ネコ禪ハウス
西洋館


C.オルフ「 カルミナ ブラーナ」より
1「O Fortuna」の歌詞を文法に解釈して、意訳しました。

最下段に楽譜付演奏ファイルへのリンクがあります。(YouTube動画)↓




カルミナブラーナ(Carl Orff : Carmina Burana)を歌うにあたって、ラテン語の和訳を試みた。最初、なるべく原語に忠実な直訳を試みたのだけれど、どうも上手くいかない。
ラテン語は古語なので現代の日本語にすっきり納まらない感じがする。
また、ラテン語は英語のように文単位で単語の働きが決まるのはなく、単語単位で働きが決まっているので、文単位での翻訳がし難いような気がするのだ。
しかし、逆に、単語の単位で文法的な分析を行えば、それだけで意味が通るとも言える。
実際に歌うときにも、単語ごとに意味を把握している方が感情が込めやすいので、ラテン語はとても歌いやすい言語であると言えるかもしれない。
そんなわけで、文単位の直訳は断念して、単語単位で文法的な解釈を行うことにした。
また、内容を日本語でイメージするために意訳を試みた。
実際、ラテン語の単語には多層的な意味があり、それを繰り返して日本語に置き直したくなるので、意訳の方が都合が良かった。
それから、口語に訳すと俗っぽくドロドロになりすぎる感があるので、文語調にしてみた。
罫線囲みの長さは発音の長さに対応させた。

しかし、ラテン語の文法は複雑である。たとえば、名詞を例に挙げると、男性、女性、中性の三種類の性別に分類されるのだが、それが、主格、属格、与格、対格、奪格、呼格、地格と7つの形に変化する上、その変化の仕方が大きく分けただけで5通りもあり、それぞれにに複数形がある上、それが同形の他の品詞かもしれないというトンでもない複雑さなのである。
それはほとんど、日本語の名詞に助詞、助動詞、接尾語のどれかがついた状態が、一つの単語になっているようなものである。
この複雑な解読作業をするにあたって、web上の羅英辞典はとても重宝した。
特に米国イリノイ州のThe University of Notre DameのサイトにあるWilliam Whitaker's Words. というページには大変お世話になりましたm(__)mという感じである。
このページは、単語が活用した形をそのまま入れれば、考えられる品詞と活用形をすべて表示してくれるというスグレモノのページなのである。しかも、複数の単語をまとめて調べてくれる!
このページがなかったら、この作業は無理だったのではないかと思う。それと、学生時代に買っただけで、以来ホコリを被っていた研究社の羅和辞典も併用した。

何にしても、ラテン語の知識がほとんどなかった人間が試行錯誤しながらやったことなので、とんでもない間違いがあるかもしれません。ご注意ください。(~_~;)


O Fortuna, velut Luna statu variabilis,
おお フォルトゥーナよ、
運命よ
のように 調べれば、
確認すれば
変わりやすい、
きまぐれな
感動詞 名詞f・呼格 副詞 名詞f・主格 動詞
奪格の目的分詞
形容詞・主格
おお、運命の女神フォルトゥーナ、知るほどに、月の如く、そぞろ、うつろい、
 
semper crescis aut decrescis; vita detestabilis
常に、いつも あなたは増える
満ちる
または あなたは減る、
欠ける
命よ、人生よ、
現世よ
憎悪すべき、
いまわしい
副詞 動詞
二単現
接続詞 動詞・二単現 名詞f・呼格 形容詞・呼格
汝は、常には満ちるにあらず、また、常には欠けるにあらず。厭うべき現し世よ、
 
nunc obdurat et tunc curat ludo mentis aciem,
今、
現在
厳しくする、
無情である
そして、 それから、 世話をする、
癒す
戯れに
よって、
精神の、
理性の
鮮明さ、
鋭さを
副詞 動詞
三単現
接続詞 副詞 動詞・三単現 名詞m、奪格 名詞f・属格 名詞f・対格
常には我に無情ならず、また、常には我を癒さず、戯れにより、人の叡智の明らかなるを、
 
egestatem, potestatem dissolvit ut glaciem.
貧困を、
欠乏を
権力を、好機を、
権威を、因習を
溶かす、
破壊する
のように、
名詞f・対格 名詞・対格 動詞・三単現 接続詞 名詞f・対格
また、貧困の窮乏を、あるいは、権力を、好機を、氷の如く溶かし去る。
 
