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Tokyo, 2004. 11. 21
text by Yoshiyuki Suzuki
translation by Shizu Kawata
photo by Chris Strong


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 2004年の暮れ、bloodthirsty butchersが+/−を、そして日本の若手ロック・バンドの中でも現在最も勢いにのっている気鋭の存在であるthe band apartがMock Orangeを招聘し、合同ツアーを行なった。それぞれタイプの異なる音楽性を持ちながら優れた表現を実現し、互いに尊敬しあう4組がこのようにして日本国内を(かなり地方まで)まわったことの意義は密かに大きい。これまで地道に実績を積み重ねてきた、バンド同士の友情を軸にしたインディペンデントなスタンスでの来日公演が次のステップに足をかけた記念すべき事件だったと思う。
 以前より元Burning AirlinesのJ・ロビンズにプロデュースを受け、同じく元Burning Airlinesのマイク・ハーヴィンが運営するSilverthreeから最新作『Mind is not brain』をリリースしたMock Orangeは、素晴らしいツイン・ギターを聴かせる好バンドだ。以下にその来日インタビューを掲載しよう。


「バンドを結成してから11年間かけて自分達なりのオリジナル・サウンドを探求し続けてきた。最新作の『mind is not brain』で、ようやく自分達のサウンドを見つけた気がするよ」

それではまず、今回のthe band apartとの合同ツアーの現時点での感想を聞かせて下さい。

Ryan:アメリカでの活動を含めても、これまでで最高のツアーじゃないかな。それにthe band apartは今まで一緒にツアーを周った中で一番好きなバンドで、共演したいバンドNo.1なんだ。

Heath:僕もそう。過去に共演した中で一番好きなバンドなんだよね。このツアー自体、思ったよりもすごく良い感じだし。

Zach:アメリカでもthe band apartのアルバムを聴いていて、大ファンだから共演できて本当に光栄だよ。それに日本のキッズ達が歓迎してくれてるのもすごく嬉しい。

Joe:途中経過をみても、かなりいいね。オーディエンスが僕達を受け入れてくれてるのがわかるよ。前回のツアーでは、the band apartのやつらとは友人になりかけの段階だった。でも今回は友達になれたんで、ジョークを言い合ったり毎晩一緒に打ち上げでバカ騒ぎしたり、すごく良い関係だよ。それからクラブやライヴハウスのスタッフも親切な人達ばかりだしね。

前回のthe band apartとのツアー前にも1度来日していて、NOFXがヘッドライナーのパンク系イベントに出演していましたが、その時と全体的な感想を比較するとどうですか?

Joe:初来日は緊張してた。というのも、アメリカでNOFXのオープニング・アクトをやったらオーディエンスから怒鳴り声を浴びせられるだろうから。本国のNOFXファンは生粋のパンク・キッズばかりだし、日本でも同じような目に遭うんじゃないかって心配だったよ。でも日本のキッズはアメリカとは全然違っていて、みんなしっかり聴いてくれた。そんなこともあって、2度目の来日はかなり楽しみだったんだよ。

Heath:初来日当時は僕達全員若かったんで、見るもの全てが新鮮だったし、おっきなカルチャーショックだったよ。それに5日間の滞在期間中ずっと時差ボケが残ってたから、何もかもあっという間に過ぎてしまった気がしたんだ。帰国してから「あれは全部夢だったんじゃないか」と思ったぐらいで。

全体としては、やっぱり今回のほうが楽しめてるって感じなんですね。

Joe:うん。3回も来日できたなんて本当にラッキーだよ。

その間にあなた達は、新しい作品をリリースし、音楽性も徐々に変わってきたと思うのですが、これは意識した上での変化だったのでしょうか?

Joe:年を重ねていくうちに、ビートルズとかレッド・ツェッペリンといったそれまで聴いていなかった昔のバンドを聴くようになったんだ。そしてもうひとつの理由は、ソングライティングのスキルを上達させようとする努力が形になったんだと思う。

なるほど、前作のEPからJ.ロビンズをプロデューサーに起用していますが、彼との出会いのきっかけを教えて下さい。実際一緒に仕事をしてみた感想は?

Joe:すごく良い人で、一緒に楽しく仕事の出来る相手なんだ。きっかけは、「ずっとプロデューサーをお願いしたかった」って内容のEメールを出したのに始まって、そしたらJから「デモを送るように」っていう返事がもらえたこと。そこで既にリリースしてたアルバムを送ったんだけど、気に入ってくれたようですぐにOKしてくれたんだよ。2ndアルバム『the record play』をプロデュースしたマーク・トロンビーノに依頼してもよかったんだけど、ブリンク182やジミー・イート・ワールドも手掛けている超有名プロデューサーだから、まず彼のマネージメントを担当してる会社にコンタクトを取ったりする必要があったり、話がなかなか前に進まなくて今回は断念したんだ。マークもJ.ロビンズ同様とてもクールで良い人だよ。

今回のレコーディングで、J.ロビンズがモック・オレンジのサウンドにもたらしてくれたものはありましたか? あったとすればそれは何でしょう?

Joe:Jはジョウボックスやバーニング・エアラインズといったバンド経験があるから、ミュージシャンとしてスタジオに入る僕達の心境をとても良く理解してくれるんだ。例えばヴォーカル録りの時には、上手くライアンをリラックスさせたり。歌録りがどんなものか肌で理解してるからこそ、ライアンの立場になって物事を考えられるんだよね。それに素晴らしいレコーディング技術の持ち主でもある。リールのテープを実際に剃刀を使って切り貼りしながら曲を編集したり。そういう面でも腕利きなんだよ。

それは同じ曲の別テイクを繋ぎ合わせる作業ってことですか?

Joe:彼の技術ならそれも可能だけど、僕達としてはなるべく避けるようにしてる。ドラムだったらワン・テイク分を丸々採用するとか。

Ryan:編集は避けたいからね。

Heath:でもJにはその腕があるってことで(笑)。

Zach:今では彼のように自分でテープを切り貼りするプロデューサーは数少ないんだ。コンピュータ上で編集する人が大半だから。

つまり今や大半の人達がHD上で編集するようなことを手作業でやっているということですね。あなた達としてはアナログに関するこだわりはありますか?

Joe:うん、あるよ。アナログのほうが音に温かみがあるね。

Ryan:コンピュータのサウンドって何だかこじんまりしちゃってるけど、アナログには音の広がりや体温を感じるんだ。

それでは、作曲に関して、初期の頃と比較して何か変わってきたことはありますか?

Joe:そうだな、新作の楽曲はほとんどライアンによる作曲なんだ。前作までのアルバム2枚に収録されてる曲はメンバー全員で作ってた。でも今回はライアンが主体で。

そうなるきっかけが何かあったんでしょうか?

Heath:一時期、リハーサルを全くしなかったことがあって、その間にライアンが「Mind is Not Brain」を書いたんだ。

Ryan:ジョーと一緒にね。

Heath:二人はルームメートだから一緒に作業する時間がたっぷりあったんだよ。僕には仕事があって、前のベーシストも複数の仕事を抱えていたから忙しくてなかなか練習時間が作れなくて。その間にライアンが書き溜めた曲を聴いたらどれもすごく気に入ったんだ。だからそのまま全部こいつに書いてもらおうってことになって。

Joe:4人で曲を書こうとすると、アイディアが沢山あり過ぎてなかなかまとまらないこともあるんだよ。

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