ネコ禪ハウス
西洋館


C.オルフ「 カルミナ ブラーナ」より

14 In taberuna quando sumus
(我々が酒場にいるときは)
全歌詞に単語ごとに訳をつけました。

最下段に演奏ファイルへのリンクがあります。(YouTube動画)↓


14 In taberuna quando sumus(我々が酒場にいるときは)を訳してみた。
”最初は、どうせ、酔っ払いが単語を羅列しているだけだから調べるまでもないかな”ぐらいに考えていたのだが、歌ってみると、どうも違う。何かが違う。
歌詞の最初と最後に何かがある。それに、ただ、酔っ払いが愚痴をタレているだけなら、こんなカッコいい歌になるわけがない。

というわけで、調べてみると、やっぱり出てきた。とても、シリアスなものが出てきたのである。
中世に書かれたものとすれば、軽い風刺の域を超えて、ほとんど、命がけの抗議であろうかと思われる。

”死を恐れず、自分の運を賭けてnummus(お金)を得て、その稼ぎでbibit(酒を飲む)を飲む”という主題が文字通り変奏曲のように展開して、隠されたメッセージが浮かび上がる。
13 Ego sum abbasでもbibulis(酒好き)という言葉がBible(聖書)の暗喩として使われいるが、
このnummus(お金)とbibit(酒を飲む)という二つの単語が、どうも、rege(国王rexの活用形)とpapa(法王)に対応してるように思える。
彼らの、十字軍を始めとする強引な対外政策や、異教徒、異端とみなされた人たちへの仕打ちに、心ある修道士たちは、きっと、胸を痛めていたのだろうと思う。
また、このbibit(酒を飲む)という単語には英語のtoastの意味がある。
この言葉には”祝杯、乾杯、祝杯の対象となる人気もの”といった比喩的な用法があるようだが、本来の意味はもちろん、”焼き上げる、焼き上がる”である。
つまり、12 Olim lacus colueram(かつては湖に住んでいた)に出てくる”丸焼きにされる惨めな白鳥”のヴィジョンにつながり、大変に意味深長だ。


また、そういった歴史的な背景なしに読めば、
”酒飲み仲間のような衆愚的な人間関係が、理想とすべき人間のあり方に傷をつけ、魂を堕落させる”ことへの警告とも取れるのである。
どちらにしても、この歌はコテコテの酒飲み礼賛ソングではないと思し、そう信じたい。
いやむしろ、私としては、この歌がカルミナブラーナの中で、最も理念的な歌なのではないかと思うぐらいである。
でも、こんなこと言っても、誰も聞いてくれないかもな、とも思っていた。(-_-;)

そう思っていたら、今回本番で振ってもらう指揮者の先生が、最初のレッスンのとき、”誤解している人もいるようですが、この歌は単に楽しくお酒を飲んでいるだけのものではなく、社会風刺のようなもの含んでいます”と、ボソッと、言われた。”やっぱり、そうなんだ。さすが、ドイツで修行された先生!”と、嬉しくなってしまった。♪
ひょっとしたら、欧米の人なら、当たり前のように気づくことなのかも知れない。でも、日本人には気づきにくいよなあ。(^_^;)

