柏屋ぴよ吉's モスクワ旅日記 2003.9.5-9
9月6日
 目を覚ますと日本時間朝8時35分くらい(現地時間朝3時35分)、だいぶ降下していてモスクワの街の灯が見える。"飴"を2つもらい耳抜きをしながら着陸を待つ。長い空の旅もやっと終わりだ。
 さすがに"フラット"なモスクワ空港に着陸。日本時間9時15分、現地時間4時15分くらい。大きな旅客機がずいぶん並んでいる。タラップを降りながらデジカメ動画を撮っていたら空港係員に制止される。いけないことらしい。バスで空港ビルへ。早朝で人気は少ない。トイレに行く途中の通路両側に、なぜだかポーカー&スロット・マシンが並んでいる。トイレは綺麗だったが男性用便器は横仕切なし。

 手荷物受取所でじっと待つ。5時過ぎにようやくベルトが動き始め、突っかえながら太鼓たちも出てくる。大きな2つは別扱いだ。ここでもX線装置を通らないので、「開けろ」「開けなくてもいいだろう」の交渉をフェスティバル・スタッフのロシア女性が頑張る。現地時間朝6時9分頃バスが動き出す。スタッフの女性が事情説明をしてくれようとして「言いたいことはいっぱいあります・・でも汚い言葉ばっかり・・」苦笑いしながら・・太鼓の荷物はトラックを探して(手配できてなかったようだ)日本人の添乗員の男性が何とかしてくれるらしい。ホテルが赤の広場に近く、乗り入れできない(モスクワ・デイというお祭りのため)という問題も(遅れたからか)発生。これも何とか交渉してくれるらしい。・・とにかく大変そうだ。この女性スタッフは到着が遅れたのをずっと待っていてくれたのだろうか?誰のせいだかよくわからないが申し訳ない気もする。

 バスは空港のある郊外から中心地へ向かう。林の中に見える、日本で言うとペンションか何かみたいな色とりどりの建物群から、ゴーリキーとかに出てきそうな趣のある貧乏家、巨大な高層アパート・・と車窓の景色が移り変わる。建築中のパチンコ屋風、ショッピング・センター、橋を渡る。マクドナルド、AgripのGS、車屋・・緑の多さが目に付く。森の中にあるようだ。大きな公園、映画や興行の看板。モニュメント・銅像もやたら目に付く。・・明け始めた街に消え残るネオンが美しい。リスク(治安が良くないと脅かされていた)を犯してもDVを持ってくるべきだったか・・デジカメは電池とメモリーが不安なのであまり撮れない。

 路面電車も変わっている。トロリーバスもあった。サッカースタジアム、ロシア正教の寺院・・ビル街へ近づくと、街全体がイベントの日らしく、交差点の広場に大きなステージが組んであったり、車両通行止めになっていたりを避けて走る・・日本フェスティバルの会場となるマールイ劇場が見えた・・"856"の文字、モスクワが出来て856周年らしい。

 雪の多いところだからか、モスクワのカラスは白黒マダラ模様でびっくりする。ガイドブックにあった通りの"気の強い"雀が一羽で鳩の群を追い散らすのも観察。所変われば・・である。
 やっとホテルに着く。クレムリンや聖ワシリー寺院、赤の広場のすぐ側にあるホテル・ロシア。聖ワシリー寺院のカラフルなタマネギ型の屋根が見える。アミューズメント・パークみたいだ・・さて、ここからがまた大変だった。ポーターを待つ(時間が早くて人数がいなかったようだ)、どこから入るか、荷物を降ろしておくかどうか・・いろんな事がウロウロと決まらない。部屋の割り振りが出来、荷物を持って建物に入ったのは現地時間の朝9時前、完全に一泊分損している。

