21世紀へのメッセージ Vol.4
武満 徹/弦楽のためのレクイエム(1957)
武満 徹/地平線のドーリア(1966)
武満 徹/ノスタルジア(1987)−アンドレイ・タルコフスキーの追憶に
武満 徹/ファンタズマ/カントスU(1994)
武満 徹/ハウ・スロー・ザ・ウィンド(1991)

指揮/岩城宏之独奏/堀 正文(Vn)クリスティアン・リンドバーグ(Tb)
●発売/ポリドール株式会社(1997.9.26)
●DeutscheGrammophon POCG-10053 ¥2,718
●録音/石川県・根上町総合文化会館 タント(1996.9)

岩城は,恐らく,いちばん早い時期から武満の作品をレコーディングしてきた指揮者であるが,OEKと録音したこのCDは武満の追悼盤になってしまった。「21世紀へのメッセージ」シリーズではVOl.1〜3でいろいろな作曲家の新作を取り上げた後,コンポーザー・イン・レジデンスだった武満による新作を含めたアルバムで締める予定だったが,その予定が狂った形になる。収録された曲は,最初期のレクイエム,1960年代の地平線のドーリア以外は,晩年の曲が中心になっている。

レクイエムは,現代音楽としては例外的に頻繁に演奏される曲なので,すっかり古典として定着している。岩城/OEKの演奏も落ち着き払った立派な演奏だと思う。地平線のドーリアは,作曲された時代のせいか,この5曲の中ではいちばん前衛的な響きがする。それでも実演でも聴いたせいか,意外に耳になじんで来る。ノスタルジアは,岩城はメルボルン交響楽団,マイケル・ダウスとともに1990年頃にも録音している。一種のヴァイオリン協奏曲だが,副題にもあるとおり映画監督のタルコフスキーを追悼して作られたものなので,レクイエムと似た雰囲気もある。ファンタズマ/カントスIIは,IIとなっているとおり,Iもある。Iの方は(正確には,ただの「ファンタズマ/カントス」),クラリネット独奏版で,IIはトロンボーン独奏版となっている。リンドバーグの大らかで美しい音を聴いていると,すっかり良い気持ちになる。ハウ・スロー・ザ・ウィンドは,エミリー・ディキンソンという詩人の詩にインスパイアされて作られた作品である。微妙な色合いの変化が非常に美しい。武満の作品は,どれもタイトルが格好良い。