14 In taberuna quando sumus(我々が酒場にいるときは)
In taberna quando sumus, non curamus quid sit humus,
の中で、場所で 居酒屋をかねた
小旅館・小屋
時は 我々が居る しない 我々は見る、
気にする
なにか (代用語)
する、なる
地球 、国
前置詞 奪格支配 名詞f・奪格 副詞 sum 一人称複数 副詞 動詞 一複現 代名詞 主格 動詞sum
 一人称複数
名詞f 主格
我々は宿屋の酒場にいるとき、 世界がどうなっているかなど、 興味がない。
sed ad ludum properamus, cui semper insudamus.
しかし ~に、~へ、 遊び、賭け事 急ぐ それに =what いつも 汗をかく
接続詞 前置詞 対格支配 対格 動詞 一複現 関係代名詞 与格 副詞 動詞 一複現
そうではなく、 賭け事や遊びに忙しく、 専ら、それに汗を流すのだ。
Quid agatur in taberna, ubi nummus est pincerna,
何が 行うわれであろう の中で、場所で 居酒屋 いつでも、どこでも お金、コイン ~は~である バーテン、
ソムリエ
代名詞 主格 動詞 三単現受 
接続法
前置詞 奪格支配 名詞f・奪格 副詞 名詞m 主格 動詞sum 三単現 名詞m 主格
何が酒場で行われるのであろうか、ここでは、いつでも、お金がバーテン役なのだ。
hoc est opus ut queratur, si quid loquar, audiatur.
これが ~は~である 求めるもの、
仕事、所業
ような 反論をするであろう むしろ、それどころか=if anything 私が語ろうとする 聞かれる、
認められる
賛同されるだろう
代名詞 主格 動詞sum 三単現 名詞n 主格 接続詞 動詞 三単現
接続法
接続詞 代名詞 対格 動詞 一単現 
接続法
動詞 三単現 
接続法
これこそが、 皆がそうと認めず、 反論するであろう、 酒場での所業である、   いやむしろ、 私が語るなら、 皆、それを認め、 賛同するだろう。
Quidam ludunt, quidam bibunt, quidam indiscrete vivunt.
ある人たちは 賭け事をする ある人たちは 酒を飲む、
焼き上がる
ある人たちは 無思慮に、無分別に 生き永らえる、
過ごす
代名詞 主格 複数 動詞 三複現 代名詞 主格 複数 動詞 三複現 代名詞 主格 複数 副詞 動詞 三複現
ある人たちは賭け事に興じ、 ある人たちは酒を飲み、 また、ある人たちは、漫然と過ごす。
Sed in ludo qui morantur, ex his quidam denudantur,
しかし、だが ~に 賭け事 人達は いつまでも耽る の中から このもの達の ある者たちは 服を脱がされ
接続詞 前置詞・奪格支配 名詞m・奪格 代名詞・主格 複数 動詞・三複現 前置詞・奪格支配 代名詞・奪格 代名詞・主格 複数 動詞・三複現
だが、賭け事にいつまでも耽る人たちの中で、 ある者たちは服を脱がされ、
quidam ibi vestiuntur, quidam saccis induuntur.
ある者たちは その場で 服を着る ある者たちは 大袋を 被る、着る
代名詞・主格 複数 副詞 動詞・三複現 代名詞・主格 複数 名詞n・奪格 複数 動詞・三複現
ある者たちは、その場で服を着、 また、ある者たちは大きな袋を被る。
Ibi nullus timet mortem, sed pro Baccho mittunt sortem:
そこでは 誰も、~しない 恐れる しかし、だが 前で、ために バッカス 投げ出す 運を、運命を
副詞 名詞n・主格 動詞・三単現 名詞n・対格 接続詞 前置詞・奪格支配 名詞n・奪格 動詞・三複現 名詞n・対格
そこでは、誰も死を恐れない。  それでころか、 酒神バッカスの御前で、 自らの運を、運命を、投げ出すのだ。
Primo pro nummata vini, ex hac bibunt libertini;
第一に 前に、ために お金、金持ち ワインの ために、理由で これの 酒を飲む、
焼き上がる
自由民、
解放された奴隷
順序数詞・与格 前置詞・奪格支配 形容詞の名詞化
・奪格
名詞n・属格 前置詞 代名詞f単数・奪格 動詞・三複現 名詞m複数・主格
まず、第一にワインの代金のために、そのように投げ出し、 そこで得た金で、自由民たちは酒を飲む。
semel bibunt pro captivis, post hec bibunt ter pro vivis,
一度 飲む のため、の前で 捕虜たち その後で、 それらの人たちは 飲む 三度 のため、の前で 生きている者たち
生き残った者たち
数副詞 動詞・三複現 前置詞・奪格支配 名詞c複数・奪格 副詞 代名詞m複数・主格 動詞・三複現 数副詞 前置詞・奪格支配 形容詞の名詞化
・奪格
それらの者たちは、 一度、 捕虜たちのために飲み、 その後、三度、生き残ったものたちのために飲む。
quater pro Christianis cunctis, quinquies pro fidelibus defunctis,
四度 のため、の前で キリスト教徒たち すべての 五度 のため、の前で 忠実な 死者たち
数副詞 前置詞・奪格支配 名詞m複数・奪格 形容詞・奪格 数副詞 前置詞・奪格支配 形容詞・奪格 名詞n複数・奪格
四度、すべてのキリスト教徒のために、  五度、忠実な死者たちのために、
sexies pro sororibus vanis, septies pro militibus silvanis.
六度 のため、の前で シスターたち 中身のない 七度 のため、の前で 兵士たち、騎士達、 森林や牧野の
神々の
副詞 前置詞・奪格支配 名詞n・属格 形容詞・属格 副詞 前置詞・奪格支配 名詞m・奪格 名詞n・属格
六度、格好だけで中身のないシスター達のために、  七度、森林、牧野の神々の騎士たちのために、
Octies pro fratribus perversis, nonies pro monachis dispersis,
八度 のため、の前で 兄弟、同胞たち 正道をはずした、
邪悪な
九番 のため、
の前で
修道女、
尼僧たち
散り散りに
された、
追い出された
副詞 前置詞・奪格支配 名詞m・奪格 形容詞・奪格 副詞 前置詞・奪格支配 名詞f・奪格 動詞
・完了受動分詞
八度、正道を踏み外した同胞達のために、  九度、散り散りに追い出された修道女たちのために、
decies pro navigantibus, undecies pro discordantibus,
