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ベルリンへの誘い
 
 
                          
                     
(9)待機
 
  移植といえば、拒否反応というのが問題になる。拒否反応というのは、他人の臓器が体に入った場合
 
異物として反応してしまい、免疫力が働いて攻撃してしまうことを言うのだそうだ。だから免疫力をなくして
 
移植する。すると当然菌に感染しやすく、体内に今持っている菌も排除しておかなくてはならない。
 
悪い歯を3本も抜かれてしまった。歯の治療などとのんきなことはする暇はない。
 
 
一週間で検査が終わり、予定通り「頑張ってください」という言葉をのこし、樫田先生が帰ってしまいさびしく
 
なった。女房はゲストハウスを出て下宿に移った。朝早くから病室に来て、私の世話や整理をして買い物に
 
でかけ、昼には帰ってきて一緒に昼食をとり、7時ごろまでウダウダと時間をつぶし帰っていく。ドイツはコーラより
 
ビールの方が安いと、のん兵衛の女房が喜んでる。
 
病院の食事はいまいちで、10cm四方の小さな食パンが二枚出てきた。案外量が少ないと思ったら大間違い。
 
すごい密というか重く一枚で満腹。それも肝臓食のパンで、ロウソクをかじっているようだ。米を買い粥を作り、
 
持ってきた塩こぶやうめぼしでしのいだ。まあ病院食なんてその国の一番まずい食事であるのは万国共通だ。
 
うれしいことにスタッフはすごく親切で、すごく気を遣ってくれる。
 
阿曽先生に教えてもらったのか。
 
   「ショウゾウ、ゲンキ?」
 
などと話しかけてくれる。
 
   「ツギハ、イタリヤヌキヨ!」
 
今度戦争するときはイタリヤ抜きでやろうと言っている。問題はあるが友好のジョークだ、
 
薄い座布団一枚贈呈。
 
掃除のおばさんが孫の写真を見せたり、いろいろ話しかけてくれる。食べ物に苦労しているのを知って、大きな
 
皿に山盛りのサラダを作ってくれた。オリーブオイルがギトギトで一口で降参、女房は喜んで食べていた。
 
それでもこの状況での人情が腹にしみる。
 
阿曽先生はよく顔を見せてくれ、いろんなことを教えていただいた。肝臓移植のことはもちろん、病院のこと
 
ノイハウス先生のこと、ベルリンのこと・・・・・・。勉強に来ているというより、スタッフに溶け込みドイツでの生活を
 
心から楽しんでいるように見える。
 
 
  待つ身はつらい!
 
どれくらい待てばいいのだろうか。でも非常に気を遣わなければならない状況であることを自覚しないといけない。
 
人の死を待っているのだ、しかもドイツにも沢山の移植を待っている人がいて、そこによそ者が割り込んでいるわけで
 
息をこらして待つしかない。
 
  でも、待つ身はつらい!
 
 
入院して一ヶ月が過ぎた。今日の昼食はいちばん美味いチキンだ。一切れ口に入れたとき、幾分緊張した面持ちで
 
スタッフが入ってきた。
 
   「ミスターイソダ〜〜〜〜〜ストップ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
 
   「リバーチェンジ オペレーション?」
 
 


      
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