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ベルリンへの誘い
 
 
                          
                        (8)ベルリンへ
 
 
 出発は市民病院に入院したまま、早朝点滴して出発する。伊丹空港に身内と友人が20人ほど
 
見送りに来てくれた。皆でお茶をしたまではよかったが、そのあと、つらい経験をした。
 
時間が来てゲートをくぐり、見送りの人々に一礼し、二人の子供たちの顔をしっかり目に焼き付けよう
 
とした。高校生の姉は泣いている、息子は怖い顔で私をにらんでいる。
 
もう二度とこの子供たちの顔を見れないかもしれない・・・・・・。
 
手を振り、背を向けて飛行機に向かって歩き始めた時、熱いものが目からあふれ出し、頬をつたいだした。
 
後姿でも悟られそうで拭えず、顎からしたたりおちる。
 
 
飛行機に乗ってからは、タオルをアイマスクのように目にあてて寝たふりをしていた。
 
   「せんせい、もし、あかんかったら、すぐにつれてかえってください。やっぱり、こどものかお
 
    みながらしにたいです」
 
   「・・・・・・・・」
 
 
成田で国際線に乗り換え、機内で一度点滴をして、フランクフルト空港へ.。
 
いよいよドイツだ、この空港は巨大な空港で国内線に乗り換えるにはかなり歩かなければならないが、
 
旅行社が言ってくれたのか車椅子が用意されていた。東西ドイツの壁が崩壊して4年しかたっておらず、
 
治安が悪いらしい、マシンガンをかかげ引き金に指をかけたまま警察官が二人一組で巡回しているのは
 
凄みがあり驚かされた。そしてルフトハンザに乗り換えベルリンのテーゲル空港へ。
 
 
 夜のベルリンは雪だった。はじめての海外旅行の私にはまるで洋画のシーンに迷いこんだようだ。
 
その夜は予約していたホテルで一泊し、翌朝タクシーで大学病院へ向かった。
 
木々の生い茂った広大な敷地に建物が点在し、徒歩で来ていたら迷っただろうが、タクシーが病棟の
 
前まで行ってくれた。
 
1階で手続きを済まし7階へ。廊下で樫田先生が看護師らしき女性と何か喋っている。数分すると
 
医者が10人ほどゾロゾロとでてきた。中に一人、日本人らしき人もいる。
 
ボスであるプロフェッサー、ピーター ノイハウス が喋りだし、樫田先生が通訳してくれた。
 
   「遠方からよく来た、日本人のはじめての患者だ、必ず元気になれるから心配するな。
 
    社会復帰できなければ移植手術の意味はない。」
 
なんという自信だろうか。日本人の医者なら不慮のことを考えこうは言わない。こんな大手術、絶対
 
大丈夫なわけはない、患者に安心感を与えるのも治療なのだ。今までの不安はすごく楽になったし、
 
どうやらそんなに低い成功率でもなさそうだ。
 
二人部屋の病室に案内された、片方のベッドはだれもいない。荷物を解き整理していると、あの日本人
 
らしい医師が入ってきた。樫田先生と同年輩と思われる。
 
   「阿曽と言います。北里病院から勉強に来ています。よく来られました、明日から
 
    一週間かけて体中の検査をして移植できるかどうかを調べますが、日本からの
 
    資料を見るとおそらく大丈夫です。それが済むと普通は外で待機して、ドナーが
 
    でるのを待つのですが、磯田さんは状態が悪いので入院したまま待つことになる
 
    でしょう。樫田先生と奥様は病院のゲストハウスで泊まってください。奥様には
 
    後ほど妻を紹介しますのでベルリンでの生活のことなどなんでも聞いてください、
 
    お役に立てると思います。私も時間の許すかぎりここに来ます。必要なドイツ語の
 
    単語もメモにしておきます」
 
   「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
 
地獄に仏とはこのことだ、見知らぬ国の見知らぬ土地で ・・・ あっ、そうか、なーるほど、やっとわかった。
 
阿曽先生の人柄が素晴らしいからこそ日本人に好意を持ち、私を受け入れてくれたにちがいない。
 
出会う人、出会う人、どうしてこんなに素晴らしい人ばかりなんだろうか。
 
 


      
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