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歌詞紹介

組曲『ひろしまの夏』      神戸美和子                      
                               
1、誕生・・・生命
                   
ハッ ハッ ハ ヒッ ヒッ フ                 
ラマーズ法の母親の呼吸から                  
新しい生命が、すぐそこまで頭をのぞかせている         
「この子のお誕生日どうするの」と、              
どこかでだれかの案ずる声が聞こえる              
ハッ ハッ ハ ヒッ ヒッ フ                 
呼吸が切迫する                        
いよいよ新しい生命が、頭をつき出した
・・・誕生日                         
「そんなこと、どうだっていいよォ」と、            
たくましい産声をあげて                    
きんたろうみたいな女の子が                  
明け方に産まれた                       
1992年2月29日の朝に産まれた                       
                               
2、友よ

昭和二十年八月六日                     
すさまじい閃光が街中を消した                 
頑是ない友だちの生命が逝った                 
墓標もない夏草の中で                     
小さな胸が痛かった                      
わたしだけが生き残ってごめん                 
あれからわたしの脳裏に潜むピカドンが
ふただび「ヒバクシャ」をつくらないでと            
己の魂をゆさぶった                      
                               
3、兄嫁の遺言

新築の家に引越した                      
うれしそうに訪ねて来た兄嫁                 
「おねえさん、どうされたの」                 
隣近所で奇異な目が集まる                   
顔や腕に原爆の爪跡ケロイド                    
後々まで指をさされた                     
                               
早ようピカドンをやめさせてと叫ぶ              
あの日、生きのびた私が幸せだったのか             
いっそ死んでいた方が・・・と、くやし涙する
苦しみながら訴えるゆがんだケロイド              
                               
体中に爪跡を残したままで                   
それより先に逝った母親も被爆者だった             
暗い世に生きたおんな二人
                               
心の奥の底まで凍てついた言葉                 
それは                            
「被爆者を嫁にするな!」                       
                               
4、七歳の黒い瞳

あの八月の朝
原子爆弾が一瞬に命をもぎとった
死はあくまで寂しくて
悲しいものなのに
別れの挨拶もせず
"おかあちゃん"とさえも
なんとむごたらしい地獄
八月五日夕方いつものように
「またあした」と別れた
あの子は凄まじい閃光に
七歳のままの黒い瞳で
骨さえも残さず消えた
被爆即死という旅立ちだった                      
                               
5、灯ろう流し

相生橋の袂から灯ろうを流す
色とりどりに飾られて水面をゆく
ゆっくりと燃える灯ろう
悲しそうに寂しそうに引き潮に消えた
亡き者たちが帰るという夜だから
灯ろう流しの夜だから
突然七歳のままの顔が浮かび上がる
失いたくないこの燃える怒り
生き残った者の熱い思いが
ふたたび戦火がないように
祈るだけでなく願うばかりでなく
わたしはこの手だ身体で子どもたちを
平和を守って行く                      
                               
6、いのちの詩を織る

小川の流れは春のささやき
赤ちゃんの産声は生命のしるし
心臓のリズムを刻む血液は
全身を暖かく包む
生きる生命の終末には納得はない
燃えつきるローソクの炎に似て
生きたいという心の乱れを見るとき
"ありがとう"といえる生命でありたい
迎える生命と見送る生命
織りなす綾の糸をつむぐように
わたしは生命の詩を織る
夢と希望と未来にあふれる


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