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Tokyo, 2004.8.3.
text and photo by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Kyoko Fukuda
translation by Shizu Kawata

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 ここ最近になって、次々と注目を集めているニューヨーク出身のアーティストの中には、ロックンロール・リバイバルとか、ポスト・パンク・リバイバルといったキーワードにうまくハマらないバンドもいて、個人的にはそのうちのふたつ、ロングウェイヴと、このステラスターに、特に惹かれるものを強く感じている。どちらも「型」から入る必要のないソングライティング能力とセンスを確かに持っていると思う。軟弱そうな第一印象とうらはらに、ライヴでの演奏が非常にしっかりしているのも印象的だった。
 そんなわけで、フジロック3日目と翌日に東京で行なわれたフジロック・アフターパーティに出演したステラスターにインタビュー。話を聞いてみると、アーティスト意識をきちんと持っていることが分かり、いっそう頼もしく感じたりもした。ムーヴメントに流されず、長く活動して良い作品を引き続き作っていってくれそうな気がする。さして熱心な音楽人間としての背景がないのに、歌と作曲で優れた資質を発揮しているダテ男のフロントマン=ショーンが幼少時には引きこもりだったという衝撃の(?)事実にも激萌え(???)だ。


「不完全だからこそ個性になる。つまり、自分ができないことをどうやって表現するかを模索することで、独自のスタイルが生まれてくるんだ」

フジロックと、アフターパーティで2回ライヴを観せてもらって、演奏が予想以上にタイトなので感心しました。前身バンドを結成した時点で初めて楽器を持ったという話を聞いたのですが?

Shawn:ええと、まず始めに、マイケルに関してはギターを始めたのは12歳の頃で、当時から自分のバンドを結成してたほどなんだ。で、彼がステラスターに加入したのは僕らが大学を卒業した後なんだよ。僕達3人に関しては、前のバンドで初めて楽器を持ったわけだけど、それも6年近く前の話で、つまりステラスターを結成した時点では、僕達もマイケルもそれぞれいろんな経験を積んでたんだ。やっぱり昔のバンドで失敗したと思ったことは自然と繰り返さないようになるんだよね。

じゃあマイケルは、バンドに加入してからミュージシャンとして3人にアドバイスすることもあったりしたのでしょうか?

Michael:そうだね、最初は全然知らない間柄だったんで、わりと丁寧な感じで。例えばドラマーのカウントが「ワン・トゥー・スリー・フォー」って入るじゃない? でもなぜかアーサーは「フォー」だけ口の中でモゴモゴ言ってたからそれを注意したり(笑)。あとはこのアンプは良くないからあっちを使ったら?とかそういう小さなことだね……。まあとにかく演奏が上手くなったのはライヴをたくさんこなしてきたからじゃないかな。結成当時はここまでタイトじゃなかったし、ここ2〜3年の話なんだ。

Shawn:僕とマイケルはギターに対するアプローチの方法が異なっていて、彼はちゃんとレッスンを受けた経験があるし、他のバンドでも演ってたから200曲ぐらいレパートリーがあるんだ。でも僕は最初の2週間で(レッスンに)飽きてしまって、それ以降は自分なりのコード進行で曲らしいものを作ってたぐらいでね。それに、僕にとってギターは「楽器」というより「作曲の道具」なんだよね。マイケルは伝統的な意味でのギタリスト、つまりギターの様々な側面や特徴を使って自分の出したい音を表現するわけだけど、僕は曲のアイディアを具現化するためにギターを使うっていう。タイプの違う2人だからこそ成り立ってるんだと思うよ。

なるほど。では、ギタリスト=マイケルがバンドに加入した経緯を教えて下さい。

Michael:ドラムのアーサーと僕は以前同居していたことがあって、引っ越した後も彼宛ての郵便物が届くことが頻繁にあったから、奴はよく家までピックアップしに来てたんだよ(笑)。で、大学時代からの友人である僕以外の3人が新しいバンドを結成するって話になった時に、「明日スタジオで軽くリハやるんだけど、よかったら遊びに来れば?」って話になって。つまり初対面はそのリハーサルなんだよね。

その時のお互いの印象は?

Shawn:音楽の趣味が基本的に同じギタリストだと思ったよ。僕は他のメンバーと比べてあまり音楽を聴かないほうだから、マイケルに教えてもらったバンドはたくさんあるんだけど、彼も僕も好きな音楽と嫌いな音楽が似通ってたんだ。かっこいい音楽を知ってるギタリストならとんでもない曲は作らないし、その逆(とんでもない曲を作るギタリストはかっこいい曲を知らない?)もあるよね。とにかく、彼のリフやメロディーはそれまで僕が考えたフレーズよりも断然素晴らしくてさ。いつもインタビューとかで話すんだけど、マイケルと僕は違うギターを弾くんだよ。2人のギタリストが延々と同じコードを弾いてる曲なんて最悪だからね。パンク・バンドなら通用するかもしれないけど、それじゃギターが2人いる意味がないし、とにかく退屈で馬鹿げてると思う。で、初めてリハーサルした時に感じたのは、マイケルには彼自身のスタイルがあって、それが僕らの演奏にぴったりだったんだ。彼の作り出すメロディーはホント最高だったし、やっと見つけた!って思ったよ。それまで何人もギタリストをオーディションしてたけど、マイケルのようなギターを弾く人は1人もいなかったから。

