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 +/- {PLUS/MINUS} Interview

 +/- {PLUS/MINUS}

by E-mail, 2008. 9. 5
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Minoru Hatakeyama
translation by Koji Saito

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USインディー・シーンでも屈指の個性を持つプラス/マイナスが、3年ぶりとなる新作『Xs on Your Eyes』をリリースするタイミングで行なったインタビュー。メールをやりとりして行なわれたもので、ジェームスとクリスが答えてくれている。最後の方で触れられているヴァーサスとの共同来日ツアーはすでに終了したが、そこでも彼らは本当に素晴らしいライヴを見せてくれた。良い曲が書けて、ユニークなサウンドが作れて、それをライヴで巧みに再現してしまう、曲・音・演奏の3拍子が揃った彼らの存在はもっともっと認知されていい。
※写真は、2008年のツアーで京都を訪れた時のスナップ。日本での所属レーベルである&レコーズのオフィシャル・ブログに掲載されたものです。

「結婚や子供の誕生といった私生活での変化は、バンドの音楽に対する捉え方を間違いなく変えたと思う。多忙になったせいで、自分たちの時間がもっと価値を帯びてきて、音楽活動を継続させることがどれほど重要なのかに気付いたんだ」

待望の新作完成とても嬉しいです。プラス/マイナスは、いつもジャケットのアートワークが素晴らしいですが、今回も美しいですね。描かれているのは木の皮だと思うのですけれども、このデザインはどんな風にして出来上がったのでしょう?
James:デザイナーのマーク(・ロビンソン。UnrestやAir Miamiといったバンドもやっていた、ティーンビート・レーベルの主催者)は、子供達と一緒に散歩している時たまたま木の皮を見付けて、家に持ち帰ってスキャンしたんだ。彼のコンセプトの詳細については実際よく理解できてないんだけど、僕らが今作の曲を送ったら、マークはそれを聴いてこのデザインを仕上げてきたんだよ。
『君の瞳に映ったX』というアルバム・タイトルは、一体どういう意味なのですか?
James:このタイトルは、要するに死んじゃった状態を示しているんだ。コミックとかの表現で、誰かが死んだ時、目の部分をバッテン(X_X)にして描くことがあるでしょ。
何故そんなフレーズを作品全体に冠そうと考えたのでしょう? 全体的なテーマとして「死」をイメージしたりするところがあるのですか?
James:このアルバムの実際のテーマは「人生を救う」ことだね。具体的に「死」にまつわる事柄に関してではなく、自分の人生をコントロールし、成し遂げることについてなんだ。
前作から約3年のインターバルが空きましたが、この期間は振り返ってみてバンドにとってはどのような時期でしたか? また、それが最新作にどう影響をもたらしたと思いますか?
James:この3年間に僕らの私生活に起きた多くの出来事が、僕らの音楽と、僕らと音楽の関係とに新しいパースペクティヴを与えてくれた。思うに僕らは、今じゃ音楽を純粋に“音楽”として捉えてる。僕らが音楽をやっているのは、ただ音楽を愛しているからなんだ
この3年間に私生活で起きた大きなことというのは結婚や、お子様が誕生したことなのだと思います。そうした人生における実りが音楽に向かう気持ちをより純粋なものにしたのでしょうか? そうなる以前の音楽人生と最も変わったところは何ですか?
James:確かに、結婚や子供の誕生といった私生活での変化は、バンドの音楽に対する意識を間違いなく変えたと思う。僕らは、ずっと自分達自身が聴きたくなるような音楽を作ろうと努力してきたけど、それについては変わってはいないんだ。ただ、考えるに僕らは多忙になったせいで、自分たちの時間がもっと価値を帯びてきて、音楽活動を継続させることがどれほど重要なのかに気付いたんだよ。
これまでの作品よりも、サウンドに斬新なデジタル加工を施す実験色がやや控え目になり、言ってみればソングライティングそのものを重視したオーガニックな作風に移行したようにも思えます。今回ニュー・アルバムを作るにあたって自分達で何か意識していた方向性はありますか?
James:今作のコンセプトのひとつに「再びバンド全員で曲を書くことにトライする」というのがあった。だから、グループとして作曲するためのリハーサルに時間を費やしたよ。僕1人で書いたナンバーも幾つかあるけど、最終的にアルバムとしては、よりバンドらしいサウンドになったと思う。曲作りそのものに重点が置かれていて、後から色々なサウンド処理を加える割合も以前に比べて少なくなっているよね。もし、この最新作に対して実験性が薄れたように感じるとすれば、それは僕らが、聴き手を驚かせるような仕掛けとかテクニカルな面を追求することから距離を置き始めたからじゃないかな。今の僕らは、もっと有機的なソングライティング・フォームに移行しつつあると思う。それと多分、自分たちのやることがよりこなれてきたから、もっと自然に聴こえるんだろうね。
前回インタビューした時、作曲に関して「自宅のハード・ディスク・レコーディングで全て1人で作り上げる」のと「バンド全員のジャム・セッションで作り上げる」という2パターンに加え、前作『レッツ・ビルド・ア・ファイア』レコーディング時に初めて「レコーディングしながら曲を書く」という3つ目のパターンが登場したと言ってましたね。新作ではどうだったのですか?
James:このアルバムは主に“バンドとして”作り上げたものなんだ。僕ら全員が同じ部屋に揃った時、そこにはケミストリーが間違いなくあった。とてもエキサイティングだったよ。
また、ジェームスは「自分の場合、家で1人でほぼ曲を完成させてしまう方が得意だ」とも言っていました。それが今回バンドとしての創作に重点を置くようにしたというのは、何か特にきっかけがあったのでしょうか?
James:そうだな、この変化ってのは必要なことだったんだ。最近だと妻や子供といるから家で曲を書くというのは僕らにとって困難なことになってきたし。バンドで一緒に家の外で音楽を作る、これって重要な逃避なんだよね。 それもあって、僕らは「全員で曲を書く」っていうフィーリングを取り戻そうとトライしたんだ。誰か一人で書き上げた曲とは違ったケミストリーをつかむことができたと思うよ。

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