 ヨーロッパ最大級5000室を超えるというホテルの広さは半端じゃない・・歩くこと歩くこと・・あげくに私と住吉氏の9030号室はカードキーが反応しない。ジェラルド・ゴルドー(オランダ人の非情な格闘家)似の青年が見ていて、やってみてくれたが駄目だった。「ついて来い」と連れて行ってくれようとしたが(何しろ広すぎて)途中でめんどうになったのか「真っ直ぐ行って左に曲がり、カウンターにいる女性に聞いてみてごらん」と去って行く。「スパシーバ(ありがとう)」「パジャルースタ(どういたしまして)」。・・随分と歩く、売店の係員らしき女性がいた。英語はあまり話せないようだ・・どうやら一階の受付に行けと言っているみたい。礼を言い、再び随分歩いてエレベーターにたどり着き、一階へ(このあたりで早くもドラクエかウィザードリィをやっている気分になってくる・・)。一階の受付で雑談をしている若い係員に「こいつが働かない」と告げると、サッと機械に通して渡してくれる。再設定をしたようだ。遠い道を持ち帰って入れてみるが、また駄目。

 隣りの部屋のbeZen鼓空メンバー、さゆりさんが来てくれて色々試してみる。10時集合でレセプションがあるので住吉氏には隣室で着替えを始めていてもらう。間違ったカードを入れた時にはドア側の機器のランプが一瞬フラッシュするのだが、9030の場合は反応がない。カードではなく、ドア側がおかしいのではと思う。鼓空のネイティブ・スピーカー(英語ですが)ダニエル氏にフロントに電話してもらって待っているが誰も来ない・・・もう一度電話すると受付にカードを持ってこいとのことで、さゆりさんが行って来てくれたが同じ状況。再度言ってもらって、やっと中年の女性客室係がやって来たが、目の前でやって見せても「カードを書き換えろ」の一点張り。

 隣室のドアにカードキーを入れて見せ、9030に入れてもフラッシュしない事を見せて「It's not flash ! There is probrem on this door !」とドアを指さし、かなり気色ばんで説得。ここに至って客室係の女性が自分のカード(たぶん客室が全部開くものか?)を入れてみて、ようやく納得してくれたのか、「マスターを呼んでくる」と言って去る。しばらく待つと同じ女性が帰って来て、愛想笑いを浮かべ、「とんでもないトラブルですね」みたいなことを言う。だが、キーマスターはやっって来ない・・再び女性が様子を見に行って、やっと工具箱片手の男性がやって来て鍵を分解しはじめる。「隣の部屋で待っていてくれ」と言うことで待っていると、呼ばれた。

 ドアのキー部分が骸骨化していてドアが開いている。「さあ早く荷物を取り出して」と言われたので「いや、まだ部屋を使ってない、入ってないのだ」という事を理解してもらうのに時間がかかった。これから使いたいのだから開けるだけでなく、機能を直して使えるようにして欲しい・・という事をやっと理解してもらう。マスターがキーをいじり、カードを貸せという。差してみて、「一枚は書き換えて、こっちは使える」と確認してから、キーのカバーを付けて使ってみせてくれる。「スパシーバ」「パジャールスタ」で去って行く。

 9時40分に乙倉さんの部屋に集合だったが使えるカードが一枚しかないので住吉氏と二人でUS$とルーブルの交換に行く。降りるエレベーターを間違え、一階は内部が繋がっていないようなので一旦、外に出る。ホテルの外を回っていると、車止めを運んでいる警察官のグループに呼び止められて、パスポートの提示を求められる。パスポートはホテルに預けているのでビザ関係を見せたが首を振り、「ホテルカルト」と言われる。部屋番号とか書いてあるホテルのカードを渡すと確認して通してくれた。・・このカードがパスポート代わりになるから大切に、と、後で添乗員さんに教わる・・。乙倉さんたちと合流して集合場所の北玄関に向かう。ようやく添乗員さんと再会。私はレセプションへは行かないと告げる(どうしても風呂に入りたかったのだ)。みんなは直接最初のステージの赤の広場に向かうので、部屋にいれば電話をかけてくれるという。