十度 のため、の前で 航海するもの 十一度 のため、の前で 敵対するもの
数副詞 前置詞・奪格支配 動詞・現在分詞奪格 数副詞 前置詞・奪格支配 動詞・現在分詞奪格
十度、航海するものたちのために、 十一度、敵対するものたちのために
duodecies pro penitentibus tredecies pro iter agentibus.
十二度目に のため、の前で 後悔する者、
懺悔する者
十三度目に のため、の前で 旅、強行軍 力強い、有効な
数副詞 前置詞・奪格支配 動詞・現在分詞奪格 数副詞 前置詞・奪格支配 名詞n・奪格 形容詞・奪格
十二度、悔い改める者たちのために、  十三度、実りある強行軍のために、
Tam pro papa quam pro rege bibunt omnes sine lege.
そう、まさに のため、の前で ローマ教皇、
法王
よりも、むしろ、
なんと
のため、の前で 王、
国王、君主
酒を飲む、
焼き上がる
すべての人は なしに 法、原理、
戒律、法律
副詞 前置詞・奪格支配 名詞m・奪格 副詞 前置詞・奪格支配 名詞m・奪格 動詞 三複現 名詞c・主格 前置詞・奪格支配 名詞f・奪格
そう、まさに、ローマ教皇のため、  いやむしろ、国王のため、  すべての人達は、神の法も、国の法律も不在のまま、 酒を飲み、出来上がるのだ。
Bibit hera, bibit herus, bibit miles, bibit clerus, bibit ille, bibit illa,
酒を飲む、
焼き上がる
女主人、主婦が 酒を飲む、
焼き上がる
主人、師匠が 酒を飲む、
焼き上がる
兵士、騎士が 酒を飲む、
焼き上がる
聖職者、牧師が 酒を飲む、
焼き上がる
あの男、
彼が
酒を飲む、
焼き上がる
あの女、
彼女が
動詞・三単現 名詞f・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞f・主格
女主人が飲む、  男主人が飲む、  兵士が飲む、  牧師が飲む、  あの男が飲む、  あの女が飲む、
bibit servus cum ancilla, bibit velox, bibit piger, bibit albus, bibit niger,
酒を飲む、
焼き上がる
奴隷、召使いが と一緒に 女奴隷、
女召使い
酒を飲む、
焼き上がる
すばやい人が 酒を飲む、
焼き上がる
のろまな人が 酒を飲む、
焼き上がる
色白な、
幸運な人が
酒を飲む、
焼き上がる
色黒な、
不運な人が
動詞・三単現 名詞m・主格 前置詞・奪格支配 名詞f・奪格 動詞・三単現 形容詞の名詞化・
主格
動詞・三単現 形容詞の名詞化・
主格
動詞・三単現 形容詞の
名詞化・
主格
動詞・三単現 形容詞の
名詞化
・主格
召使いがメイドと飲む、  すばやい人が飲む、  のろまな人が飲む、  幸運な人が飲む、 不運な人が飲む、
bibit constans bibit vagus, bibit rudis, bibit magus.
酒を飲む、
焼き上がる
固定した、
安定した人が
酒を飲む、
焼き上がる
流浪する、
放浪する人が
酒を飲む、
焼き上がる
未開の、
野蛮な人が
酒を飲む、
焼き上がる
賢人、魔術師、
占星術師が
動詞・三単現 形容詞の名詞化
・主格
動詞・三単現 形容詞の名詞化
・主格
動詞・三単現 形容詞の名詞化
・主格
動詞・三単現 名詞m・主格
定住する人が飲む、  流浪する人が飲む、   未開の野蛮な人が飲む、   智慧を体得した賢者が飲む、 
Bibit pauper et egrotus, bibit exul et ignotus,
酒を飲む、
焼き上がる
貧困者、
貧乏人が
病人が
/恋煩いの人が
酒を飲む、
焼き上がる
亡命者、
追放者が
見知らぬ人、
無名な人が
動詞・三単現 形容詞の名詞化
・主格
接続詞 名詞m・主格
/形容詞
動詞・三単現 名詞m・主格 接続詞 形容詞の名詞化
・主格
貧しさに苦しむ者と、病いに苦しむものが飲む、   追放された男と、名も知らぬ男が飲む。
bibit puer, bibit canus, bibit presul et decanus, bibit soror, bibit frater,
酒を飲む、
焼き上がる
少年、若者が 酒を飲む、
焼き上がる
白髪、老人が 酒を飲む、
焼き上がる
司教、
高位聖職者が
修道士、
司祭が
酒を飲む、
焼き上がる
姉妹、
愛人が
酒を飲む、
焼き上がる
兄弟が
動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 接続詞 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m・主格 動詞・三単現 名詞m
・主格
若者が飲む、老人が飲む、   高位聖職者と修道士が飲む、  姉妹が飲む、兄弟が飲む、
bibit anus, bibit mater, bibit iste, bibit ille, bibunt centum, bibunt mille.
酒を飲む、焼き上がる 老女、魔女が 酒を飲む、
焼き上がる
母親、養母が 酒を飲む、
焼き上がる
そんな人が 酒を飲む、
焼き上がる
あんな人が 酒を飲む、
焼き上がる
百人が 酒を飲む、
焼き上がる
千人が
動詞・三単現 名詞f・主格 動詞・三単現 名詞f・主格 動詞・三単現 代名詞m・主格 動詞・三単現 代名詞m・主格 動詞・三複現 基数詞 動詞・三複現 基数詞
老女が飲む、母親が飲む、  そんな人が飲む、あんな人が飲む、  百人が飲む、千人が飲む、
Parum sexcente nummate durant, cum immoderate bibunt omnes sine meta,
不十分に 600の、
無数の
お金のあることに 残る、耐える のとき、場合、 限界なしに、
過度に
飲む すべての人たちが なしに 終わり、限度
副詞 数詞 副詞 動詞・三複現 副詞 副詞 動詞・三複現 名詞c・主格 前置詞・奪格 名詞n・奪格
すべての人達が、 終わることなく、 酒を飲み過ぎるとき、 いくらお金があっても十分ではないのだ、
quamvis bibant mente leta;
しかしながら
(であるのに)
飲むであろう
(飲んでいるのに)
理性、判断、魂の 死、破壊、
破滅の元を
接続詞(→譲歩文) 動詞・三複現接続法 名詞f・属格 名詞n・対格
それは正に、 魂の破滅の元を飲んでいるというのに。
sic nos rodunt omnes gentes, et sic erimus egentes.
このようにして 我々を 苦しめる・蝕む すべての 連中は、人たちは

