シューベルト,鈴木行一編曲/歌曲集「冬の旅」全曲 D.911(バリトンと管弦楽のための)

指揮/岩城宏之 独唱/ヘルマン・プライ(Br)
●発売/(財)石川県音楽文化振興事業団(1997.12.6)
●OEK-1001 ¥2,800(税込)<ライヴ録音>
●録音/ミュンヘン・プリンツレゲンテン劇場(1997.10.7)

多分,ヘルマン・プライの遺作になったCD(他のレーベルから晩年出ていないと思う)。OEKが1997年にヨーロッパに演奏旅行に出かけてきたときミュンヘンで行われた演奏会をライブで収録したものである。

通常はピアノ伴奏で歌われる歌曲をオーケストラ伴奏用に編曲したもので歌うのがプライは好きなようで,かなり以前にもそういう録音をしているが,「冬の旅」については初めての録音になる。編曲は鈴木行一。ピアノ伴奏よりも当然色彩感が増し,描写がより具体的になっている。雰囲気としては,マーラーのオーケストラ伴奏による歌曲集を聞いているような印象である。特に最後の「辻音楽師」のあたりは不健康さが雰囲気が漂っており,シューベルトからマーラーへの伝統のつながりを感じさせる。

プライは,年齢のせいか非常に暗く重い感じの声になっている。最善のコンディションでないとは思うが,誠実な歌は心に響くものがある。