当店のパラゴンの図面etc


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ベルリンへの誘い
 
 
                          
(5)宣告
 
 パラゴンがきた、予想にたがわずひどい音だ。一応マッキントッシュのC20とMC30というアンプの名機で
 
鳴らしてはみたが、泥水の中で音楽が鳴っているようだ。このアンプ確かに名機なのだろうが程度がすこぶる
 
悪い。さかさまにすると間違いなく2,3本の真空管は抜け落ちるだろうし、マッキンの特徴であるガラスの
 
パネルもお化け屋敷の窓のようにボゥ〜ッとくすんでいる。でも私の体もボロボロだ、ちょうど良いのかも知れない。
 
週一回だった点滴が増えている。点滴をしないと脳に障害がでる。肝性脳症というが、肝臓で浄化されない
 
血が脳にまわり異常な行動をしたり意識がなくなったりする。私はそれに対してすごく敏感で、たとえ夜中で
 
あっても予兆を感じ、すぐに病院に直行し点滴することができた。これには樫田先生も関心していた。
 
 
樫田先生の綿密な治療でも肝硬変は少しづつ進行していく、点滴の回数も増え静脈瘤破裂から5年も
 
過ぎると、盆も正月も関係なく毎日点滴しなければならず、腹にも水が溜まり、昼寝をしないと睡眠不足の
 
ような状態になる。それでも朝は仕事に行き店を開けてから病院に行く。帰りは必ずルーツサウンドに寄って、
 
アーデモナイ、コーデモナイとブチブチ言いながら休ましてもらい店に帰るという毎日が続いている。
 
 
そんなある日、布施さんが言った。
 
   「遠藤さんが遊びにおいでって言ってたよ」
 
シーメンスを出してしまったことはきっと布施さんから聞いているだろうに。でもどうせ暇だから行ってみるか。
 
運転は止められていたのだけれど大阪まで行くことにした。
 
 
遠藤氏の休みの日にお邪魔し、シーメンスを聴きながらジャズとオーディオの話に花が咲いた。
 
夜もふけ、そろそろお暇をと思っていたら。
 
   「調子悪そうやね、すこし診てあげよう」
 
遠藤さんが腰をあげた。病気の話などしていなかったのに、階下の閉まっている医院をわざわざ開けて
 
超音波エコー検査をしていただいた。
 
   「ムゥ・・・これは駄目だ、一年もたんなぁ」
 
   「・・・・・・・・」
 
   「紹介状書いてあげるから阪大病院へ行きなさい。名医がいるから」
 
帰りの車中で、
 
どうもおかしい。何年も前に一度しか会っていない遠藤さんが急に呼んでくれた。しかもシーメンスは
 
もう持っていない。医者にはちがいないが、自分の患者でもないのにあんなにはっきり宣告するだろうか。
 
布施さんが臭い。いくら阪大の名医でもこればっかりは治るわけはないのだが・・・・・。
 
でも布施さんも遠藤さんも私を心配してくれているのは違いない。紹介状をいただいたからには行かな
 
ければなるまい。樫田先生には黙っておこう。


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