ロンドン・エッセイ:イギリス・ギター・ストーリー
1)スコットランド民謡(大島ミチル編曲)/アメイジング・グレイス
2)フランチェスコ・サルトーリ(大島ミチル編曲)/タイム・トゥ・セイ・グッバイ
3)エルトン・ジョン(大島ミチル編曲)/ユア・ソング
4)レッド・ツェッペリン(大島ミチル編曲)/天国への階段
5)イングランド民謡(大島ミチル編曲)/グリーンスリープス
6)ラルフ・マクテル(江部賢一編曲)ロンドンの街々
7)アラン・クレア(ジョン・ウィリアムズ,江部賢一編曲)/ホランド・パーク
8)イングランド民謡(千代正行編曲)/スカボロー・フェア
9)スコットランド民謡(スコット・テナント編曲)/ワイルド・マウンテン・タイム
10)ジョン・デュアート/イギリス組曲(前奏曲,フォークソング,円舞)
11)アイルランド民謡(武満徹編曲)/ロンドンデリーの歌
●演奏
木村大(ギター),木村祐(ギター*6〜8)
小松長生指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(1,2,5)
大島ミチル指揮加藤JOEストリングス(3,4)
●録音/2006年7月17日石川県立音楽堂コンサートホール(1,2,5);2006年8月10日ソニー・ミュージックスタジオ(3,4);2006年8月1,2日坂東市民音楽ホール(6-8)
●発売/SONY SICC-10040(2006年9月20日発売) \3,045(税込)

若手ギタリスト木村大の通算5枚目となるアルバム。木村は2002年春から2年間,イギリスの英国王立音楽院に留学したが,その思い出をギターで表現するという意図を込めて「ロンドン・エッセイ」というタイトルが付けられている。演奏されている曲はイギリス民謡を含む「イギリスらしい曲」ばかりとなっている。オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)はこの中の3曲に伴奏として参加している。

アルバムの構成は,オーケストラの伴奏付きの曲→ギター・デュオの曲→ギター独奏曲という配列となっており,聞き進むにつれて,親密に聞き手に語りかけて来るような気分になる。収録されている曲には,エルトン・ジョン,レッド・ツェッペリンの曲など,いわゆるクラシック音楽以外の作品も含まれているが,「イギリス」というキーワードでまとめられていることもあり,全く違和感なくまとめられている。

OEK以外では,編曲者の大島ミチル指揮の弦楽オーケストラも参加しているが,どちらも音量の大きくないアコースティック・ギターの伴奏ということで,とても控えめな演奏となっている。OEKが伴奏している曲は,いずれも大島ミチルが編曲を行っているが,静かでクールな気品を伝えるもので,イギリス・アルバムの雰囲気に相応しい。

中盤では,木村大の弟の木村祐と共演した演奏が収録されているがこれも素晴らしい。ギター2本の音の繊細の絡まりあいがとても心地よい。響きが豊かになることで,ハープの演奏を聞いているような豪華な気分も作っている。

木村の演奏については,超絶技巧で激しい情熱的な演奏をする人という先入観を持っていたが,このアルバムの印象は全く違うものだった。深々とした静かな響きによって,聞き手に語り掛けてくるような音楽は,ロンドンでの生活が反映していると言える。木村の新しい境地を開くアルバムと言える。(2007/02/25)