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Tokyo, 2001.6.25
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Stanley George Bodman
translation by Shino Kobayashi
photo by Toshiharu Ishibashi

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まず最初に、テープをおこす人のために自分のお名前と担当楽器、それから最近のフェイヴァリット・アルバムをあげてもらえますか?

J:最近の!?

ええ。

J:じゃあ僕から。えーっと……いや、誰か最初に言ってくれ。

Ben:僕はベン・ペイプ。ギターとキーボード担当。ヴォーカルもとってる。それから……最近お気に入りのアルバムは……うーん、まだ作ってないんだよね(笑)。たぶんNAHTのCDなんじゃないのかな? 残念ながらまだ聴けてないんだけど、聴いたらきっと気に入ると思うよ。

Peter:ピーター・モフェット、ドラムを担当してる。これは最近のアルバムじゃないけど、ダスティ・スプリングフィールドのアルバムが大好きなんだ。これが最近一番よく聴いているアルバムだね。

Mike:僕はマイク・ハーヴィン。ベース担当。最近はNAHT以外に、シガー・ロスとニック・ケイヴの新作が気に入ってる。

J:J・ロビンズ、ヴォーカルとギターを担当してる。最近のフェイヴァリット・アルバムは……たぶん……ああ、XTCの『アップル・ヴィーナス』だね! でももし5分後に同じ質問をされたら、絶対違う答えになってると思うけどさ。

Mike:そうだろうね!(笑)

(笑)では最初に、オーソドックスな質問からなんですが、今回のジャパン・ツアーを終えた感想を聞かせてください、では今度はJさんから。

J:ふむ……僕にとっても、僕ら全員にとっても、こうやって2度目の来日が出来たことは本当にアメイジングだよ。実はさっき前回の来日時の写真を見せてもらってたんだけど、どれを見ても、僕ら全員、まるで12歳の子供のように目を大きく見開いて喜んでいる写真ばかりだった。こうやって再び日本に戻ってくることができて、前回知り合った懐かしい人達……今では僕らの友達になったけど……そういう人達に再会することができて本当に感動した。ライヴも楽しかったしね! 前回のライヴでは、ここはアメリカとは違うんだなぁって痛感したけど、今回は不思議なことに何の違和感も感じなかったよ。たぶん同じアメリカのバンドで、しかも顔見知りのジェッツ・トゥ・ブラジルや、気心の知れた友人達のバンドと一緒に廻れたことが要因だったのかもしれないけど、まるでアメリカでプレイしてるような気分になった。で、ツアーなんだけど……いや、この辺で止めておくよ(笑)。僕の答は長すぎるから(笑)。ハハハ、とにかく楽しいツアーだった。

Mike:ベンとも今朝同じことを話してたんだけど、これは僕らの人生で最高の経験になったし、今までやった中で間違いなくベストなツアーでもあった。ツアー経験は長いけど、こんな素晴らしいツアーは初めてだったよ。魔法にかけられたみたいだった。

Ben:ああ。スタッフ全員が最高だったね。

Mike:一生涯続きそうな友情関係を築くことも出来たし。アメリカをツアーしてる時には、同じことの繰り返しでちょっと感覚が麻痺しちゃう部分があるんだ。毎日ステージに上がって、ライヴをやってって感じでさ。でも日本に来て、人と出会うことの喜びを再確認した。ツアーに出る楽しみは何なのかって事を再び思い出すことができたよ。ただ、次回はもうちょっと湿気がない時期に来日したいね(笑)。でもこれはDCと同じような気候だよ。

ピーターさんは?

Peter:僕の番? 言いたいことはもう他のメンバーが言っちゃったなぁ……。とにかく日本に来るのは本当に楽しいんだ。最高の人が揃っているし、ぜひまた来日したいね。

Mike:うん。最高にクールな靴をいっぱい売ってるし!

J:フフフ。

ではここで、新メンバーのベンについてなんですけど、彼はどういう経緯で今回参加することになったのでしょうか?

Ben:僕は、ピーターやJとは長いつきあいなんだ。ピーターとは1985年か84年くらいに知り合った友達で、そのちょっと後にJとピーターはガバメント・イシューっていうバンドをやり出した。確かその頃だったよな?

J:ああ。

Ben:で、バーニング・エアラインズが結成された当初から、僕はこのバンドの大ファンだった。いつだって最高の事をやってたから、このバンドの音楽を長い間ずっと聴き続けてきたんだ。だから、キーボードをやらないかって話を持ちかけられた時は本当に嬉しかったね。

やっぱり新作『アイデンティキット』の曲をライヴでやる時のことを想定して、もう1人メンバーが必要だとは最初から考えていたんですか?

J:ああ、そうだね。

Peter:アルバムを作ってる時から考えてたよね?

J:ああ。以前から話し合ってた事ではあったんだけど、前はそれほどシリアスには考えてなくてさ。このアルバムを作っている時、とにかく曲にとって有益な音は何でも入れていこうって方針を決めたんだ。クールで曲にとってメリットがあるなら、どんな事にでも挑戦しようって感じで作っていった。そうこうしている内に、トリオ編成では絶対に再現できないような内容になっちゃって。それに僕自身、ギター・パートがどんどん複雑になってきて、ライヴで楽しみながらプレイ出来る領域を超えてしまったから『メンバーを増やさずにはやってけない』って痛感するようになったんだ。ギターを複雑に操りつつヴォーカルを取っていくのは、まるでアクロバットだからね。メンバーを増やしたのは必要不可欠で賢い選択だったと思う。バンドとしても向上したと思うよ。

そんなふうに必要性から求められて入ったわけですが、実際にベンが入ってみて、逆に彼の存在が刺激になって、新しい創作意欲を刺激されるような部分もあったんじゃないかと思うんですが、その辺はどうですか?

