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去年の暮れにはBQEというプロジェクトを行なったそうですが、そこでは映像をかなりフィーチャーしていたそうですね。

Sufjan:うん。映像には昔から興味があったんだ。BQEでは16mmフィルムが使われて、3台のビデオ・プロジェクターで流してたよ。ブルックリン・クイーンズ・エクスプレスウェイという高速道路沿いで撮影された映像なんだ。他には、フラフープを取り入れたパフォーマンスとか……フラフープがクリエイティヴな表現だとどれだけ言えるのか分からないけど(笑)とにかくやってて楽しいんだ。あとずっと昔から小説も書いていて、いつかは出版に漕ぎ着けたいと思ってる。それから、演劇とかブロードウェイの方にも興味ある……まあでも、あまりにも多くの課外活動に手を出しすぎないように気をつけているよ。あくまでも本職は音楽であって、僕はソングライターなんだって自分に言い聞かせてる。映画監督でも映像プロデューサーでもなく、もちろんフラフーパーでもなくね(笑)。

(笑)。あなたはアズマティック・キティというレーベルもやっていますが、まず、このレーベル名はどんな意味なのか教えてください。

Sufjan:ああ、それは、「喘息持ちの猫」って意味だよ。呼吸器に問題がある猫って、わりと多いんだよね。

ロゴも猫のイラストですよね。お尻の方が持ち上がっていて。あれは、クシャミしているような感じなんですか?

Sufjan:そう。伸びをして、アクビをしながら、クシャミをしてる感じかな。アズマティック・キティは、僕と義父で運営してるレーベルなんだけど、義父の家にはペットの猫が2匹いて、1匹はサラ、もう1匹はタビーという名前なんだ。で、サラの方が喘息と診断されてね。アレルギーの季節になると呼吸がしにくくなって、よくクシャミをしてるんだよ。タビーの方はアレルギー持ちで、そっちもよくクシャミしてる。というわけで、義父の愛猫達にちなんだレーベル名なんだ。彼が名付けたんだよ。

なるほど。

Sufjan:言うなれば、呼吸というものが生命のシンボルだ、と言うこともできるかな。しかもクシャミというのは呼吸を大袈裟にしたようなものだし、無意識的な反射だから、生命がかけ算されて、警告なしに飛び出る、っていうイメージだね。

わかりました。メジャー・レーベルと契約せずに、インディペンデントで活動することで、いい点と大変な点を、それぞれ教えてもらえますか?

Sufjan:んー、インディーが理想的なのは、創造的な自由が阻まれない点だね。メジャーだったら組まれたスケジュールに束縛されたりするけど、僕はいつでもレコーディングしたい時に、レコーディングしたいものをレコーディングできる。一緒に仕事をする人達もずっと変わらなくて、友人や親戚が多いんだ。だからこそ責任を負う部分もあるけどね。レーベルを運営してる義父とは、5歳からの付き合いだったりするし、そういう、完全に信頼できる環境は僕にとって理想的なんだ。どんな金銭的な心配もせずに活動ができるしね。大企業を維持するためのセールスが必要なわけじゃないからさ。それにレーベルの所属アーティストはみんな友達で、僕の音楽仲間の一部だと考えてる。みんなそれぞれ、意思が尊重される契約になってて、辞めたい時に辞められるし、とてもざっくばらんでクリエイティヴなファミリーなんだ。一方でインディペンデントの不利な点は……ある程度の限界はあるってことかな。例えば、MTVで僕のPVが流れることは永遠にないだろう、みたいなさ。幸い、それが僕の目標じゃないから全く構わないんだけど(笑)。まあ正直に言って今の時代、メジャー・レーベルに所属する利点というのは、ほとんどないと思う。メジャーは衰退の一途だし、メジャーにできてインディーにできないってことなんて、すごく少なくなってるよ。インディペンデント・レーベルの隆盛は、才能あるアーティストが、作品の創造性を完全にコントロールしながら、より長いキャリアを維持できることに繋がってると思う。大企業の思惑にはコントロールされずにね。

ちなみに、一緒にレーベルをやってる義理のお父さんというのは、さっきちょっと話に出た、ニール・ヤングとかをカセットに入れて聴かせてくれた人ですよね?