Michael:初対面だったのに、話もそこそこでいきなり演奏に入ったんだ。3人共まだ初心者だったけど勘が良くてすごく飲み込みが早かったんで、すぐに興味を持ったよ。その日だけで既に2つ3つ、曲らしいものが出来上がったんだよね。それにショーンはそれまで聴いたこともないような不思議な歌声の持ち主だったし、アーサーのスタイルも当時はクレイジー過ぎるほどで(笑)すごく面白そうなバンドだと思ったよ。出会ったのは遅かったけれどそれからの動きはメチャクチャ早くて、3〜4週間ほどでデモを完成させたんだ。

Shawn:作品としては今より複雑な感じだったんだけど。もっとグチャグチャしてるっていうか。

Michael:でもいい感じだったよ。5〜6分の曲やアレンジの変化に富んだ曲とか、いろんな曲を作ったんだ。結成後たった数週間でデモを作れるなんてホントすごいよね。

その頃からすでに、ステラスターの音楽性は確立されていたのですか?

Michael:まだ荒削りだったけど、かなり近かったね。長めの曲を作ってたのも色んな方向性を見出すためだったのかもしれないな。そして曲作りを重ねながら徐々に今のスタイルに絞ってきたんだと思う。でも最初のデモに入っていた曲もアルバムに収録されてるんだ。今までずっとライヴで演奏してきたし、アルバムに何曲か加えたら面白いんじゃないかと思ってさ。

Shawn:“マイ・ココ”、“ジェニー”、“サムウェア・アクロス・フォーエヴァー”、それに“ホームランド”とか。

Michael:あとは“パルプ・ソング”かな。

Shawn:うん、“パルプ〜”は最初のリハーサルで作った曲だったかも。アルバムに収録されてるテンポが速い曲はほとんど初期に作ったものなんだ。理由はどうであれ“クロックワーク”とか同時期に作ったスロウ・ソングは1曲も入ってないけどね。初期の楽曲はもうちょっと曲に隙間があったかな。なんていうか、もうちょっと空間があったっていうか。

マイケルが加入したことで、それ以前のバンドと比べてサウンドや曲の作り方が劇的に変化したと思いますか?

Shawn:劇的には変わってないよ。ただ、僕は前のバンドでは歌ってなかったんだ。で、もっとグランジよりでまだ世間知らずっていうか、無邪気な感じの曲を作ってた。それでも使ってるコードやメロディーは昔からほとんど変わってないんだ。僕ってメロディーありきの人間なんだよ。ソングライティングにおける一番の魅力は同じ曲を2度と作らないってことだと思う。それが僕にとって最も重要なポイントなんだ。前のバンドでもこのバンドでも同じ曲は2度と作らない。毎回曲調の全く違う作品を生み出せていればいいなって思うよ。

Michael:ほら、1曲だけメインにしてるバンドとかいるじゃない?。

Shawn:ヒット曲以外は全てB面レベルのアルバムだったり。それってホント耐えられない。僕にしてみればある意味終わってるも同然。

Michael:だからこそ僕らは異なる曲調をキープしつつ、アルバム全体に流れを持たせようとしてるんだ。

Shawn:前のバンドと比べて一番の相違点は、もっと上手いギタリストが入ったこと、ヴォーカルが僕になったこと、それに全員演奏が上手くなったことだと思う。さっきも言ったけど以前のバンドはニルヴァーナやウィーザーっぽいグランジだったわけだけど、ステラスターは80年代初期、例えば頻繁に言われることだけど所謂「ニューウェイヴ」に影響を受けてるんじゃないかな。もっとダンス・ミュージック寄りっていうかね。僕自身ダンス・ミュージックの大ファンなんだ。前のバンドは純粋なバリバリのロックだったけど、ステラスターではそこにグルーヴやビートを乗せてみんなを踊らせたいっていうか。もう少しクラブやダンス・フロアー寄りな感じでさ。

例えばどんな種類のダンス・ミュージックを聴いてきたんですか? あとバンド全体で影響を受けているアーティストとかも、もしいれば教えてください。

Michael:バンドを結成した時にはどういう音を作りたいかなんて話し合うこともなくて、結果としてこうなったんだ。ボブ・ディランとかデヴィッド・ボウイは聴いてたけど。

Shawn:ダンス・ミュージックは聴かないんだよ。ただ作りたいだけでさ。といってもテクノみたいなのじゃなくて、踊れるロックっていうの? 踊れる曲を作るのは好きだけどクラブにでも行かない限り聴かないな。最近はレナード・コーエン、ボブ・ディラン、エリオット・スミス、バディ・ホリーなんかを聴いてるけど、自分で作りたい曲はタイプが全く違うんだ。

Michael:僕はジーザス&メリー・チェインの大ファンだね。実際ステラスターのサウンドからその影響を感じられるかは分からないけど、とにかく色んなジャンルの音楽を聴いてるよ。例えばアーサーなんて大のアバ好きだから「ここらへんでダンス・ビートが欲しい」って言えばすぐに叩いてくれるし(笑)。

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