J:うーん、そうだねえ。メンバー全員が前向きになっているよ。今はまだ落ち着いて新しい曲に取り組もうっていう時間が取れずにいるけど、ちょっとした練習やジャムをやってみて、これからの可能性の大きさを感じてる。ただ、今はまだ昔の曲の練習中で、どっちがどのパートを弾くかとか、そういう調整に試行錯誤してる段階だけどね。

なるほど。ではSEIKIさん、ここでちょっと発言して欲しいんですが、クアトロの楽屋で終演後にチラッとお会いした時、『バンドの鑑だ』っていう発言をバーニングに対してしてましたし、シェルターのステージでは『今回のツアーでまた色々な事を彼らから教わった気がする』って、おっしゃってましたよね? それについて、今ここでもうちょっと具体的に話してもらえますか?

Seiki:バンドに困難な状況がやってきた時、それに上手く対処できるかどうかが、そのバンドの力量だと思うんですよ。何かが上手くいかなくなった時、それに対処していく……今回のツアー中にJの喉が途中ちょっと調子が悪くなったりした時もあって、メンタリティが弱くて崩れる人はそこでアウトだと思うんだけど、Jはそこで見事に立ち直って、最後の2つのショウはきっちりプロフェッショナルな仕事をした。そんな彼のモチベーションの高さっていうか、そういうところにすごく共感を憶えたっていう部分はありますね。

J:ありがとう(笑)。

それにしても、日本に来てからそれこそ毎晩プレイをしてたわけですが、最後になって喉が治ってしまうなんてすごいことですよね。

J:ん〜、間にちょっと休みを入れて、再びツアーに戻った時にトラブルが起きがちなんだよね。休み後の2つのライヴは良かったけど、2つは最悪だった。声が全然出なくなっちゃってね。元に戻ったから良かったけど。いつもこんな感じになっちゃうんだよ。ヨーロッパでプレイした時にはそういうトラブルもなくて、自分でも『僕も強くなったじゃん? もうあんな風にはならないだろう』なんて思ったけど、やっぱりそうなってしまった。いつもこんな感じなんだ。

ツアーの途中で喉を治すための具体的な方法ってあるんですかね? 素人考えでは、毎晩歌ってたら、後はどんどん潰れていっちゃうだけなんじゃないのかなって思うんですけども。

J:いや、特に具体的な方法があるわけでもないんだけど……。でも今回のツアーではヤスコ(※NAHTのメンバー。ヴァイオリンとキーボード担当)がショウガ汁を作ってくれて、それは結構効いたような気がしたなぁ。それから水をいっぱい飲むことだね。ヨーロッパでは水をいっぱい飲んでたから良かったような気がするし。僕の場合、毎回色々な事を試してはみたんだけど、そこから得た答えは、絶対的な解決策はないって事だったかも(笑)。とにかく前進あるのみ、突き進むってことだけさ。

なるほど。えー、それでは今回、NAHTに新しいギタリストのジョージさんが入って5人組となったわけなんですけど、新編成のNAHTの曲を聴いて、どのような感想を持ったか教えてください。

Mike:前にNAHTを見た時、すごく衝撃を受けたことを憶えてる。すごくクールで……う〜ん、なんてコメントしていいか……複雑だなぁー。ジョージの事を良く知ってるわけじゃないし、ただプレイしてるところを見ただけだし、特に彼について個人的に知ってるわけじゃないし(笑)なーんてウソウソ。でも以前NAHTを見た時、その当時でも最高にカッコいいことをやってるって思ったし、今はそれ以上に良くなってるからクールだよ。最高だね! ジョージがいなかった頃は、それ以上の音を詰める隙間はないだろうって思ってたけど、今となってはジョージ抜きのバンドは考えられないって感じ。クール!。

Peter:クアトロでのライヴを見た時に、久々に涙が出そうなほど感動したね。そういう思いが湧いてきたのは本当に久しぶりだった。

Ben:つまり、彼らのサウンドが好きってことだよね。

Peter:ああ、大好きだよ。

J:涙が出そうだった(笑)。

Ben:僕がNAHTを見るのは初めてだったわけだけど、普通は一緒にツアーして廻るバンドのライヴはわざわざ毎晩見ないのに、NAHTの場合は毎晩プレイを楽しみに聴いていたよ。

J:そして、だからこそ次はアメリカで一緒にツアーをしようと誘ったのさ。ねえ、ちょっと話していいかな? さっき僕たちがバンドの鑑だっていう話をしていたよね? だけど、これはお互い様だと思うんだ。僕らはNAHTと共にプレイをして、一緒に時間を過ごすことによってインスパイアされる事が本当に多かった。お互いにとっての増強作用があったんだと思う。なんていうか……うーん、目にしたものの本当の意味を理解できたような気がしたっていうか。そう、目にしたものの本来の良さを理解できたんだ。つまり、音楽が人生そのものだっていう人たちを目の当たりにすることができたってこと。これはキャリアの問題じゃなくて、自分は誰なんだっていう問題だよね。そこに人生を賭けている人たち……こういう人と共にプレイ出来たことは僕らにとって本当にインスパイアリングな経験になったよ。

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