タイトル


フュージョンとは融解を表す。
中村建治の日々は音楽に留まらず、人とモノのメルティング・ポットである。


フュージョン日記その14.02/11/30 Yシャツにネクタイ

中央道を旅していたツアーのある日、移動中に立ち寄ったラーメン屋さんでの事。同行のメンバーの目がお店の入り口ドアに釘付けになった。来店してきたのは、Yシャツにネクタイ、そして素足の東南アジア系のうら若き女性、ゾロゾロゾロと約15人。お店はいっぱいになった。何故だか男は、女性が男物のYシャツを着た姿に弱いのである。それを知ってか知らずか、いいや知らないはずはない、だってこの娘達はスカートを履いていないのだ。初めは担がれているのではないかと思った。夜中の2時を過ぎていた。その内に、この娘たちは制服のままで来店した
のだと思った。この服装がこの娘達の制服なのだ。閉店後制服のままラーメンを、いや、普通は着替えるだろう?メンバー一同は狐に摘まれた状態のまま、呆然と店を出た。女の子達は我々が全く眼中にない様子で、わいわいと賑やかにラーメンを頬張っている。一体何だったのか理解できないまま、我々は車に乗った。翌日出演したお店でこの出来事を話すと「お店の宣伝ですよ」とあっさりと答えが出てしまった。非常に効果的な宣伝に、まんまと乗せられたわけである。そんなラーメン屋さんに興味があれば、夜中の中央道を旅してみるとよい。
フュージョン日記その13. 02/10/31 DVDエイリアン

DVDレンタルで映画「エイリアン」を見た。DVDで見ると、「エイリアン」は何倍も面白いのだ。まず、監督リドリー・スコットの解説で本編を見ることができる。このモードで再生すると、音声は下げ目にしてあって、タイトルバックから、監督の解説が始まる。映画の進行に沿って解説が聞けるので、興味深い裏話がたっぷり聞ける(監督のボヤキまで聞ける)。見終わったら、次は、興味の沸いたシーンを静止画や、スロー再生で確認してみる。DVDならではの綺麗な画像で、じっくりと見ることが出来る。チャプター機能で、見たいシーンに一発で飛べるのも便利だ。さらに、音楽ファンにはたまらない、サウンド・トラックのみで再生するモードで見ることが出来る。セリフや効果音は消されていて、巨匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽だけで贅沢にギガーの造形を楽しめる。DVDの販売員のような文章になってしまったが、今回、本当にDVDを堪能した。
フュージョン日記 その12.02/07/13 虫歯

歯医者さんに通っています。以前治療した歯が、何となく具合が良くないような気がして、試しに見てもらったら、やっぱり虫歯になっていました。子供の頃は、虫歯が痛くて、よく泣きました。ほっぺたを押さえてソファーにうずくまって痛みにただただ泣きました。虫歯が痛みだすと、何も出来なかったのを覚えています。大人になってからは、さすがに泣きませんが、虫歯はやっぱり嫌です。痛くなる前に、怪しいなと思ったら先に歯医者さんに行きますが、今は歯医者さんが恐いです。治療の?キーン」という音と、口の中に機具を入れられる恐さと、歯から頭蓋骨に響く振動が恐いです。背中は冷や汗がびっしょり、握りしめた手のひらが痛いし、足は反ってかかとが浮き上がっています。大きく空けているつもりの口が、段々すぼまっているし、無意識に顔をそむけようとしています。
 歯医者さんの標語80/20です。80歳で20本は自分の歯を残そうという意味です。好きな物を、いつまでも食べられるように、歯磨きはしっかりとやりましょう。私も実践します!
フュージョン日記 その11.02/06/29 西野やすしソロ・アルバム

 西野やすしの、音楽活動30周年を記念して、彼のソロ・アルバムの制作が進行中。レコーディングには「Talking About」のメンバーを中心に、彼と親しいミュージシャン達が集まっている。6/28京都ラグでの「Talking About」のライブは、ライブ・レコーディングされ、演奏の良い曲はアルバムに収録されることになるだろう。発売はlive spot RAGのRAGMANIAレーベルからで、年内にはリリースの予定だ。
フュージョン日記 その10.02/05/19 ハモンドオルガン

