パートリッジ「Steam Fist Futurist」 

すごいでしょ。これ、なかなか。当時僕はフェイバリットソングだったんですよね。や〜、懐かしいですよね。アンディ・パートリッジは、ギタリストのとがった面を持っていますよね。この辺がよく、このアルバムに現れていますが、これば現在手に入るようですね。最近発売されたXTCの「Exproad Together」の中に、過去の未発表作品と共に、「Take Away」が入ってます。気に入った人はぜひ手に入れてみてはいかがでしょうか。

さて、今度は、バリー・アンドリュースの行方はということですが、彼は、アンディーパートリッジとは合わなかったかもしれませんが、ある意味天才でもあったわけですね。というのは、このあと転々としたあげくに作ったシュリークバック、これがなかなかイギリスでは定評を得て、あんまり売れはしませんでしたけど、一つのジャンルを作った感がありましたね。今日は「Big Night Music」というアルバムの中からこの曲を聴いていただきたいと思います。

♪シュリークバック「ブッダを狙え」

さて今度は、これも珍しいんですが、XTCの曲、たくさんありますよね。100曲くらいあるかねえ、ほかの人がXTCの曲をカバーしているかと探すと、意外にいないんですよねー。やっぱりちょっと特殊なのか、あんまりカバーしている人はいないんですが、唯一デイヴ・スチュワート&バーバラ・ガスキンが’88年に出したアルバム「As Far As Dreams Can Go」の中で、カバーしています。「ドラムス&ワイヤーズ」の中に収められていた曲です。

♪デイヴ・スチュワート&バーバラ・ガスキン「Rose Girls The Grove」

 

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