バスに乗ろう                  

  

  なんでひっくり返らないのかと不思議になるくらい、バスの運転手は、夜の道を飛ばした。

  夜12時過ぎて、さすがにソウルの街も道がすいている。オレンジの街灯が燈る、トンネルが見えてきたかと思うと、 

  中に入り、カーブもなんの、疾走を続けるので、座席の手すりにつかまった。

  ソウルのバスは、立っていられないくらい、とばす。それに揺れる。気持ち悪くさえなる。初めて乗った時は、もう絶対

  乗らないと本気で思った。でも市内を移動するには、地下鉄より手軽なので、よく乗るようになってしまった。料金も、

  普通のバスは60円、ちょっと高めの、日本の観光バスタイプで、立っては乗れない座席バスも120円、小型マイ

  クロバスみたいな、村のバスは35円だ。 

  運転手は、渋滞中に隣りに並んだ他のバスの運転手と、大きな声でいつもたくさん話をする。

  わざわざ止めて話し出すスクールバスの運転手もいた。ぶどうの房を脇においていた運転手もいた。

  遅い時間とはいえ、まだ何人も乗客がいるのに、なぜか停留所でもないところでバスを止めて、真っ暗な中へ降りた

  かと思うと、紙コップのコーヒーを持って戻ってきた運転手もいた。

  ある夕方、東大門付近のあまりの渋滞で、バスが全然動かなくなってしまった。運転手は降りてしまい、道端に広げ

  ている露店に行き、しばらくしてから、なにやら物を買って戻ってきた。なに買ってきたのおじさん・・・。 

  車内では、いつもラジオがかかり、ニュ−スや、歌謡が流れ、バスに乗る乗客のおしゃべりももちろん、運転手にも話

  し掛けることが多いので、いつもバスは賑やかだ。                                                

  そして、お年寄りや、おばさんが乗ってきたら絶対席を譲らなければいけないので、おちおち寝てもいられないのだ。