 Medicine Bagのライブで帝塚山のRag Timeに出演した。リハーサルの時間を考えて早めにお店に到着すると「Hammond B-3オルガン」が置いてあった。事情を聞いてみると、Rag Timeでは週に一度の割合で「オルガン・ジャズ・ナイト」をやるので、貸し出し元が「毎回運送するより、置いておくほうが便利」と、1台お店に預けているということだった。
 「ハモンド」はジャズやロックやソウルではオルガンの代名詞である。元々はパイプオルガンの代用に、小さな教会に置くことを考えて作られた物らしいが、その音の良さで、ステージオルガンの代表機種となった。A型、B型、C型、そして家庭用スピネットタイプまで、多くの機種が作られたが、特に人気の高いのは、B型、C型、である。その中でもB-3は最も多くのオルガンプレーヤーに愛され続けている。トーンホイール式という、超アナログな発音方式を持っているので、大きいし、重い、そして
値段も高い。今では生産が中止されているので、欲しいと思ったら中古品を探すしかなく、状態の良いものが見つかるかどうかは、運次第になる。楽器メーカーがいまだに次々とクローン機(音を真似た機種)を発売するのは、トーンホイール式がもう生産されていないから、そして依然として人気が高いからだ。
 中村がハモンド・オルガンに出会ったのは、'92年、石田長生氏の1stソロアルバム「Solo・・・、Solo・・・。」のレコーディングで、であった。それ以前にも手を触れる機会はあったが、この時は真正面から、まるで正面衝突したかのようなB-3との出合いを体験した。思えば18才でTower of Powerの初来日公演を見て、チェスター・トンプソンのオルガン・プレイに衝撃を受けてから、あこがれ続けた本物である。この時の印象は「やはり本物は違う。」そして「どうセッティングしても良い音がする。」だった。当時もクローン機は発売されていて、本物を持てないキーボード・プレーヤー達は皆、音色のセッティングに独自の工夫をしていた。ところが本物は、どうセッティングしても、そのセッティングの良い音がするのである。この楽器の素晴らしさに触れて、手に入れたいと、しばらく真剣に悩んだ。しかし、大きさ、重さを考えると、その時は無理に思えた。手痛い失恋を体験した気分だった。
 帝塚山Rag Timeでは、お店の人にお願いして、急きょ「Medicine Bag オルガン・ナイト」にさせてもらった。フル・ステージ、ハモンド・オルガンを弾くのは初めてだった。素晴らしい体験だった。そしてやっぱり後に切なさが残った。
フュージョン日記 その9.02/04/25 DVD
DVDプレーヤーを買いました。売り値が2万円を切っていたので、そろそろかなと思いつつ、ビデオで充分か?とも思っていたので、悩むところでした。きっかけは実はソフトでした。『ウッドストック、ディレクターズカット』が長年見たかったのですが、ビデオだと2巻組みで4千円以上するので、買うのがずっと後回しになっていました。そんな時にDVDソフトの売り場で、スペシャルプライス2千円で売っているのを見つけてしまったのです。ハードもないのについついソフトに手が出てしまいました。その後で、それを口実にプレーヤーを買いに行きました。
 ウッドストックは1969年のロックフェスティバルで、ドキュメンタリー映画化されています。私は封切り当時中学3年生で、地元のフイルムコンサ?トで見た覚えがありますが、相当ショックでした。ラブ・アンド・ピースもロックもよく分からなかったけれども、アメリカでは若者の間で何だか凄いことが起っていると思った記憶があります。今、改めてじっくりと見直すと、映像も編集もとても優れていることが分かります。ロックバンドを写すだけでなく、時代の空気をしっかりとフィルムに捉えていると思いました。幻想だったのかもしれないけれど、あの時あの場所には確かに「ラブ・アンド・ピース」があったのでしょう。「ここは天国かい?!」という叫びが耳を離れません。
 25年後の1994年のウッドストックをドキュメントした映画「マイ・ジェネレーション」は、単館上映されていましたが、こちらも素晴らしい内容でした。
フュージョン日記 その8.02/02/04 石田長生氏ソロアルバム
石田長生氏のソロアルバムのレコーディングが始まった。石田氏はギタリストでボーカリスト、もちろん自作の曲を演奏する。我が『ディスコグラフィー』では中村が参加した石田氏のレコードを紹介しているが、レコード以外の付き合いを含めるともう15年も彼のグループに参加させてもらっている。石田氏は関西のロックシーンを作ってきた、尊敬すべき先輩であり、今でもロックし続けている。また、彼の歌詞の暖かさにも多くのファンがいる。レコーデング初日は、我が『LIVE♪LIVE』にも登場する「石田長生バンド」のメンバー、清水興(Bass)、ロジャー高橋(Drums)と一緒に、ライブでも演奏している「Cry Cry Baby」「3Q!」「エントリーナンバー」を録音した。この後もレコーディングは続き、発売は5月29日、タイトルは「DNA」になる予定だ。レーベルは9th imageで、このレーベルの第一弾アルバムとして発売される。お楽しみに!
