『CRYING DESTINY』

IRON-CHINO&まいなすいょん という、IRON ATTACK!オリジナルメンバーによる久々のアルバムであり、また、同メンバーによる初の東方アレンジ作品。

  〜IRON-CHINOによる解説〜
■GETTING LOST ROSES (原題:少女幻葬)
IRON ATTACK!のアルバムではお馴染みのアバン的序曲です。
序曲とはいえ、リスナーがレコードをプレイヤーに掛けて最初に聞く曲なわけですから、それ自体で作品として完成されていなければならないし、長過ぎても短過ぎてもいけない…と、実は結構神経を使うところなのです。
フレーズは、ほぼ全て原曲から発展させています。
この、原曲フレーズをどこまで残すとか、雰囲気だけを変える、或いは雰囲気を残してフレーズを変えるなど、匙加減1つで全く異様に成り得るというのが、アレンジの面白いところですね。
最後のアコースティックギターが入るメロウなパートは、ここもやはり原曲のフレーズを自分の解釈で弾いていますが、最初いょんちゃんに聴かせた時、「刑事ドラマのEDっぽい」と言われました。
言われてみれば、港が見える気がします。


■TRUE EVER ROSE (原題:ネクロファンタジア)
実質的なOPナンバーであるこの位置には、速くてメロディックで重厚なこの曲しかないと制作段階から考えていました。
いかにもライブで盛り上がりそうですよね。
このタイプのBPM190を超える疾走曲は、自分のもっとも得意なパターンですが、まさしくどこにも隙の無い完璧な仕上がりとなりました。
僕もいょんちゃんもネクロには拘りがあったので、制作中、そしてレコーディング中、幾度となく意見が衝突し、その度に曲はマイナーチェンジを繰り返していったのですが、今思えばそれが奇跡のケミストリーを生んだんだと思います。
自分はテクニカルなタイプのプレイヤーではないんですが、この曲のギターソロに関しては、(密かに同人界No.1の実力者じゃないかと思っている)ThousandLeavesのBach氏が「今までコピったどの曲よりムズいっス」と言ってました。
"速弾きは速弾き、メロディはメロディ"という素人臭い弾き方は、一見難しいことをやってそうに聴こえるんですが、実は練習さえすれば誰でも出来たりします。ですが、それらを並列に扱って、1つの物語を紡ぐようにソロを展開させるというのは、とてもとても難しいです。

■Le DEVIL rouge de Ville (原題:亡き王女の為のセプテット)
重厚なワルツから導かれる、"正統派"という以外形容しようの無いギターリフが特徴的な曲。
実は、これが一番最初に出来ました。歌も展開もいいんですが、このリフに尽きると思います。熱い時代を思い起こさせます。
ギターソロ前半はBach氏を、後半は屍忌蛇先生をこっそり意識したり…。
ラストのオルゴールパートは、このアルバムの総指揮でもある、いょんちゃんのアイデアです。

■MOON PHASE (原題:竹取飛翔)
アコギの弾けない僕が、頑張って何回も録り直しながら録りました。
この曲もリフが肝ですね。というか、ロックはリフです。
チューニングが、1音半下げ(6弦開放=C#)になってます。ドラムも、ものっすごいヘヴィにしてくれました。流石、世界のAKIRA SAKAI!
最初この曲をいょんちゃんに聴かせた時は、頭を抱えて悩まれたんですが(彼女の中でHEAVY METALという音楽は「PAINKILLER」であり「BATTERY」であり、このスタイルは受け入れられなかった様子)、翌日「あれからずっと脳内で例のリフが再生され続けている…」と言われ、「それは恋だよ」と返して強引に採用させました。
しかし出来上がってみれば、ロングトーンをスケールアウトさせるなど、しっかりドゥーミーな歌い方をしているじゃないですか。
ギターも、単調なようで、なにげにAメロの展開とか、毎回アプローチが違ったりしてて凝ってるんですよ。

