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Los Angeles, 2008. 3. 29
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation and translation by Miho Suzuki
photo by Emilie Elizabeth

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2005年のツアーからNINに参加し、キーボードを中心にギターやベースもこなして、ライヴにおけるNINの重要な役割を担うようになったイタリア人ミュージシャン=アレッサンドロ・コルティニ。彼が友人のペレ・ヒルストロームとともに行なっている、自らのプロジェクトがモッドウィールムードだ。これまでにリリースしてきた作品を聴いてきた方には、あらためて説明の必要もないと思うが、彼らは素晴らしくメロディアスな曲を書き、繊細な電子音と暖かみのある生楽器の音を巧みに融合させながら、美しいファルセットで歌い上げ、本当に良い音楽を鳴らしている。ものすごく才能のある人達だと思うので、NINファンに限らず、多くのリスナーに聴いていただきたいと思います。

「明らかにNINに参加したおかげで、より多くの人達がモッドウィールムードを聴いてくれるようになった。その事実は意識してるし、もちろん嬉しいことなんだけど、今のところは何の妥協もせず、やりたいように自分の音楽を作って発表できているっていうことが何よりも嬉しい」

このバンドを始めたのはいつ頃のことでしたか?

Pelle:バンドになったのは2000年かな。アレッサンドロは、その前から曲を書きためてたけどね。

Alessandro:うん、以前から曲は作ってて、それらは『ギフト?(クエスチョンマーク)』に収録されてるよ。バンド名もその時につけたんだ。

このバンド名の由来は?

Alessandro:シンセサイザーについている小さなウィールをモッドウィールって言いうんだけど、それでポジティヴかネガティヴかを調節するようなイメージ。僕はムーディ(気分屋)だし、曲にもそういうものが多いからさ。

Pelle:モジュレーション・ウィールの略だよ。

Alessandro:最初からややこしい名前なのに、さらにイタリア人の僕が発音すると、みんな「え?」って聞き返すんだよね(笑)。

Pelle:でも文字にすると見た目がいい感じなんだよ。

Alessandro:そうそう。

2人はどうやって知り会ったんですか?

Alessandro:同じ音楽学校、MI(ミュージック・インスティテュート)で出会ったんだ。

さて、『Pearls To Pigs Vol.2』がリリースされましたが、発売に際して何かトラブルがあったようですね?

Alessandro:Amazonでは2月26日にリリースされたんだけど、iTunesの方でトラブルがあったんだ。原因は不明で、たぶんサウス・バイ・サウスウェストの影響じゃないかと思う。その週はすごくリリースが多かったからね。僕らは、インディペンデントのディストリビューション契約をiodaっていうデジタル・ディストリビューション会社と結んでいて、そこは音楽をデジタル・ストアに乗せてアカウントの記録を代行し、売り上げの何パーセントかをとってバンドに支払うっていうことをやってる会社なんだよ。リミックス・アルバム『Things Will Change』の時に初めてその会社とやってみたら、うまくいったんだ。今回もiTunesではトラブルが起きたけど、さほど大した問題にはならなかったよ。逆にそのせいでAmazonの売り上げが上がったように思う。おかげで2週間くらい『Pearls To Pigs』がVol.1、2ともにエレクトロ・ミュージック・チャートのトップ10に入ったから、それで少しは知名度も上がったんじゃないかって(笑)。

Pelle:ただ、ひとつだけAmazonには欠点があって、アメリカ国内のみなんだよね。

そう、日本のファンはみんなじっと待ってたんですよ。で、リミックス集『Things Will Change』、そして今回の『Pearls To Pigs』Vol.1&2ともに、ダウンロード販売のみとなっていますが、それらを今後CDという形態にして販売することに興味は全くないのでしょうか?

Alessandro:Vol.3が完成したら、CDにしたいと思ってる。この3つはそもそもひとまとめのものとして作ったからね。5月30日にレディトロンとショウをやるんだけど、その時には会場に『Pearls To Pigs』のホーム・メイドCDを用意するよ。自分達で1枚ずつ焼いた限定ヴァージョンをね。あと、アナログ盤についても考えてる。それをやるためにはレーベルと組むか、何かベストの方法を見つけてやりたい。1枚目のCDは僕が自分で作ったんだけど、まだ家に残ってるし……CDを制作するのって大変なんだ(苦笑)。だから、どうなるかは分からないけど、確実にCDとして出す予定ではいるよ。とりあえず限定ヴァージョンに関しては、うちのCDバーナーが燃え尽きて死ぬまでは焼くつもり(笑)。

Pelle:AmazonやiTunesでリリースするのはすごく簡単なんだ。僕らは全て自分達でやってるから助かるよ。

Alessandro:僕自身ダウンロードで沢山の音楽を購入してるしね。CDがお店に並ぶって素晴らしいことだから、ダウンロードこそが理想的だとは言えないけれど、僕達は本当に小さな存在で、全て自分の家の地下でやってるし、マネージメントも何も無いからさ。だから今のところは、CDに入れる曲全部の完成を待ってから発売に備えるよりも、できた曲を順番にどんどん発表していくことを優先してるんだ。デジタル・ダウンロードだったら、完成後6週間以内にオンラインで発表できるし。

『Pearls To Pigs』がアルバムになる時は、曲順を変えて、ミックスもやり直し、未発表トラックも追加するなど、それまでのEPの集積というもの以上の独立した作品になるのでしょうかね?

