ハイドン・フンメル・タルティーニ・テレマン トランペット協奏曲集

ハイドン/トランペット協奏曲変ホ長調 Hob.VIIe:1
フンメル/トランペット協奏曲ホ長調 WoO 1,S49
タルティーニ/トランペット協奏曲ニ長調
テレマン/トランペット協奏曲ニ長調
●演奏
ルベン・シメオ(トランペット)
ケン・シェ指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
●録音/2008年7月6,7日 石川県立音楽堂コンサートホール
●発売/Avex(2010年3月17日発売) \3,000(税込)) 

Avexから出ている,オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)と「若いアーティストとの共演」シリーズの1枚。スペインの注目の若手トランペット奏者,ルベン・シメオとOEKが共演したこのアルバムでは,ハイドンとフンメルというトランペットのための定番協奏曲を中心に,バロックから古典派時代の作品がまとめられている。

シメオは,非常に高い技巧を持っているが,メカニカルな冷たさを感じさせるところがなく,CD全体が健康的で自然光の明るさと言っても良い,心地よい響きに包まれている。曲のテンポ設定も自然で,恣意的な部分はない。緩徐楽章での抑制された音と夢見るような気分,決して慌てることなく,技巧を鮮やかに聞かせると終楽章と楽章間のバランスもとても良い。

その中で,ハイドンとフンメルのカデンツァは,かなり個性的である。輝きのある音をたっぷり聞かせてくれるが,そのクライマックスの部分で,馬のいななきを思わせるような超高音を使っている。ちょっとユーモラスな味もある。ただし,どの曲もこのパターンなのは,少々しつこい気がする。

ハイドンとフンメルの両曲では,ハイドンの方がやや大人しい印象を与える。フンメルの方は,最終楽章でのキレの良い躍動感など,OEKともども若々しさをしっかりと感じさせてくれる。音楽する楽しみがストレートに伝わって来る快演である。

アルバム後半に収録されているタルティーニとテレマンの曲は,ピッコロ・トランペットを使っているようで,いかにもバロック音楽的な祝祭的な気分がある。ただし,ここでも堅く甲高い音ではなく,まろやかな温かみのある音を聞かせてくれる。どちらも,非常にきっちりと演奏されており,曲全体がとても清潔に仕上がっているのも気持ち良い。

●録音
このアルバムの発売とほぼ同じ時期に,シメオが登場した定期公演が行われた。これまで,OEKは定期公演をライブ収録する形が多かったので,OEKにとっては,珍しいケースと言える。
(2010/06/19)