Sors immanis et inanis, rota tu volubilis,
運よ、
運勢よ
巨大な、超人的な、
恐ろしい
そして、 空虚な、
愚かな
車輪よ、
輪よ
あなたよ 回転する、
曲がりくねった
名詞f
呼格
形容詞・呼格 接続詞 形容詞・呼格 名詞f・呼格 代名詞
呼格
形容詞・呼格
巨大にして、恐るべき、また、空虚にして、心なき運命よ、汝よ、回転する運命の輪よ、
 
status malus, vana salus semper dissolubilis,
身分、状態、高位 邪悪な、
不正な
偽物の、 救済よ、成功よ、
安全よ
常に、
いつも
消滅しうる、
溶解しうる
名詞m
主格
形容詞、主格 形容詞・呼格 名詞f・呼格 副詞 形容詞・呼格
常に溶け去りうる、邪悪にして不正なる高位よ、偽物の救済よ、
 
obumbrata et velata michi quoque niteris;
影に隠れ、 そして、 ヴェールを
まとい、
私に もまた、
同様に
あなたはもたれ掛かる、
のし掛かる
動詞・完了分詞f 接続詞 動詞・完了分詞f 代名詞・一人称 与格 副詞 動詞・ニ単現
影に隠れ、ヴェールを纏い、汝は、また、我にも、もたれ、のし掛かる。
 
nunc per ludum dorsum nudum fero tui sceleris.
今、現在 によって 戯れ 背中を 裸の、
剥き出しの
公にする、
耐え忍ぶ
あなたの 悪意の、
意地悪の
副詞 前置詞
対格支配
名詞m・対格 名詞n・対格 形容詞・対格 動詞・一単現 代名詞・二人称属格 名詞n・属格
汝の悪しき戯れにより、今、我、はだけし背をさらす。
 
Sors salutis et virtutis michi nunc contraria
運命は、 健康の、
幸いの
そして、 美徳、
勇敢さ
私に 今、
現在
正反対の、
相反する
名詞f
主格
名詞f・属格 接続詞 名詞f・属格 代名詞・一人称与格 副詞 形容詞・主格
今や、我が彼岸なる、幸いなる美しき徳の運気は、
 
est affectus et defectus semper in angaria.
~は~である 弱っている、
損なわれている
そして、 疲れている、
うんざりしている
常に、
いつも
のために、
の中で
領主への奉仕、
農奴の地位
動詞sam
三単現
形容詞・主格 接続詞 形容詞・主格 副詞 接続詞 奪格支配 名詞f・奪格
我が主たる女神への、情け容赦なき奉公がため、常、疲弊して、弱り果つ。
                  
Hac in hora sine mora corde pulsum tangite;
ここで ~に
おいて、
時間、季節 ~なしに、
~なく
ためらい、
遅らせる
心に、魂に、
精神に、
心臓に、
衝撃を、
衝動を、
鼓動を、
みな感動させろ、
触れろ、打て、
副詞 前置詞・奪格支配 名詞f・奪格 前置詞・奪格支配 名詞f・奪格 名詞n・与格 名詞m・対格 動詞・命令形・複数
今、この刹那、躊躇なく、全身に、全霊に、衝撃を打たせ、皆、魂を震撼させよ。
 
quod per sortem sternit fortem, mecum omnes plangite!
~どんな人も、
~に
よって、
運命、運勢、
神託
投げ落とす、
打ちのめす
強い
/幸運、
チャンスを
私と一緒に すべての
人よ、皆、
声高に嘆け、
悲泣せよ
関係代名詞
対格
前置詞
対格支配
名詞f・対格 動詞・三単現 形容詞・対格
/名詞・対格
前置詞+代名詞
奪格
名詞・複数・呼格 動詞・命令形・複数
如何なる強き者をも、如何なる幸運をも、彼の神、運命をもて、投げ堕として、打ちのめしたり。 
我ら皆、諸共に、悲泣し、声高に嘆かん!


YouTubeで見つけた楽譜付演奏です。