ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ,ロマンス op.40,op.50

指揮/岩城宏之 独奏/マイケル・ダウス(ヴァイオリン)
●発売/ソニー・ミュージック・エンタテイメント(1993.9.22)
●SONY RECORDS SRCR 9331 ¥2,718(税抜)
●録音/富山県・小杉町文化ホール ラポール(1993.6.11-12)

この曲は,独奏ヴァイオリンが出てくるまでに時間のかかる曲だが,その序奏部分からして,「良い雰囲気」が漂っている。独奏,オーケストラ共に非常に誠実に演奏されており,OEKらしさが良く出たCDとなっている。ソロと木管楽器,弦楽器とのバランスも良く,全体に暖かくまとまった雰囲気がある。

岩城の指揮,ダウスの独奏は,共に変わったことをしているわけではなく,名曲をしっかりと演奏しようという謙虚な姿勢が貫かれている。ダウスの音はとても艶やかで見事だが,1人だけ突出することはなく,全体とのバランスを崩すところがないのは,コンサート・マスターらしさだと思う。ダウスの美音は協奏曲の第2楽章やロマンスで堪能できる。美音に酔ってもたれたようにならないのが良い。ところどころ,ビシビシという感じで,音を短く切るように演奏するのは,質実剛健な感じがしてベートーヴェンらしい。ただ,ティンパニの音はもっと鮮明に聞こえる方が私は好きである。カデンツァはいちばん一般的なクライスラーのものが使われている。