Alessandro:多分マスタリングは全部やり直すと思うけど、曲はほぼ全て同じ器材でレコーディングされてるから、そんなに変わる部分はないはず。『Vol.2』のミックスはアレックス・ニューポートと僕とでやったんだけど、『Vol.3』は全て自分でやるつもり。曲順も変えないと思うよ。何曲か追加トラックを入れる可能性はある。でも、まだ分からないな。それはアナログ盤用にするかも。

Pelle:この『Vol.1』『〜2』『〜3』はフルアルバムにした時に筋が通るような順番で作られているんだよ。

Alessandro:うん、今の段階でも『Vol.1』と『Vol.2』を続けて聴いてもらえれば、分かると思う。もともと後で一緒にするつもりで作ってるから、最初の『Vol.1』を念頭に置いて新しい曲を作っていったんだ。だから例えば、すごく良い曲が出来ても、『Peals To Pigs』に合わないと感じたら、別のアルバムのためにとっておいたりもしてるんだよ。

Pelle:それに5曲ずつ発表することによって、みんなフルレングスよりも時間をかけて曲をちゃんと聴いてくれるんじゃないかとも思うし。

Alessandro:特に『Vol.2』の曲は……曲が全部つながってるんだ。例えば"domenica pomeriggio"なんて、日曜の朝ちょっとレゲエをやってみた、っていうそれだけの曲だけど、ちゃんと他の曲とつながってる。どの曲もCDを埋めるために作った曲じゃなくて、それぞれにすごく良い曲だと僕ら自身は感じてるよ。全部のEPで、曲とアートのバランスがとれているか気を配ってるんだ。最終的にはアートだからね。

Pelle:その意味では、レーベルが無いってのはいいことだよね。

ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーは、現在レーベル契約を離れ、完全自主運営で活動していく方法を模索していますが、あなた方も今あえて面倒くさいレーベル探しに時間を割く必要はないと考えているのですか?

Alessandro:まず、大手のレーベルが僕らと契約することはないだろうと思ってる。そう思う理由の半分は、そんな自信が無いからだけど、もう半分は、一緒に仕事できるチームさえ作れれば、今の時代、レーベルを持つ意味ってあまり無いからなんだ。ナイン・インチ・ネイルズと仕事できて僕はラッキーだと思うよ。というのは、トレントが今やっていることを見ることができるからさ。現在は大きな変化が起こっている時期なんだ。ナイン・インチ・ネイルズのようなバンドには、そこで可能にできることがある。でも新しいバンドにとっては、その変化が道を開く部分もあれば、逆により難しい状況を作ることにもなるんだ。レディオヘッドがやった「曲に払いたい分だけ払ってくれ」っていうやり方は、新しいバンドにとってはダメージがある方式だよね。僕達のような小さなバンドは、レコーディングもマスタリングもミックスも、CDを作るのも全て自腹でやってる。だから作品の値段は、他人に決められるものじゃあないと思うんだ。5ドル払いたくなければ、盗めるんだから、そうしてもらって僕は構わない。でも僕自身は好きだったら所有したいと思う方だから、実際に購入するよ。

初のフル・アルバムが完成したら、ぜひ日本でもCDをリリースしてほしいと思ってます。日本のコアな音楽ファンは、実物のCDやLPを手元に持っていたいという欲求が強いんですよ。

Alessandro:もちろん、日本でアルバムを出せるなら出したいよ。日本盤ってクールで、いつも追加トラックが収録されてるんだよね。

ええ。

Alessandro:だからもし日本でリリースすることができたら、2枚組にして出したいなって考えてるんだ。ずっとやりたいと思ってることがあって……ミニLPに『Pearls To Pigs』全曲分のデモをつけた2枚組を発表したいんだよ。みんなにも、その曲がデモではどんな風だったか聴いてもらえるようにね。トレントは全曲分のマルチ・トラックをリリースしたけど、僕らには無理だと思う。他の人が、僕の曲を使って何ができるかなんて正直あまり聴きたくないし(笑)。ただ、デモ集に関してはいつか出したいんだ。ずっとブートレッグのファンだったからね。ブートレッグには曲の初期ヴァージョンが入ってたりして、そういうのってすごく面白いだろ? ヘヴィなマルチ・トラックよりもさ。ビートルズならマルチ・トラックも納得できるけど。だから、日本で2枚組を出せるレーベルが見つかったら素晴らしいな。でも、それが実現するまではデジタルでリリースするよ。それなら無駄な時間もかからないし。

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