 部屋に戻る。荷物の整頓をし、着ていた物を洗い、風呂に入る。蛇口を捻るとお湯が暴れ出て湯船以外へ30%以上こぼれる・・タイル貼りのバスルームの床には排水口は無いので、シャワーからお湯をためるようにする。色々工夫してお風呂に浸かった。風呂を出て髭剃り・歯磨きを済ませ、ストレッチなどしているとノックの音がしてルームメイキングのおばちゃんが・・まだベッドは使ってないんだと説明する。タオルを交換してゴミを捨ててくれた。「スパシーボ」「パジャールスタ」・・で、「あれ・・チップって、どうだったのかな?」と気づく。遅いか。
 すぐにヒヨコになれるように用意して、テレビなど見ながら(最初、誰かのいたずらかカラーを絞って白黒になっていて・・え、白黒なのかーっと信じかけてました-笑)、色々チャンネルを換えてラリー番組(英語)を見ていると住吉氏が帰って来る。レセプションで出た食べ物を持ち帰ってくれた。色々展示してある会場であり、お偉いさんも来ていたらしい。戴いてヒヨコ姿になる。

 北受付には太鼓の梱包材が・・みんなは既にホテルから見える赤の広場の特設ステージにいるとのこと。シマウマの着物を着た住吉氏に続いてヒヨコ姿で歩いてゆく。ヒヨコ・シューズで赤の広場を踏みしめることになるとは・・「鉄のカーテン」時代を知る世代としては感慨深いものがある。 
 広場にはフェンスがあって入場者のチェックが厳しい。金属探知器のゲートを通って入らないといけない。今年チェチェン武装勢力がコンサートで爆弾テロを起こしているし、仕方ないことではあるのだろうが・・。ゲートの中へ楽器を運ぶ。どうやら、ここは各国の民族音楽のステージのようだ。飲む物が欲しくて通訳のロシア人女性に頼んだら、付いてこいと言うことで売店が並ぶところに向かう。何かドリンクでも買おうと思ったのだが、水をコップにもらった。待つ間、部屋から動けず、水道の水は飲めないので喉が乾いていて、とても助かった。「スパシーボ」。日本舞踊の会から、沖縄出身者を中心にした名古屋の学生エイサー(持って踊りながら片手で叩く太鼓の芸能)グループに続いて、beZen鼓空の出番がやってくる。 ステージの様子
 最初は鼓空さんだけの演奏。近年はアクションがついて見た目にも迫力を増した演奏が続き、観客の耳目を惹き付けているのがわかる。「清流」、「花」、「渓谷鼓」と続く間、我々ダンサー三人は舞台上のスペースが狭いので広場に降りて踊ろうと、舞台脇で待っていたが、民族衣装を着けた出演者の一人と見える中央アジアっぽい女性を始め、次々と記念撮影をせがまれて応じる。我々のビジュアルが魅力的ってことかな?(珍しいだけかな?)登場ぎりぎりまで撮っていて、座長とかは内心ピリピリしてたみたいだが、小さな女の子のキラキラした眼とか見ると断れないのだ。「舞」の前の曲の最後で出ていく二人。ぴよ吉もお客様盛り上げにリズム拍手誘導に走る。
 ぴよ吉は「舞」では応援だけと決めていたのだが、結構踊ってしまった・・場の雰囲気に乗せられたか・・「仲間」の後半はしんどいのを誤魔化しつつ頑張る・・さて、結果から言えばここでのステージは大成功。有料イベントで入場にも時間がかかるしで直接の観客こそ数百人規模だと思うが、「仲間」を終えた時の拍手と歓声は凄かった。挨拶して引っ込んだ後も写真撮影を求めるファンや、「良かった!」と楽屋に感動を伝えに来る方しきり。その割に"踊る"人が少数だったのは国民性か、人の集まる場所で勝手に個人の興奮を表現する事が社会主義下でタブーだったのか?その辺はよくわからないのだが・・ただ拍手とキラキラした顔を見ると本当に喜んでくれているのはわかった。スパシーボ!