Sufjan:そうだよ。

では次に、ステージで着ていた衣装について質問します。羽根が付いていたり、シャツもカラフルで非常に独特なものでしたが、あれはどういったところから思い立ったアイディアなのでしょう?

Sufjan:僕の音楽には野外劇風なところがあるから、カラフルな衣装はそれを反映しているんだ。オーディエンスの感覚を直接的に刺激するような音の振動を使ったりもしてるし、視覚や聴覚に訴えかけて鼓舞するのが目的の音楽で、基本的には、人間の日常のこと、試練と苦難と……そして想像力について歌ってる。で、イマジネーションの世界というのは、色彩豊かなものだからね。羽根として使ってるのは、中国製の凧なんだ。衣装の色も、凧に合わせて色とりどりなものになったんだよ。その凧がカラフルなのは、自然界の鳥や草花や蝶に似せて作ってあるからで、自然界の色彩って、人間が作った人工物よりずっとカラフルなんだよね。人間の色は自然界と比べて地味なもんだよ。僕は、自然界からたくさんインスピレーションを受けるんだ。

そう言えば、ジャケットにも動物とか植物とかいっぱい出てきますが、それも今の話と繋がっている部分があるのでしょうか?

Sufjan:うん、そうだよ。僕はデトロイトで生まれたけど、ミシガン北部の田舎に引っ越してそこで育ったんで、湖や川で泳いだり、キャンプしたり釣りをしたりして夏を過ごしたんだ。アメリカは土地が広大だから、子供時代に野外で遊び回った多くのアメリカ人は自然と親しんでる。それと、アメリカでは州ごとに、州の花や昆虫や動物や鳥が割り当てられてて、州のマスコットとして、トロフィーやなんかに描かれるエンブレムになったりしてるんだ。そういう意味でデザインされてるジャケットもあるよ。

メンバーの人の胸の部分とかにあるマークには、何か意味があるんですか?

Sufjan:ああ、あれ? 話せば長くなるんだけど……いろいろ複雑なんでね(笑)。衣装に関しては、あるシアトルのデザイナーが、デザインとか配色を考えてくれたんだ。あのマークには確か、線が7本入ってて、それは僕にとって7という数字が重要な意味を持つ数字だからなんだよ。『Seven Swans』もそうだったし、僕の曲には8分の7拍子が多いしね。BQEは7楽章から成っていて、あれも大部分が8分の7拍子だった。7は素数だし、永遠を意味する8という数から一つ離れてるために、永遠にたどり着けない、終わりがない感じがする数だと思う。常に時期尚早に元に戻っていく感覚。あと一歩のところで完成しない。だから、なんとなく永久機関のようなものを象徴してるんだよ。BQEで使われたシンボルにはフープのイメージが使われていて、例えば球体を火の輪が囲んでいたり……。

……なるほど(笑)。

Sufjan:分かりにくいよね(笑)。そういうわけで、いろんな意味のあるデザインになってるんだよ。

では最後に、詞の題材についてなんですが、歌っている内容が、貧しい生活とか、死とか、殺人とか、テーマが暗いものも多いと思うんです。でも、それに対してサウンドは明るいものが多いですよね。暗い詞と明るいサウンドのギャップは、意図的なものなのでしょうか?

Sufjan:その2つは関係してると思うんだ。苦難や悲しみは、喜びのための空間を生むと思う。そして……陰と陽のように、一方が存在するからもう片方が存在するんだよね。その両方があることによって、より豊かな心の状態を呼び起こすことができる。悲劇は喜劇を必要とするし、ユーモアとか快楽は嘆きを受け入れる余裕を生み出す。どっちか一方だけでは成り立たない。光があるから影が存在する、ってことなんだ。


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