オーケストラ・アンサンブル金沢1000 第1期
レスピーギ;ルーセル;ビゼー

レスピーギ/組曲「鳥」
ルーセル/小管弦楽のためのコンセール,op.34
ビゼー/交響曲第1番ハ長調
●演奏
ジャン=ピエール・ヴァレーズ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
●録音/2002年6月26〜28日,石川県立音楽堂コンサートホール  \1000(税抜)

オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)1000第1期の中の1枚。OEKの前のプリンシパル・ゲスト・コンダクター,ジャン=ピエール・ヴァレーズ指揮によるラテン系の作曲家の作品を集めたCDである。このCDに収められた曲は,すべて2002年6月28日の第123回定期公演で演奏された曲なので,文字通り演奏会のライブとなる1枚である(ただし,定期公演での演奏順は,ルーセル,レスピーギ,ビゼーだった)。

最初のレスピーギの「鳥」は,親しみやすい曲の割に意外に演奏会で取り上げられない曲である。小編成のオーケストラ向けの曲なので,OEKに最適である。オーケストラの各楽器がソロで活躍する部分が多く,非常に色彩感豊かに演奏されている。前奏曲の後,鳩−めんどり−ナイチンゲール−かっこうと続く辺りは管楽器やチェレスタの響きを中心にリラックスした明るい音の世界を楽しむことができる。最後に前奏曲のメロディが優雅に戻ってくるのも大変まとまりが良い。

続く,ルーセルの曲はレコーディング自体も少ない曲であるが,OEKは過去にロジェ・ブトリー指揮でも演奏している。こちらはラテン系のイメージからすると,ちょっと渋い感じがする。古典的なバランスの良い3楽章構成の中に現代的な雰囲気が漂っているので,この曲もOEKにはよく合っている。第1楽章ではかなりたくましく野性的な音を聞くことができるが,「鳥」同様,管楽器を中心とした各楽器がソリスティックに活躍し,彩りを添えている。第2楽章も静謐な中にフルートを中心に管楽器が活躍する。演奏会を生で聞いた時は,あまり印象に残らなかったがCDで改めて聞いてみると大変深い味わいを持っている。第3楽章は,再度躍動感のあるリズムが戻ってくる。弦楽器で演奏される優しいメロディの響きも瑞々しい。この曲は,インパクトの強さはないが,OEKの各楽器の音を楽しむにはなかなか良い曲かもしれない。

最後のビゼーの交響曲はOEKの十八番といっても良い曲である。過去,定期公演でも何度も演奏されて来た。ヴァレーズの指揮は,オーケストラの響きを求心的にまとめようとするよりも自発的に開放するようなところがあるので,この曲の魅力がのびやかに伝わってくる。第1楽章は,生で聞いた時は何となく重い雰囲気に感じたのだが,家の中で落ち着いた気分で聞くには,ちょうど良い。それほど変わったことをしているわけではなく,軽やかな弦の響きを中心に穏やかな表情を楽しめる。

この曲は第2楽章のオーボエのソロが大きな聞き所である。このCDでは加納さんの,伸びやか,かつ抑制の効いた美しい音色を堪能できる。この部分を聞くだけでもこのCDを買う価値はあるだろう。その後に続く楽器のやり取りも,スムーズである。透明感を保ちながら次第に熱気を帯びてくる弦の美しさも素晴らしい。これはライブ録音ならではの魅力だろう。

第3楽章から第4楽章にかけてはウキウキとした観光旅行をするような気分がある。そういう気分をちょっと抑えながらも,響きの奥から楽しい気分が盛り上がってくるような見事な演奏になっている。しっかりと演奏されているのだが,堅苦しくならないのが,ヴァレーズ指揮OEKの魅力である。3楽章の柔らかな包まれる雰囲気も良いし,4楽章の軽やかな運動性も楽しい。特に第4楽章は速すぎず遅すぎず,というテンポ感で,弦の美しさが最適の状態で出ている。

ヴァレーズは,ヴァイオリニストとしても有名だが,指揮者としての国内盤CDはほとんどないようである。OEKの客演指揮者としてフランス音楽を中心に指揮してきたヴァレーズの業績を集約したような1枚と言える。

■録音データ
すべて2002年6月28日の定期公演で演奏された曲である。録音データによると複数の日付が書いてあるので,ゲネプロでの演奏も使用していると思われる。コンサート・ミストレスはアビゲール・ヤングだった。なお,この日は児玉桃のピアノ独奏によるラヴェルのピアノ協奏曲も演奏された。この演奏のCD化も期待したい。

■参考ページ
オーケストラ・アンサンブル金沢第123回定期公演PH(2003/06/28)
(2003/04/12)