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Tokyo, 2001.12
text by Yoshiyuki Suzuki


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2002年の最初にブッ飛ばされたアルバム、それはWRENCHの『CIRCULATION』だった(※この取材は2001年の末に行なわれたので、実際には年が明ける前にブッ飛んでたわけだけど)。この最新作を聴けば、彼らが切り開いたサウンドのオリジナリティの強度に、誰もが目を見張らされるだろう。こういう強い個性を持ったバンドが数多く活動している現在の日本のロック・シーンは本当に充実期にあると思う。アルバムに関する基本的な情報は、このメンバー全員インタビューを読めばほぼ押さえられると思うので、ぜひ作品と併せてお楽しみください。

「趣味は音楽鑑賞だって言ってるぐらいだから……しかし『趣味は音楽鑑賞』って凄いね(笑)」

さっそく、アルバム『CIRCULATION』の話からはじめさせていただきます。音の佇まいはハードコアで、ある種ヘヴィなサウンドでありながら、全く独自のサウンドを作り上げていると思いました。これがどういう風にでき上がってくるのか、まず曲を作る具体的なプロセスみたいなところをおうかがいしたいのですが。

Matsuda:まあ、いろんなパターンがあるんですけど。各自がある程度フレーズみたいなものを作ってそれを持ってきて、みんなの中でそれを何回も何回もジャムってどんどん形が変わっていくっていうやり方と、スタジオに行くまで何にも決めてないで、どんなのやろうか?ってとこからみんなで話し合って、じゃあこういうフレーズ!って各自が作って、それをどんどん煮詰めていくやり方と。

最初からデモテープになってるようなものを、それぞれが持って来たりとかいう場合もありますか?

Matsuda:デモテにはなってないですけど、わりと完成された形の時もあるし。全く無から作る時もあるし。

で、最終的には4人の共同作業で形になっていくっていう。

Shige:そうですね。ほとんどがそうなりますね、結局。

WRENCHもかなりキャリアが長くなりますが、そのやり方はずっと変わらない感じですか。

Shige:徐々に徐々に何かは変わってるんだろうけど。

Matsuda:何もないとこから完全にジャムって作るってのは、わりとこなれてきてからついてきた方法論みたいな。でも基本的なネタを出しても、最終的なところは変わってきたり。みんなでああだこうだやって作ってるんで。それは最初の時から変わってないですね。

Sakamoto:要はそこのスタジオでできたものを各自その場所でテープに録って。で、帰って聴いてそれを次の時までに各自思ったことを言い合って話し合って変わっていくっていう。

なるほど。ずっと一緒にやってきたことで、お互いのノリがさらに分かってきたというか、例えば最初の頃は「自分はこういう曲にしたい。みたいな感じだったのが、最近ではもう、ちょっとしたフレーズだけでも他のメンバーに渡してしまえるし、そうするとそれが勝手にWRENCHとしてまとまっていっちゃったりとか。

Sakamoto:ああ、そういう部分すごいありますね。

Shige:そうですね。もう長いこと音合わせしてるんで。あうんの呼吸に身を任せて面白くやった方が逆にのびのびと骨組みができてったりもするし。スタジオに入れば入るほど考えるっていうよりは考えないで、流れでこう言い合ったりして作っていくみたいな。

逆に深く考え込まなくても大丈夫だっていう。

Shige:なんかね、感覚的に『もうちょっとここは突き進んでいこう』とか、そういう感覚的な対応で曲ができ上がっていくっていうところがありますからね。いちおう考えてきてるんですけど、結局スタジオ入って音出してやっていくとだんだんに。その方が自由に作れると思うし。

今作では、Shigeさんの歌詞が以前よりもっと具体的というか、より前に主張が出てくるようなイメージを受けたんですけれども。単純に日本語の言葉数とか比重も大きいような印象すら受けるんですが。

Shige:うん、そうですね。

こういう歌詞の部分とかが、先に考えてきてるようなところなんでしょうか?

Shige:いや、同時進行だったりもするし、でき上がったあとに――曲の感情ってあるじゃないですか。最後にその表情つけるのはやっぱ歌詞だったりすると思うんで。そういうところでテーマを決めて。この曲にはこういう自分の感情を出してみようみたいな感じでやるし。ストックしてるものをそのまま使うってことはあんまないですね。

じゃあ、曲の先にではなく、あくまで後からくるものって感じなんですね。

Shige:まあ同時進行だったりもするし。ケースバイケースですけどね。

さっき言ったような、より主張が前に出てきてるなっていう自覚っていうのはご自身でもできたものを見て感じますか。

Shige:そう、殴り書きで書いた詞をそのままなんかこう。昔は結構、前の『bliss』とかまではカットアップ手法みたいな感じで、とにかく言葉をドドドドドーッて思ってたことを全部書いていって、それをこう切り貼りして、そっから面白い表現探して、それを自分のテーマと照らし合わせて、みたいなやり方だったんですけど。今回はまた違う感じで。もっともっと自分も面白いことやりたいしね。今度は殴り書きの詞をドーンと出してみたい、それでよしとするようなものを探してたりしたんですね。

じゃあ、いったん書いたものを曲に合わせて細かく見直すような作業はもうせずに?