Gentile:
ユダヤ人からみた異教徒、主にキリスト教徒を指す
そして このようにして 我々は
 ~になるだろう 
貧しい、困窮した
副詞 代名詞c・対格 動詞・三複現 形容詞・対格/主格 名詞n・対格/主格 接続詞 副詞 sumの一複未来 形容詞・主格
このようにして、すべての連中(すべてのキリスト教徒)は我々を蝕み、 そして、このようにして、我々は貧しくなり、困窮するのだ。
Qui nos rodunt confundantur et cum iustis non scribantur.
誰であれ 我々を 苦しめる、
蝕む
滅ぼされるだろう そして とともに、意味で 正義、公正さ
正義の女神
ない 記されるだろう
代名詞m複数・主格 代名詞c・対格 動詞・三複現 動詞・三複現・受接 接続詞 前置詞・奪格支配 名詞n・奪格 副詞 動詞・三複現・受接
誰であれ、我々を蝕み、苦しめるものは滅ぼされるだろう、  そして、正義の名の下、書に記されることは決してないであろう。
Io, io, io, io, io, io, io, io!
強い感情を伴う
儀礼的な絶叫=Hurrah!
感動詞

サイモン・ラトルのジルベスターの映像のようです。
第2部すべてを含んでいて、14曲目は7'20″ぐらいからです。
NHKで放映されたものらしく、日本語の字幕が入っています。
でも、投稿者はブラジルの人のようです。レアなんでしょうね。(^_^)
さすがに見事な演奏ですが、このクラスの合唱団でも、楽譜に噛り付いてます。
さらに、難所ではしっかり遅れてます。
まあ、それくらいがご愛嬌で、良いのかもなあ。
楽譜を見た分だけ遅れるどころか、暗譜してても付いていけない曲です。(^^ゞ