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ISIS

ISIS

Tokyo, 2009. 4. 20
text by Yoshiyuki Suzuki
interpretation by Hatsumi Sakota
translation by Satomi Kataoka

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2009年にリリースされたISISの『ウェイヴァリング・レイディアント』は、21世紀のヘヴィ・ロックを独自に極めてきた彼らが、さらなる新次元へと突き抜けてみせたことを示す傑作だった。アルバムの完成直後/リリース直前に恵比寿リキッドルームにて行なわれたスペシャル・イヴェント=leave them all behindでは、Sunn O)))、Boris、envy、Growingという、この上ない強力なラインナップが顔を揃える中、ISISはトリとして登場。この時の演奏がまた、とてつもないもので、個人的には同年のベスト・ライヴのひとつになっている。翌日、メンバー全員を相手に行なわれたロング・インタビューの完全版を以下にあらためて掲載するので、じっくり読んでみてください。

「変に聞こえるかもしれないけど、僕たちは月日を経るに連れて『ISISでいることが上手くなってきた』ように思う」

昨夜のショウは本当に素晴らしかったです。過去4回の来日でも、毎回いいバンドと対バンしてきましたけれども、あなたたち自身は、昨日のイヴェントについて、どのような感想を持っていますか?

Aaron T:(ISISが日本で所属している)デイメアは本当にいいレーベルで、縁を持てたこと自体が僕らにとってすごく大切な出来事だった。僕らはいつも、家族みたいな親近感が持てて、ビジネス以外の面でも友達になれそうな人間と仕事するようにしてるんだけど、デイメアのタダシはまさにそういう人だったんだ。しかも彼はレーベル・オーナーとしてもめちゃくちゃ優秀で、ISISのためにもできる限りのことをしてきてくれたし、両方にとって非常に順調な関係が築けていると思う。だから、今回デイメアのイベントに出てくれって頼まれたときも、もちろんすぐやりたいって思ったよ。あと、今回出演してる他のバンドとは、ある種の結びつきを感じてる部分もある。過去、一緒にツアーしたことのあるバンドとか、ハイドラ・ヘッドやイピキャックに所属してるバンドだからね。そんなわけで、このショウは色んな意味で重要だったと思うし、そこに自分たちも参加できたのは非常に嬉しいことだったし、ミュージシャンとしても面白い経験になった。日本で初めてやったヘッドライン・ツアーはenvyと一緒だったから、そこでも繋がってる。Borisとは日本とヨーロッパの両方で一緒に廻って、Sunn O)))ともいろんなところで共演してきたから、こうして馴染みの顔に再会できて、しかも前とは違う新しい状況で、みんなが一堂に会する形で共演できたのはとってもよかったよ。

Michael:昨日のライヴは、正直ちょっと不安もあった。新しいアルバムから3曲初めて演るってことで、始まる前はすごく緊張してたんだ。でも全体的に見て、最初から最後まで素晴らしい夜だったね。アーロンも言ったけど、自分たちに近い存在で、前にも一緒に演ったことのある連中と、こうしてまた会うことができてすごく嬉しかったし――そのほとんどが友達だしね――それに、日本でライヴをやるのって、いつも本当に楽しみなんだ。アメリカとかヨーロッパの他の場所とはやっぱり全然違うし、日本で一緒に仕事させてもらってる人たちって、本当に素晴らしい人たちばかりなんだよ。だからこうして呼んでもらえて嬉しいし、いい経験になったな。

Clifford:新曲を初めて披露するのに、これ以上いいヴェニューやショウは望めなかったんじゃないかな。ホント、願ってもないチャンスをもらえたって感じだね。友達と共演できたのも嬉しかったし。

Aaron H:ただ、あのショウでトリってのはキツかったな。

Clifford:確かに!

Aaron H:相当に手強いアクトの後ともなるとね。

Clifford:しかも4組もいるし!(笑)

誰かTwitterの方でも「Sunn O)))の後に出て一体何ができるっていうんだろう」みたいなことをつぶやいていたそうですが?

