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“LUGER SEAGULL”最新インタビュー!!
Text : Keishi Kawakami
「テクニック云々ではないことをやりつつ、でも俺らにしかできないことはなんだ?ってところから、まず始まったんですよ」(向達郎)という言葉通り、今回の2ndアルバムはメタリックでキャッチーなリフと叙情的な歌のメロディが拮抗する驚くべき作品となった。比類なき個性を確立するに至った『LUGER SEAGULL』の一筋縄ではいかない世界観を解き明かすヒントを向達郎に訊いた

Q:前のアルバムが変拍子の嵐だったのに対し、今回は速い2ビートや4つ打ちのビートが特徴的な、リフを主体とした作りですよね。曲を作る上ではどちらの方が難しいんでしょうか?
向達郎:今回の方が超難産でしたからね。実はこっちの方が超変拍子なんですよ。やっぱりサラッとしてる分、解りづらいところがあると思うんですけど、前のと比べたら、実はこっちの方が百倍くらい難しいくらいなんですよね。で、なぜそう聞こえないのかっていったら、4つ打ちが助けてくれてたり、2ビートが助けてくれてたり、あとヴォーカルでそう聞こえないようにしてたりとかしてる部分があるから、そう聞こえないだけであって、実は今回の方がもっと複雑であって、もっと緻密であって。たぶん、それは楽器をやってる人が聴いたら、そういう風に聞こえるかもしれないですね。前作と聴き比べると“今回の方がすごいな”みたいなところはあるかもしれないですね。俺は楽器をやってないから、難しい用語とかよく分かんないし、でも俺が聴いてもそう思ってるくらいだから、楽器やってる人はそう感じると思います。

Q:ギターの音色やフレーズも含めてですが、前のアルバムではもっと乾いた音のアルペジオやカッティングなど、インディ・ロック的な音使いが印象的でしたが、今回はメタリックな感触になってるのも一つの変化ですね。それはやはりリフというところに関連してるんでしょうか?
向達郎:そうですね。ズゴンと行きたい感じがありましたね。1stを作り終えた後に俺とか嶌田でメタリックなものが流行ってて。今回のアルバムでリフものを作るって時に、ヒントになるものを探そうと思ったんですよ。でも普通のものを皆に聴かせても、たぶんピンとこないだろうから、メシュガーを聴いてもらったんですね。そしたら皆、やっぱり普通に音楽好きなんで、食い付くんですよ。“これなんだろうね!?”みたいな。そこからまず発展していきました。あれはいいヒントになりましたね

Q:たしかに、よく聴くと2ビートでも変な拍子だったりするんだけど、違和感みたいなものはない印象ですね。歌と演奏が有機的に絡んできたということもあるんでしょうか?
向達郎:今でも、ああいったバックなんで、歌は作りにくいんですけど(笑)、でも前回よりはだいぶ楽になったというか。フックに関しては、やっぱり解りやすくやろうかみたいな感じで、サビ部分はやっぱりサビらしくみたいな感じで皆にお願いしてたんで。だから、その辺は若干解りやすいと思いますね。

Q:前にインタビューした際にメンバーが演奏力があるんだから、それを打ち出そうとしたという話でしたが。
向達郎:演奏力があるというか、やりたいことをやってても、一応形になれるとは思いますけどもね。そこを前に出したいとは思ってはないんですけども。やっぱりバンドっていうのは、まず第一に入ってくるのは歌だと思うんで、その後にギターだったりが耳に入ってくると思うんで。演奏力ってのは、そんなに必要ないと思うんですよね。基本的にはパッションだと思ってるし。

Q:今回、曲がコンパクトになったというのも、リフが主体になったということに関連していますか?
向達郎:そのコンパクトにしたというのは狙いで。前回のが長すぎたってのもあったんですけど(笑)。今回はコンパクトに。で、何度もリピートできるアルバムっていう感じでしたね。

Q:聴く人が歌詞が耳に入っていて覚える感情みたいなものも、前とはちょっと違うんじゃないかという気もしてるんですが。前作がすごく抽象的な部分もあったり、情景が見えないようなところもあったのが、今回はかなり情景を描写してるような感覚もあると思うんです。それがちょっと悲壮感があるような情景だったりするのかなと思ったんですが。その辺は文字通りとっちゃっていいものなんですか?
向達郎:それはもう、聴いた方にお任せするんで、どう捉えられても、俺はけっこうですね。“これはどういうことを歌ってるんだ!?”とか“どういう意味があるんだろう!?”とか、それはその方が考えたのが、たぶんその方の正解だろうし。俺の中での正解ってのはもちろんあるけれども、でも、それを言ったところで、たぶん誰も解ってくれないし。それは聴いた方にお任せします。

Q:メンバーには説明したりはするんですか?
向達郎:いや、しないですね。だってメンバーも基本的には他人ですんで。だから、それは家族であれ、俺以外の人間にはまったく解らないことだから。それを共有したいとも俺は思ってないし。

Q:パーソナルなものであるということですね。

向達郎:ええ、そうですね。

Q:共有すること自体を拒絶してるということもあるんですか?

向達郎:いや、そういう訳でもないですよ。

Q:例えば、もっと“一緒にいこうぜ”みたいなポジティヴな歌詞が世にある一方で、そうでない方向を選んでるという感じでしょうか?
向達郎:いや、その“一緒に行こう”ってのも、別に本当はそうは思ってないかもしれないし。それは皆さんにお好きなように考えていただいてけっこうです。

Q:でも、曲から歌詞が導き出されると思うんですが、いわゆる“マイナー調のメロディだから切ない歌詞で”という風な単純な当てはめ作業ではないですよね。その辺も注意して聴いた方がよさそうですね。

向達郎:いやぁ、普通に聴いていただいて全然大丈夫です(笑)。

Q:前は幻想的という感じもあったと思うんですが、今回は特に歌詞が生々しい感じがしたんですが。

向達郎:あんまり意識してなかったんですけど、前と比べると、そういうのが出ちゃったんですかね。考えてみると、今回は本当にありそうな感じなんですかね(笑)。一応話になってますからね。

Q:言わんとしてることが具体的になったのかなとも思ったんですが。
向達郎:うーん、そうなんですかね。でも、スタンスはあんまり変わってないですけどね。言えてるのは、嫌いな言葉を使っちゃいないですね。

Q:でも、今回は聴いた人が口ずさめる感じではありますね。
向達郎:そうですね。やっぱサビがだいぶ効いてる感じだから。

Q:そこで聴いてる人も、更にどういうことを歌ってるのか注意するようになると思うんですよね。そういう曲の聴かれ方、感じられ方というのはOKなんでしょうか。
向達郎:それは、もちろん。それはその人の所有物になってるんであれば、どう思われてもいいですね。

Q:そういう形って広がりに繋がると思います?
向達郎:どうなんですかねぇ。でも、あんまり実感はしたことないですけどね。そこまでよく考えてないんで、難しいですけど(笑)。どうなんですかね、広がりって。何なんですかね。

Q:作った意図通りに作用したり、思わぬ形で作用したりってことなんでしょうね。
向達郎:そうなんですかね。まぁ、それが良い方向に行ったらいいんですけどね(笑)。■■