Shige:そういう方法ももちろんやったんですけど。結構“不条理”とか“Chill Chill me Chill”とかはそのまんま出してますね。

その辺の意識の変化っていうのは何か思うところがあったんでしょうか?

Shige:こんだけ作品も出して詞も書いてくれば、自分が活き活きとしてないと面白くないじゃないですか。活きてこないっていうか。そういったとこで、次の新しい世界観みたいなのが欲しいじゃないですか。まず自分の中でワクワクする。それがこういう結果に出たっていうか。

なるほど。で、しかもどの歌詞を読んでも超ポジティヴなイメージを受けました。

Shige:あ、そうすか。

前向きなエネルギーというか。そういうモードが今、自分の中にあるのでしょうか?

Shige:そうですね。特にWRENCHで書く詞とかっつっうのは、やっぱり爆発力を大事にした曲調とかもいっぱいあるし。そこにリリック乗っけるってなると、活き活きとしたテンションの中でグッと書き込みたいっていうのがあるから。そういうポジティヴなとこが凄い出てると思うんですけどね。

なるほど。で、より具体的な意味性がそのまま詞になっているっていう部分が、特に7曲目の“From up front〜”と“不条理”だと思うんですが、前者の方は、BUZZっていう雑誌のインタヴューで話してた言葉がそのまんま歌詞になってますよね。

Shige:そうそうそう(笑)。たまたま時期的に一緒で。もう思ってることがそのまんまこう。思考回路はそういうテンションの中で生きてると思う。詞にはうつっちゃいますもんね。たまたまそのタイミングだった。その取材の前の日とかに仕上げたんですよ。

ここで言われてるような意見が今、表現の形になって出てきたっていうのは何か理由があるんでしょうか?

Shige:そうですね、自分達の中のシーン――っつったら大げさかもしんないですけど、仲間と盛り上げて企画をやったり、いろんなイベントをやったり、そういう動きの中で、ひとつのテーマとしてみんなそういうとこにブチ当たってた感じがあって。そん中に俺もずっぽりハマってて。もっとデッカく行かんといかんな、みたいなとこでそういう詞が出てきたっつうか。

かなりキツい調子で、断罪的な表現も含まれてますが、これは具体的に思い浮かべられるような対象があるわけですか?

Shige:そうですね、殴り書きの詞ですね、それは。

ただ、断罪するだけで終わらなくて「でも自分は俗にまみれて俗を超えていくんだ。っていう決意の歌になってますよね。その「俗にまみれていいんだ。っていう気持ちはどういうところから掴んでいったんですか。

Shige:いや、っつうか、ここで生きてる以上俗だらけだと思うし。エグいとこ見たりもするけれど、そこを通り越したらいいもんがあった、みたいな。別にカッコつけてそういうところだけしか見ないとかじゃなくて。なんか出していった時の方が結局ポジティヴになれるようなことが多いんで、俺ん中でも。

ちなみに、こういう歌詞がShigeさんから上がってきた時、他のメンバーはどういう感想を?

Matsuda:まあ全然いいっていう。

Nagoya:いいっていう感じですけどね、全然。

Shige:見せたとこで、ダメだったらダメ出しされるだろうし(笑)。『これはないんじゃないの?』って。

Matsuda:でもダメ出しとかしたこと今まで1回もないよね。漢字のダメ出しぐらいで(笑)

(笑)

Shige:(笑)誤字脱字のダメ出しはかなりありますね。

Matsuda:内容で言ったことはないもんね。

Shige:うん。

Shigeさんの今の感情のモードにそれぞれ凄く共感できるような感じですか。

Matsuda:そうですね。なんかそれはやっぱ言葉であるからより明確に出ているんだろうけど、みんなも音で同じようなことやってるつもりなんで。特に『そこは違うだろう』みたいなことはないです。

Nagoya:Shigeの世界観は世界観としてあるから。そこに違う言葉を当てはめてもそれはそれで違うと思うし。『こういう感じでいけば?』って思うこともあるかもしんないけど、それはそれでまたShigeが考えて書けばいいことであって。

Matsuda:この音に乗る歌詞、みたいなところで言ったら凄い明確だと思う。任せられる。

Sakamoto:明らかに『それは違うだろう』ってもんがあればそれは言うかもしれないけど、そんなことはまずないですね。

Shige:多分、曲を作ってるとこが一緒だから、その場では言わないけど、俺が『この曲はこういう感じだろう』って思い浮かべることが、まあ一緒に作ってるだけにそんな突飛に外れたものじゃないだろうっていう。

Matsuda:たまに歌詞とか共作するのでも、なんかこう自分が吐き出したものを逆に任せられるっていうか。アプローチはまた違うんだろうけど、求めたいとことか見てるとこは凄い近い気がする。

やっぱり、さっきの話のように、歌詞が先にあったり最後に単独作業ではめていったりするんじゃなくて、曲と同時進行でその曲の中から掴んだものを言葉にしていくからそういうものがちゃんと自然に出てきて、今まで一度もダメ出しはないっていう結果になるんでしょうね。

Shige:そうだと思いますね。

Sakamoto:代弁してもらってるとかまではないんだけど。みんなが同じような気持ちで同じようなものを出して作ってて。そこにヴォーカリストの言葉が乗ってくるっていう感じかな。

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