 ロシアの人は素直なので、鼓空さんや秘宝のポピュラリティが大いにアピールしたようだ。最初のステージが成功で、ぴよ吉も浮き浮きと足が地に着かないくらい嬉しい気分。次のステージへ向かうバスへと楽器を運ぶ際にも、「あっ!ひよこ!」と目に留めてくれた人々に色々とマイムのサービスをしてニッコリしてもらう。笑い声もあがったし、バスの窓から手を振っても振り返してくれる・・ぴよ吉上々の(?)モスクワ・デビュー♪
 バスがぐるっと遠回りして着いたのは、ボリショイ劇場やマールイ劇場に面した劇場広場。ここのステージは赤の広場のステージのような屋根は無い代わりに大型スクリーンに舞台の様子を映し出している。広場も広いし観客も多い(約1万人いたという情報も)。なかなかゴージャスな舞台だ。私たちが着いた時には知らない顔の日本人ミュージシャンがバンドを連れて「イエスタデイ」や「ホテル・カリフォルニア」などを混ぜて演奏していた(帰国してから元ブルーム・オブ・ユースの片方の人だと知った)。どうも彼が時間を"押した"のではないかと疑える節があるのだが、エイサーがやっている間に"10分"と聞いていた鼓空の演奏時間短縮交渉がある。「市長が来るから、その時間は動かせない」という事らしい。1曲5分「仲間」のみの演奏となったが精一杯弾ける私たち。ステージの様子
 結構は盛り上がる・・だが、やっぱり1曲では辛いかな。大観衆の拍手の中にも「えー、もう終わっちゃうのぉー」という反応が感じられた。我々が去った後の舞台には市長の登場を盛り上げる下半身スパッツ姿のフラッグ・ショーの娘さんたちが・・住吉氏が耳元で「モスクワ市長の歓び組」とささやく。確かに綺麗な女性は多かったけどね。

右の写真はぴよ吉では無いのだがモスクワの画像検索で出てきたもの・・シンクロニシティ!
 そばかすだらけの小さな男の子が盛んに鼓空のさゆりさんに話しかけてくる。言葉はわからないが興奮した様子。ここでも反応は良かった。雨が降りかけたが、みんなの普段の心がけが良かったのか止んでくれる。タイコ類をカバーに詰めてマールイ劇場の舞台裏まで運んでおく。古めかしいが良い感じの劇場。リハーサルまでに一旦ホテルへ帰る。途中、小さな男の子に何か話しかけられる。「Please English」と言ってみると「Little Chicken?」と聞いてきた。「Yes、Little chicken」とぴよぴよ鳴いてみせたら、「チピチピチピ」と、ロシアのヒヨコの鳴き声を教えてくれた。部屋に帰って、ぴよ吉の下半身を支える首ひもの所を洗って干しておく。

 みんなで夕食を食べてから劇場リハに向かおうと言うことになり、ぴよ吉を詰めたトランクを牽いて参加するが21Fのレストランは値段が高くて断念。劇場への途中に何かあるだろうと向かうが、どうも無さそうなので屋台でパンとミネラル・ウォーター(炭酸入り・・ロシアはほとんどこれだった)を買う。
 マールイ劇場の楽屋へ。座頭とかの一人用個室かなと思われる部屋に秘宝の二人と入る。小さなベッドと椅子が2つ。ドレッサーが一つ。着替えて舞台へ向かう。リハではシンセの調子がおかしくなって原因究明と解決に時間がかかった。とりあえずロシアの方に別のシンセを貸してもらい、それでリハをすることに。 リハの様子
 楽器の人もだろうけど、さすがにかなり疲れたダンサーたち。ぴよ吉も花子の前垂れを踏んでしまったり、後半は相当バテていた。何とかリハ終了。ホテルに帰る。リハでうまくいかなかった所については、明朝、動線を変えることにして22時過ぎには休む・・というか寝てしまう。途中、目が覚めて、音を立てないようにお風呂に入ってまた寝る。何時間起きて頑張っていたのだろう・・かなり疲れの極に。
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