「グレープフルーツ」

 

「今度中絶したら子供は生めなくなりますよ」
こんな衝撃的な1行から始まる処女小説

高2で愛する男〈筋肉〉との子を堕胎した時
ユキヲのつややかで、激しい、愛の物語は始まる
グレープフルーツの匂いのする男〈スレイブ〉
醜く太った〈脂肪〉、そして〈シャンプー〉
ユキヲは女の本能で彼らを愛し次々と翻弄する

「三島由紀夫の大ファンなのですが
「美徳のよろめき」で妊娠に関して”違うんじゃないか”と
思うところがあったんです
だから女版「美徳のよろめき」が書ければなと思った」

学生からモデル、そして歌手へという経歴が
作者の木村恵子さんとダブって見えてしまいます
情熱的な恋愛を描きながら
どこか透明感があるこの作品の味わいは
まさにグレープフルーツ

文庫本のみ、角川書店編集部(当時)
石原正康さんの解説が載っています