■over the rainbow (原題:ラクトガール)
これは僕、何も係わってません。
ピアノもいょんちゃんが弾いてます。
泣けますよね。この曲。
昔ANTHEMの柴田さんが、「悲しい曲だからマイナーコードを弾くのは素人。マイナーは、メジャーに変わる時が一番悲しい」と言ってましたが、ああこれかと納得させられます。

■〜AETERNITAS LUDOLOGY〜 (原題:エクステンドアッシュ×月まで届け、不死の煙)
今回のアルバムで、一番好きな曲です。
リフ、展開、歌唱、歌詞、演奏、ソロ、アプローチ…全てに於いて一点の曇りもありません。
この2曲をミックスさせるアイデアは、いょんちゃんです。(そのあたりは本人の解説で)
レコーディング時も、曲の効果なのか、非常に高い集中力で演奏できました。本曲では、自分の中で最高のギタープレイを残せたと思います。
1stソロ始まりのチェンバロとのユニゾンは、実はちょっとメインリフと引っ掛けています。全然違うコード展開に、曲中のどこかと同じメロディを乗せるとか、あるいは同じコードに全く違うメロディが乗るとか、こういうのは作曲のテクニックなんですが、実はカイ・ハンセンの得意技なんです。カイは、ギタリストでありながらシンガーでもあるので、曲とメロディを完全に切り離さずに考えられるんでしょうね。
その後、アドリブのソロを挟んで、スローパートでの歌唱。この歌唱は本当に素晴らしい。メタルというと、全音フォルテシモというか、常に全力で吐き切るように歌うのが常套と思われていますが(それは間違いではないんですが)、まず本作は女性シンガーを起用している時点で、ヘビーメタルではありません。この緩急を極めた女性独特の緊張感こそが、僕がこの作品を作った理由なんです。流石の鉄人JUNでも、このようには歌えないでしょう。鉄人であるが故に。
そしてこの後、本当のクライマックスたる2ndソロへ突入します。恐らくここ10年で、僕がこれと同等のソロが作れたのは、ほんの2〜3回しかないと思います。楽曲解説とか書いておきながらなんですが、聴いたままが全てです。
ラスト、どんどん転調しながら緊張感を高めていく手法もばっちりハマりました。傑作です。

■SPEADMASTER DRIVE! (原題:妖怪宇宙旅行)
音楽は、絵画と違って、購買層が一般人です。だから、認められようと思えば、"素晴らしい芸術を創作する才能"と共に"わかりやすく聴かせる才能"も必要です。芸術家、特に音楽家は、常にこの狭間で揺れています。
アルバム的に、「6曲目がマニアックだったから、わかりやすくて皆がハッピーになれる曲を」と思い、こういうアレンジになりました。
原曲がそんなに明るい曲ではなかったので、サビ部分は完全オリジナルにしました。ただ、明るい曲といって、僕の大嫌いなメロスピのようにメジャーキーを使うほど馬鹿ではないので、それなりにメタルのセオリー通りです。マイナーを明るく聴こえさせるのが、最も明朗快活で覚えやすく、所謂"売れる曲"になるというのは今も昔も変わりません。
ソロも良く出来ました。自分の中のGAMMARAYフォロワー部分がもろに出てしまってますけども。あ〜落ち着く。

■CRYING DESTINY (原題:懐かしき東方の血)
本作のラストを飾るのは、アルバムタイトルを冠した疾走チューン。
STRATOVARIUS meets BLIND GUARDIANって感じですか?今考えたんですけど。
ツインリードに入ってからのソロが、自分としては近年稀に見るほどの勇壮さと悲壮感を表現できました。
特に4:41〜のフレーズは、自然に降りてきたフレーズなんですが、知らない間に口ずさんでいるほど印象的です。このアルバムのハイライトといっていいです。
最後、演奏が止んでヴォーカルのロングトーンだけが響くのに重ねて、ツインリードが入ってくるのも泣かせます。