当店のパラゴンの図面etc


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ベルリンへの誘い
 
 
                          (4)別れ
 
 
 静脈瘤破裂で5月に入院して結局四ヶ月、ひと夏を季節感のない病院でやりすごし、9月中旬に
 
やっと退院した。
 
週一回の診察と点滴。あの苦しい点滴だが何回もこなしているうちに、2時間で落とすのを自分で
 
調節して、苦しくなる前の1時間ぐらいで落とす方法を会得していた。
 
静脈瘤はつぶしてもまた出てくる。数ヶ月おきに胃カメラ検査をくりかえし年一度ぐらい入院して硬化術を
 
する。樫田先生がいくら名医でもB型ウイルス性肝硬変は治らない。進行を遅らしたり合併症を抑える
 
のが関の山だ。
 
私のこの肝炎は母子感染で母親も肝硬変を発病してから5年ぐらいで逝った。だから静脈瘤破裂が42才
 
だから50才まで生きれたら上出来だろう。何度も顔を合わしているうちに樫田先生との信頼関係も深まり
 
”この先生に命を預ける”ことに決めていた。
 
 
 こんなにのた打ち回ってもシーメンスは相変わらずゴチゴチの音しか出さない。しばらくは我慢していたが、
 
私には時間がない。いつまでもこいつに関わってはいられない。もうやめよう!
 
ちょうどルーツサウンドに中古のアメリカ製、JBLパラゴンが入っている、同じ鳴らないならあれのほうがいい。
 
   「お前には売れへん」
 
   「なんでや、そんなこと言わんと」
 
   「エレベーターのない5階へ誰が持って上がるねん」
 
   「運送屋頼んで入れてぇや」
 
嫌がる布施さんを無理やり説き伏せてしまった。
 
女房には、
 
   「最後の頼みや、パラゴン買うよ」
 
   「パラゴンって何よ、あんなにシーメンス、シーメンスって夜もうなされるほど言ってたくせに」
 
   「世界一綺麗なスピーカーや」
 
あまりの節操のなさにあきれかえっていたが、反対はしなかった。
 
いよいよシーメンスとお別れという前夜、友人が二人聴かせてほしいと来た。もう結線を外しいつでも搬出
 
できるようにしていたが、しかたなく急遽結線して鳴らしてみた。
 
お茶を出そうと階下に行って戻ってきたとき、二人が顔を見合わせてあきれている。なんとシナトラが
 
スックと立って歌っている。
 
   「こんなシナトラ聴いたことないわ」
 
   「すごいな」
 
アッ、あの音だ、どうして今まで鳴らなかったのだ4年も四苦八苦したのに、別れをおしんでいるのか。
 
しかし決めてしまったものはしかたがない、もう遅い!


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