フュージョン日記 その7.01/12/18 恋のチカラ
今日はレコーディングの仕事をした。来年1月から始まるフジテレビ系列のドラマ、木曜夜10:00からの「恋ノチカラ」の劇中曲を録音した。作曲ははんこ屋セッションでいつも一緒のサックスの住友紀人氏。住友氏は「やまとなでしこ」(中村も参加)「ロケットボーイ」映画「ホワイトアウト」とここのところドラマや映画のための作曲(業界では「劇伴」と呼ぶ)の仕事が続いている。劇伴はテーマソングとは別で、「恋ノチカラ」のテーマソングは小田和正氏の曲に決まっており、我々はドラマの中で使われる音楽を担当した。例えば回想シーンの音楽や、格闘シーンの音楽といった種類のものだ。録音は、同じくはんこ屋セッションで一緒のドラムの鶴谷智生氏、ベースの金森佳朗氏も一緒で、和気あいあいと進んだ。テーマソングのピアノソロ・バージョンは中村が弾いているので、ドラマともどもお楽しみに。サウンドトラックCDも発売されるのでそちらもよろしく!
フュージョン日記 その6.01/11/20心のラヴ・ソング
昨日の西野やすしTalking Aboutで、中村はポール・マッカートニーの「心のラヴ・ ソング」を唄った。タイトルでピンと来なくても、メロディーを聞けばきっと聞き覚 えがあるポール・マッカートニーの代表曲の一つだ。中村がリード・ボーカルをとる ことは多くないが、今回は自ら頼んで唄わせてもらうことにした。作曲家としてのポー ル・マッカートニーが大好きな中村であるが、この曲を唄いたいと思った理由は、曲 が好きであるとともに、メロディーの断片が最後には重唱となって、美しいハーモニー を生んでいる、それをお客さんと一緒に体験したいと思ったからだ。ポール・マッカー トニーと言えば、今さら説明の必要のない元ビートルズのメンバーであるが、ビート ルズ時代から作曲能力と同時に、ハモリの上手さで抜きん出た才能を発揮していた。
彼のハモりは、単にメロディーを装飾するのではなく、そこに新たな生命を吹き込む 力を持っている。ビートルズの、特に初期の曲で、主メロを見失うことがあるのは、 どちらかと言えば重いジョン・レノンのメロディーに対して、ポールのハモりが明る く、上向きであることが原因している。さて、「心のラヴ・ソング」では、説明した ように曲中のメロディーが次第に折り重なって最後には美しいハーモニーを生むのだ が、どれ一つとして死んだメロディーがない。作曲をする者には理論的には理解できる事なのだが、実際には良いものを作るのはとても困難でもある。もしポールが理論 など考えずに、当たり前の事のようにこの三重唱を作ったのであれば、それは彼にの み起こせる奇跡なのだ。英語の歌詞をプリントして客席にくばり、男子、女子、バン ドとパートを3つに分けて、口伝えでメロディーを覚えてもらった。どのメロディー もシンプルでキュートである。最後にはバンドを止めて、合唱で曲を終えた。音楽の 喜びと、愛に満たされた空間がそこにはあった。
フュージョン日記 その5.「ミュージシャンシップ」 2001/10/14
先日困難なレコーディングを無事に終えた。販売される音楽ではなく、研究施設に提出する音楽資料の制作を請け負ったものであった。あらゆるジャンルの音楽の制作が発注されたようである。その中で、我々はフュージョンを中心に22曲を受け持った。
少ない予算の中で、作曲し、バンド向けにアレンジし、ミュージシャンを集めてレコーディングするためには、かなりの工夫が必要であった。さらに日数も制限されており、苦しい条件の中で、クオリティを落とさずに仕上げる必要があった。外せない条件もあった。フュージョンの中で、車のレース番組のテーマに使われているタイプの曲が1曲指定されていて、息でコントロールするウインド・シンセの使用も指定されていた。我々の仲間でそれが使える人は1人だった。彼のスケジュールが最優先された。
集められたミュージシャン達は、譜面読みが速くて、広いジャンルの音楽に対応できる、エキスパート達だった。22曲を録るのにスタジオの使用が許されたのは5日間、通常の4分の1のスケジュールだった。1日に5曲録れれば仕上がる、逆に5曲録れなければ間に合わない。一番の支えになったのは、集まったミュージシャン達のミュージシャンシップだった。条件を理解し、なおかつ質を落とさない心構え。曲によっては、ミュージシャンのアドバイスによって、予想を超える素晴らしい仕上がりになった曲もあった。予定は余裕を持ってクリアされた。結果にはクライアントも大満足で、我々も1曲として、不満が残らなかった。苦しい条件の下でもミュージシャンが失ってはいけないもの、それはミュージシャンシップであることを改めて確認させられた仕事であった。
フュージョン日記 その4.「ばいしょうと赤本」2001/6/2
5/31「和佐田の唄って笑ってリズムショー。唄が多いか喋りが長いか、どうなるねん ライブ」
西新宿ハイダウェイ
和佐田達彦(MC,Vo,B)寺内茂(MC,Tp,G,Vo)中村建治(MC,key,Vo)

