Easy Blog







by E-mail, 2004.11
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Katsushige Ichihashi
photo by Valerie Soles


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 Q And Not Uのサード・アルバム『POWER』は、前作『Different Damage』や2003年に行なわれた初来日公演の頃から徐々に示されつつあった、新たな音楽領域へ踏み込んでいこうとする意志をより強く明瞭に打ち出した意欲作となった。ベーシストがいなくなった穴埋めをしないことで表現の自由度は加速度的に拡大し、D.C.ハードコアならではのしなやかな強かさはそのままに、より軽快かつ懐の深いグルーヴが生み出されている。さらに言えば「これはまだまだ第1歩でしかない」という雰囲気も大いに感じる。バンドにとってだけでなく、所属レーベルのディスコードにとっても偉大なステップが記録されたと言っていいのではないだろうか。スタイルとしてのパンクではなくスピリッツとしてのパンクとは何か?ということを改めて確認してもいいし、単純に踊りまくって楽しんでもらっても勿論いいので、まずはとにかく聴いてみて欲しい。
 再び彼らのライヴを体感できる日が来るのを心から楽しみにしていたいと思う。


「非英語圏の音楽もよく聴いてるけど、歌が言葉を超えるあの感覚に惹かれるんだ。歌詞ってやっぱり曲のリズムに合って、楽器のように“言葉をプレイする”感覚に持っていけると、より曲のスピリットに近づけると思う」

ニュー・アルバム『POWER』を聴いて、そのサウンドの変化に驚くとともに、ダンサブルな展開がすっかり気に入りました。本作は色々な意味で意欲作・転機作だと思いますが、レコーディング前からそういった作品になるだろうということを、自分達でどれくらい意識していましたか?

Chris:「驚き」を提供できて嬉しいよ。僕達は常に変化と驚きに満ちた音楽を目指しているし、全ての作品がターニング・ポイントになってくれればと思っているんだ。だから特にこのアルバムに関して意識したわけではなくて、常に違うサウンドやスタイルを目指すのはこのバンドの存在意義そのものなんだよ。僕達は新しいものを追求することでしか成長できないんだ。

今回、イアン・マッケイのプロデュースを初めて離れ、エル・グアポと組み、彼らのスタジオを使ってレコーディング作業を進めることになったのにはどのような理由があったのですか? 制作のプロセス上で過去の作品との最も大きな違いは何だったのでしょう?

Chris:これまでのイアンやドン(※エンジニアのDon Zientara)との仕事も最高の経験だったけれど、今回はあえてやり方を変えて新しいことに挑戦してみようかと思ってね。みんなエル・グアポのアルバム『Fake French』のサウンドにかなりやられて、ピートとラファエルとやってみるのが自然に思えたんだよ。古くからの友達でもあるし。

エル・グアポとのコラボレーションは、実際にやってみてどうでしたか? 彼らは本作に何をもたらしてくれたと思いますか?

Chris:新鮮だったね。すごく密な共同作業で、みんなの間にはちょっと不思議な緊張感もあったんだけど、それがうまく作用してレコーディングのエネルギーを最後まで保っていてくれたと思う。ピートとラファエルの貢献度はかなり高いよ。このアルバムで追求したかったシンセやドラム・プログラミングに関する技術や知識に長けていたからね。

1曲目から、トーキング・ヘッズ的なギター・カッティングや、往年のマイケル・ジャクソンばりのファルセット・ヴォーカルが聴けますね。本作を語る際に、ブラック・ミュージックのフィーリングとか、ダンス・ミュージックのファンキーなグルーヴは重要なポイントになってくるように思いますが、この方向性は一体どのようにして生じてきたものなのでしょうか?

Chris:ずっとダンス・ミュージックは大好きだったけれど、最近それをもっと明瞭に表現し始めた感じかな。6年前にこのバンドを始めた時はパンクやハードコアのボキャブラリーが一番身近だったけど、いつも新しい(音楽的な)言葉を習得しようとしてきたから。僕はナイル・ロジャースやカーティス・メイフフィールドのギター・プレイに憧れていて、カケラでもいいから自分のスタイルに彼等のエッセンスを取り入れようとしてきたし、ハリスやジョンも同じじゃないかな。特にこの作品でほとんどキーボードに専念していたハリスの進歩はすごいと思うよ。

サウンドの変化は、作曲プロセスの変化をも伴ったものでしたか? 例えばヴォーカル・ラインやギター・リフから作るよりも、リズム・パターンやキーボードのフレーズから先に出来上がることが増えた、というような。

Chris:これまでは練習でジャムりながら曲を作ってきたけれど、最近は練習前に各人が家で自分のアイディアををもっと練り込むようになったかな。作曲のプロセスはまだ民主的なままだけど、最初のアイディアをバンドに持ち込む前に仕上げる度合いが少し上がったみたい。各曲の色がよりはっきりしているのはそのせいかも。でも作曲に関しては決まった方式は無いよ。これからも変に固まって欲しくないね!

リコーダーの音が非常に印象的に響きますが、この楽器はどのような経緯で活用されることになったのでしょう?

Chris:何年か前に僕がハリスに買ってあげたんだよ。ハリスはクラシックのフルート曲が好きだし、僕らも古い音楽のドラムと笛のリズミックな感じとか、それこそ日本の邦楽や雅楽にも興味を持っているし、そういう要素もいつか取り入れたいって思ってたんだけど、ようやく叶ったね。

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