Aaron H:僕だよ。Sunn O)))のサウンドチェックを見学したんだけど、凄まじいサウンドを鳴らしてたから、「こいつをどうやって超えろっていうんだ?」って書いたんだ。現実とは思えないくらい素晴らしいサウンドだったからね。ただのサウンドチェックなのにとにかく途方もない音で……(苦笑)。「こいつらの後でどうやってプレイするってわけ?」って、全員がビビったと思うよ。「こいつらがトリをやるべきだろ」とも思ったしね。ホント、現実離れした素晴らしさだったから。

Jeff:確かに、Sunn O)))の後っていうのはあり得ないよな。何やっても無理だよ。

でも、あなたがたのトリのステージも、とんでもなく素晴らしかったですよ。

全員:サンキュー!(笑)

そういう状況で、逆に、いい意味で気合が入ったんじゃないですか?

Michael:確かにそうだね。自分たちが影響を受けていて、聴いててワクワクしてくるような、あるいはちょっと脅威すら感じるかもしれないような(笑)、そんな相手の後でプレイするときは、自分たちのパフォーマンス自体もよくなることが多いね。連中よりいいショウにしたいって思うし――ま、ただの自己満足かもしれないんだけど(笑)。

Aaron H:みんな友達でもあるから、あいつらに恥をかかせてやりたいとか、そういうことじゃなくてね。とにかく驚異的なパフォーマンスを見せてくれるバンドだから、その後で改めて提供できるものなんて何もないんじゃないか、って感じちゃうんだよ。

Jeff:実際、Sunn O)))のライヴでオーディエンスはある種のトランス状態に陥ってしまってたから、そういう状況の中で次に登場した僕たちは、どう見えていたかもわからないな(笑)。

昨夜はトリを務めるというプレッシャーに加えて、先ほども言っていたように新曲をほとんど初めて披露するという、二重のハードルがあったわけですが、最新作からの曲をプレイしてみた手応えはいかがでしたか?

Jeff:ある意味、初デートのときみたいな気分だったね(笑)。どう振舞えばいいかもわかんないし、どう動けばいいのかもわからない、みたいな……。それまでに何度も何度もリハーサルしてきた曲のはずなのに、ライヴの場に持ってきた途端に、まるで馴染みのない曲のような気がしてきて。

Aaron T:ああ、特定の曲をしばらくプレイし続けていると、なんとなく身についてしまうというか、考えなくても演奏できるようになってくるんだけど、どんな曲も様々な段階を経ていくわけで、リハーサルとレコーディングのプロセスを通してその曲に馴染んでいく、というのが、まずその曲の“人生”の一局面として存在するんだ。で、次の段階としてライヴでの演奏っていうのが始まって、それは、その曲の寿命の中で一番緊張する局面だと思う。これって、すごくやりがいの大きなチャレンジでもあるよ。他の場面では要求されない類の集中力が、ここでは求められてくるからさ。そこさえ過ぎれば、その後の段階は僕に言わせれば最高に楽しい。曲にも十分に慣れて、まるで自分やバンドの延長線上にあるみたいに、自然と肌に馴染んでくるんだ。だから、今の新曲に対してその段階まで達するには、まだしばらく時間がかかるんじゃないかな。あと、ひとつの曲の寿命の最終段階には、やっぱり“死”という局面が待ってると僕は思うね(笑)。曲に違和感がなくなったっていう段階を超えてしまうと、逆にその曲を演るのが当たり前のことになってしまって、そろそろ休ませてやらなきゃならない段階がやってくるわけ。でも、しばらくそのまま寝かせておくことで、曲が新しく生まれ変わることもあるんだよ。

なるほど。新曲は以前の作品と比べて、ライヴでやる際に何か新しい工夫が必要だったり、新たな課題が生まれたりはしましたか?

Clifford:イエス!

Jeff:アハハハ(笑)。

Clifford:うん、みんなそれぞれ新しい“オモチャ”を使ってたり、新しい演奏法を取り入れてたり、新しいアンプを使ってたり……。とにかく曲が新しいわけだから、そのために何もかも準備しようとするのは当然大変なことだよね。特に、今回の来日では機材の一部をレンタルしてるから、ちょっと違和感があったりもするしさ。君の言うとおり、いろいろやり方を考えなきゃならないことがあるのは確かだよ。

Michael:でも、緊張したと言ってた割に、実際の初ライヴ披露はなかなかうまくいったと思う。最初の夜にしてはすごく落ち着いて演奏できたし、実際、思ってた以上に気持ちよくプレイできた。おかげで僕も新たなエネルギーをもらえたよ。みんなも満足のいく出来栄えだったんじゃないかな。


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