この日の和佐田氏からの指令は「ばいしょうだと思って来て下さい。」「赤本を持って来て下さい。」この2つだった。和佐田氏とは共演する機会も多いので、中村は彼 を信頼している。この2つが伝えられた、ということは、この2つを心得ていれば十分であるということだ。さて、言葉の説明をしておこう。「ばいしょう」とは「商売」 のバンドマン的逆さ表現。心ならずの音楽仕事のことだが、音楽のサービス業的な部分を誇張した表現でもある。簡単に言うなら、夜の店での酔客の歌の伴奏など、である。「赤本」とは全音の「歌謡曲のすべて」という歌の本のことで、これも音楽業界、 というか、夜店酔客歌伴奏業界の通称。つまり「ばいしょう」には欠かせない小道具である。さて、ステージもこの2つの言葉の説明から始まった。和佐田氏はお客さんに説明しながら、共演者にも説明している。つまりこの時点で共演者はこの日の演奏内容を知ることになる。もちろんうろたえたりはしない。和佐田氏は内容に合った人選をしているからだ。ちなみに中村が音楽の仕事を始めたころは、夜店仕事が沢山 あって、中村自身、歌の伴奏も沢山した。カラオケがこの業種を駆逐した。当時、同じ店 に毎日出演することを「ハコ」と言った。和佐田氏はこのハコバンドをハイダウェイ で再現しようと考えたのだった。初回の今回はお客さんが歌うところまでは実現できなかった。自分達がかわるがわる歌った。「次回は客に歌わせる!」が和佐田氏の残 した言葉だった。
フュージョン日記 その3 「間を演奏する」2001/5/4
西山はんこ屋=史生のライブでキーボードの小川文明氏と共演してから、ツイン・キーボードについて話す機会があった。西山はんこ屋=史生のライブでは、通常1キーボー ドで演奏するので、小川氏が参加した分、役割が減ってこの日は楽だったと私は感じていた。ところが小川氏も両手をあげて「こうだった。」と言うのである。お手上げだった、というのではなく、アンサンブルが出来上がっているので、頑張る必要がなかったと言う意味だ。いえいえこちらこそ、と、両手の上げ合いとなった。小川氏も共通して感じていることは「音を出す事だけが演奏することではない」ということだ。
音を出さないことによって、音楽にメリハリをつけることができる。そういう意味で無音の時には休んでいるのではなくて「間を演奏している」と言えるのだ。場合を限る必要があるだろう。セッションでは、演奏内容は「お任せ」になることが多い。ここぞとばかり音符を詰め込むのは、音楽を理解していないことになる。「美味しい」ところさえ逃がさなければいいのだ。曲が半ばを過ぎて、まだ1音も演奏していない自分を「美味しい」と感じることもできるのだ。
フュージョン日記 その2 「風は友達」2001/4/19
今日、逗子でウインド・サーフィンをやりました!どう!似合わない?何度か演奏にうかがっている逗子の「ノートス」は、ウインド・サーフィンをやる人達がよく集まるお店です。ノートスって南風の神様の名前なんですよ。ウインドをやる人達っていい人ばっかりで「是非ぜひ!」って誘っていただいて、サックスのボブ斉藤氏と「フェザー・ファクトリー」の半日体験スクールに参加させてもらいました。実は初めてだったんだな。ボブさんも初めてで、二人ともこわごわ出かけたんだけど、海は気持ちいいねえ!水も冷たくなくて。4月からは本格的にシーズンなんだって。で、初日の目標は20メートル進むこと。どうにかクリアかな?ボブさんの方がちょっと上手だったかな?2時間ぐらい教えてもらって、体は疲れたけど帰りたくなかった!「ノートス」のダイちゃんありがとう!「フェザー・ファクトリー」のマコトさん、ありがとう!インストラクターのナミさん、ありがとう!
フュージョン日記 その1.「音数と字数」2001/4/14
昨日はミスター・ケリーズでメディスン・バッグのライブだった。
ゲストはサックスのベテラン土岐英史氏。さらに飛び入りで土岐さんの弟子、ナオちゃんこと田中直子がステージに加わった。ナオちゃんは師匠の強い影響を受けており、容姿とのギャップが心地良い。しかし、ひとたびステージに上がれば、同じ楽器はライバル同士なのである。たとえ相手が師匠であろうとも、強くぶつかっていくことが、相手への尊敬を表すことになる。ステージには激しい火花が散った。ところがこの二人、なんと、オフ・ステージでも、ケータイの機能とメールを競う熱いライバル同士なのである。ナオちゃんは1ヶ月の使用が4万パケットを超えるというツワモノで、原稿用紙に換算すると、400字詰めで千枚を超える文字数を送り続けている。音数では、まだわずかに師匠に及ばない彼女だが、字数ではすでに彼を遥かに超えているのだ。

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