金沢の四季彩景:ハイビジョン映像とアンサンブル金沢で綴る
【春】
1)モーツァルト/ディヴェルティメント第17番ニ長調K334よりメヌエット〜石川門、金沢城、犀川、浅野川、主計町、前田利家像
2)ハイドン/弦楽四重奏曲ヘ長調作品3の5《セレナード》〜兼六園、歴史博物館、辰巳用水、中央公園
【夏】
3)モーツァルト:アイネ・クライネ・ナハトムジーク ト長調K525より第1楽章〜金沢城、東茶屋街、金沢の家々、梅の橋、三十間長屋、大手堀
4)斎藤高順:今様〜能面、能楽堂、森の吟醸蔵・白山、前田利家像、西別院
【秋】
5)マスネ:タイスの瞑想曲〜歌劇《タイス》より〜金沢市夕景
6)チャイコフスキー:弦楽四重奏曲第1番ニ長調作品11より第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」〜兼六園、夕顔亭、東茶屋街(志摩家)、尾山神社、玉泉園
【冬】
7)グリーク:劇音楽《ペール・ギュント》第2組曲作品55より「ソルヴェイグの歌」〜金沢城、長町武家屋敷、大野庄用水、雪の金沢の家々
8)J・S・バッハ:管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068より「アリア」〜雪の兼六園
9)清水目千加子:幻想天女〜浅野川、友禅流し、友禅作家、金沢市全景
【エピローグ】
10)モーツァルト:交響曲第40番ト短調K550より第2楽章:アンダンテ〜石川県立音楽堂紹介

●演奏:岩城宏之指揮オーケストラ・アンサンブル金沢
●企画・製作・発売元:ヤマチク,●制作:ビクター・エンタテインメント
●特別協力:高桑美術印刷,●協力:石川県音楽文化振興事業団,ビデオテック,小堀酒造,日本信販
●発売元:パイオニアLDC PIBB-7001 \3,200(税抜)

金沢の名所の四季の映像にオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の演奏を乗せた,「金沢版名曲アルバム」といった趣きのあるDVDである。OEKはこれまで10枚以上CDを出してきたが,DVDを発売したのは今回が初めてである。ただし,ここで使われている演奏は,これまでビクターから発売されてきたCDと同じものである。エピローグに,OEKが演奏している光景が少しだけ登場するが,OEKが映像として登場した初めてのソフトということになる。

何といっても映像が非常にゴージャスである。ほぼ金沢の名所が網羅されており(近江町市場,忍者寺,天徳院あたりが入っていないが),「豪華絵ハガキ」をゆったりと眺めるような趣きがある。実際,派手な動きが少ないので,非常に上品な仕上がりになっている。ハイビジョン映像は,本当に美しく(実際よりも綺麗?),飽きの来ない質の高さがある。

この映像を見ていると,金沢は水と緑の変化が非常に多い街だということがよくわかる。それに四季の変化が加わり,典型的な日本の美が勢揃いしている。金沢という街の美しさが凝縮されているので,金沢の土産・プレゼントにも最適だろう(問題は相手がDVDプレーヤーを持っているかどうかか?)。

「秋」の最初の方に岩城音楽監督の指揮ぶりが,最後に少し音楽堂とOEKの映像が入るが,あくまでも映像主体に作ってあるのが良い。映像の持つ力をOEKの演奏が引き立てているといった作りになっている。ナレーションも全く入らないので,BGM的に流しておいても良いし(音楽堂のモニター辺りで流しておいてもよさそう),美しい映像を見て,ボーッとするのも良いだろう。

音楽の内容については,これまでに発売されているものなので,改めて言うことはないが,選曲が見事で,どれも,四季折々の光景に非常によくマッチしている。個人的に特に気に入っているのは,長町武家屋敷と用水を映した「冬」である。このDVDでは,全体に明るく晴れた映像が多いが,ひねくれものの私は,天候の悪い「金沢らしい」映像を見ると,妙に落ち着く。「ソルヴェイグの歌」の落ち着きも映像にピッタリである。

もう一つ,気に入ったのは,清水目千加子の作曲した「幻想天女」である。この曲自体,元々金沢をイメージして作曲された曲なので,映像に合っていて当然なのだが,今後,これと同じパターンで,金沢をイメージしたオリジナル曲が出てこないかな,という期待が出てくる(例えば,「すでにある映像に曲を付ける」といった企画はできないだろうか?)。

見終わって,「味覚編」「祭り編」「伝統工芸編」「加賀・能登編」などいろいろ切り口で続編が作ることができるのではないかと感じた。石川県はそれだけ見所が豊富な県だと思う。(2002/8/18)